綺麗な薔薇には棘がある

いつも通り、放課後の見回りをしていた時であった。中庭には見慣れた光景が。「またどこかの生徒が告白でもしているのか......。男子校なのによくやるな。」と感心していると、雲行きが怪しくなっていった。告白した生徒が相手を押し倒したのである。......流石にこれは見逃せない。奏一朗は急いで校内から中庭へと出ると、声をかける。

「そこで何をしている?」
「!近衛風紀委員長......!」

押し倒した生徒が奏一朗の存在に顔を真っ青にした。押し倒されていた生徒を見ると...我々風紀委員と犬猿の仲である生徒会のトップ、生徒会長の"御門 華月"であった。

「また貴様か、御門。いい加減誰彼構わず誘惑するなと......」
「ごめんね!実は僕、近衛と付き合っているんだ!」
「......は?」

華月の言葉に奏一朗は呆然としていると、華月を押し倒していた生徒は叫びながら走り去っていった。

「オレを巻き込むな!」

そう言うと、華月から"恋人契約"を申し込まれた。たしかに、奏一朗もチワワの様な生徒から告白される事は日常茶飯事であった。そして、それに対して困り果てていたのも事実だ。この取引は悪いものではないのやもしれない。そう考えると、華月を見つめる。「さて、どうする?」と言わんばかりに妖艶な笑みを浮かべ続ける華月に思わず生唾を飲み込む。

「......その取引受けてやろう」

そう答えると、華月は目を輝かせたような気がした。

「これからよろしくね?奏一朗」
「あぁ。よろしく頼む、華月」

これはあくまで"恋人契約"。かりそめの関係。なのにどうしてこんなに虚しくなっているのだろうか。奏一朗はこの気持ちが何なのか分からないでいて困惑していると、校舎からこちらに走ってくる人物がいた。生徒会副会長の"岸部 尚弥"である。

「御門会長!会議に来ないと思って探しに来てみたら...。どうして風紀委員長がここにいるんです?」

尚弥は奏一朗を敵視していると、華月が助け船を出してくれた。

「岸部。奏一朗は襲われていた所を助けてくれたんだ」
「そ、そうですか......。ん?"奏一朗"?」
「じ・つ・は、僕達お付き合いする事になりました♡」

尚弥は顎が外れそうなほど口を開け驚くと、華月が「まぁ、話しを聞いてよ。」と言って尚弥を宥めた。

「これはあくまで、"恋人契約"。僕達が付き合っている事にすれば、皆僕たちの事を諦めるだろう?」
「な、なるほど......。そういう事でしたか」
「あ、これは僕らだけの秘密ね?他言無用だから」

そう言うと、華月は奏一朗に「スマホ出して?」と言いスマホを出させると、LINEを手際よく交換させていた。

「はい、これで連絡先交換は完了!それじゃあ、また明日ね、奏一朗」
「あ、あぁ。また明日」

――奏一朗はまだ知らないでいた。これからの学園生活が目まぐるしく変わることを。