「まぁ、性格悪いかはさておき、人を見る目だけは誰よりも負けてないと思うよ」
観月はそう言って、自嘲気味にふっと笑った。
その瞬間、彼の瞳にほんの一瞬だけ、ひどく切ない色が混じる。
いつも眩しいくらいに輝いている男が見せた、底知れない、目に見えない"孤独"の陰。
何を考えているのかは分からなかったが、俺は直感的に察してしまった。
(……こいつも、もしかしたら俺みたいに、色々苦労してきたのかもしんねぇな)
頭の片隅に浮かんだその思いが、俺の心のトゲをほんの少しだけ丸くした。
気づけば、自分でも驚くほど素直な言葉が口を突いて出ていた。
「……別に、そのままでいいだろうが」
周りに合わせて偽善の笑顔を作るお人好しなんかじゃなく、本性を隠して泥臭く生きている。
その歪んだままで、その性格の悪さのままでいいんじゃねぇの、って。
そんな俺の言葉を聞いた瞬間、観月は驚いたように大きく目を見開いた。
「ええ! なんか今、佐藤くんが優しい!? やっぱ友達になってよ!」
さっきの切ない表情はどこへやら、観月はすぐにいつもの調子に戻り、子犬のように目を輝かせてベンチから身を乗り出してきた。
「絶対ぇ、嫌だね」
調子を狂わされた俺は、顔を背けて吐き捨てるように言い、また一人で激しくドリブルを再開した。
ボールの音で、あいつの声を掻き消すように。
――それからというもの、あの空き地には毎回、毎回、決まって観月が姿を現すようになった。
俺が放課後にフェンスをくぐると、当然のようにあいつがベンチに座っている。
「邪魔、帰れっつーの」
「マジうぜぇ」
「お前なんかと友達になるわけねぇだろバーカ」
俺は来る日も来る日も、思いつく限りの冷たい言葉を浴びせ、容赦なくあいつを突き放し続けた。
だけど、観月はどれだけ拒絶されても、絶対に諦めなかった。
「はいはい、今日も辛辣だねー!ご飯にふりかけれそうだわ」
と笑い飛ばし、時には「今日は1on1やってくれるまで帰らないから」と生意気にニヤけてみせる。
俺が作った高い壁を、あいつは傷つくことも恐れずに、何度も、何度も、真っ直ぐな手で叩き続けていた。
そんなあいつの底なしのしぶとさに、俺の頑なだった心が少しずつ、本当に少しずつ削られていくのを、当時の俺は認めようとしなかったけれど――確かに、感じ始めていたのだ。



