夏と冬が重なれば。番外編


――ダン、ダン、シュッ。


何度目かのシュートがネットを揺らし、俺は膝に手を突いて、肩で激しく息をした。

息が絶え絶えになりながらも、顎から滴り落ちる汗を手の甲で手荒にぬぐう。

「やっぱすげぇ! めちゃくちゃうまいじゃん、佐藤くん。部活入ってないの、もったいねーよ」

ベンチから、観月が感心したように声をかけてきた。
その、何も裏がないような称賛の言葉が、今の俺にはただひたすらに苛立たしい。

「……おい」

俺はボールを小脇に抱え、ベンチの男を鋭い眼差しで睨みつけた。

「お前、マジで何が目的なんだよ」

いい加減、しびれを切らして問い詰める。
だが、観月は膝の上の小説に目を落としたまま、のんびりとした調子で答えた。

「んー? 佐藤くんと友達になることだけど?」

「あほらし。ならねぇよ、お前なんかと」

即座に、冷酷に否定してやる。
だが、観月は視線を本から俺へと移し、楽しそうに喉を鳴らした。

「ははっ!超辛辣じゃん。一ミリもブレないね〜」

俺がいくら突き放すような冷たい言葉を投げつけても、観月は嫌な顔ひとつしなかった。

傷つく素振りすら見せない。
その、まるで動じない態度が俺の心を逆なでする。

何なんだよこいつは。
一体何なんだよ。
完璧な善人ぶって、俺のトゲを面白がってんのか。

「いい加減、そういうのやめろよ」

俺はイライラをぶつけるように、再びコンクリートへボールを叩きつけた。

ダン、ダンと激しい音が響く。

「お前もどーせ、裏で『賭け』でもしてんだろ? それか……」

「ん? 賭け? 意味分かんねー」

観月は首を小さく傾げた。

そして、俺の言葉を遮るように、淡々と、だけど驚くほど的確に言葉を紡ぎ出した。

「あー、なるほど。クラスのやつらが佐藤くんを可哀想な目で見るから、俺がそれに漬け込んで、『好感度を上げる!』を狙ってる、って思ったの?」

「――っ」

心臓が、ドクンと嫌な音を立てて跳ねた。
あまりにも完璧に俺の思考の核心を突かれ、一瞬、呼吸の仕方を忘れる。

こいつ……全部分かってたんだ。
クラスの連中が俺をどう見ているかも、自分がどう思われているかも。

その上で、すべてを理解した上で、あえて昼間も、今も、俺に笑いかけていた。

綺麗に飾り立てた偽善の笑顔の裏に、底知れない冷徹さと鋭さを隠し持っている。

「……お前、案外性格わりぃな」喉の奥から絞り出すようにそう言うと、観月は「あはは、そうかなー?」と、どこか嬉しそうにニカッと笑った。