高校に入ってからも、俺のスタンスは何も変わらなかった。
相変わらず誰とも群れず、一匹狼のポジションを貫き通していた。
朝、教室のドアを開けて自分の席に向かう間も、頭の中にあるのは面倒くささだけだ。
カバンを机に放り投げ、椅子に深く腰掛けながら、毎日のように同じ言葉を吐き出す。
「あー……今日もかったりぃー……」
窓際の一番後ろの席。
そこが俺の定位置であり、外界をシャットアウトするための聖域だった。
頬杖をつき、流れる雲を眺めているうちに、自然と瞼が重くなっていく。
授業が始まろうがお構いなしに、俺はいつものように深い泥のような眠りへと落ちていった。
だが、時折深く眠ると、見たくもない過去が暗闇の向こうから這い出てくる。
夢の中に現れるのは、決まってあの時の母親の顔だ。
向日葵のような鮮やかな笑顔。
優しく俺の頬を撫でる白い指先。
そして、すべてを裏切って去っていった後ろ姿。
"れーくん――"
脳裏に響く甘い声に、胸の奥が苛立ちと割り切れない感情でぎゅっと締め付けられる。
(チッ……またあの夢かよ……)
嫌な汗が額ににじむのを感じながら、俺はうっすらと目を開けた。
夢の余韻のせいで頭がひどく重い。
おまけに、じっとりとした汗が髪を濡らしていて不快極まりなかった。ゆっくりと視界を確保しようとした、その時だった。
俺の机の前に、誰かが立っていた。
しかも、俺の顔を心配そうに覗き込むようにして、すぐ近くに。
―――バチッ。
完全に油断していた俺の目と、その男子生徒の目が真っ正面からかち合った。
「あー、びっくりした! 急に目、開けるからさ」
男のくせに、どこか中性的で整った顔立ち。
そいつは胸をなでおろすような仕草をしながら、こちらが気圧されるほど眩しい、綺麗な笑顔を向けてきた。
「顔色、あんまり良くないみたいだけど……具合悪いの? 大丈夫?」
差し込んできた朝日の光のせいか、それとも夢の残滓のせいか、その笑顔が一瞬、あの忌まわしくも綺麗だった母親の笑顔と重なった気がして、心臓が嫌な跳ね方をした。
「……は?」
状況が掴めず、俺の口からぽろっと漏れたのは、低く不機嫌な声だった。
思い切り眉間に皺を寄せ、威嚇するようにそいつを睨みつける。
だが、目の前の男子生徒は怯える風でもなく、ただただ心配そうに、純粋な瞳で俺を見つめ返してくるだけだった。
この、調子が狂うほど真っ直ぐな男――彼こそが、俺の冷え切った日常を容赦なく引っ掻き回すことになる、観月冬弥との初めての出会いだった。



