世界が暗闇に覆われる。
そんな感覚なんて誰にもわからないでしょ…。
キキーッドンッ
『きゃああぁぁぁ!!!』
『うわぁっ!!』
激しい衝撃と共に家族の悲鳴が聞こえる。パパとママと弟の翔太の悲鳴が。
(あ…これ…死ぬのかな……?)
目の前が赤くなり、黒くなり……
私は一瞬、死の淵を見た気がした。体が悟る。もう、これは避けようがないと。
私はその大きな衝撃に身を任せるしかなかった。
『ん…?』
目を開けると、そこは見慣れない白い天井。横には誰かが座って、涙を流している。
『凛…!良かった…!』
『一周間目を覚さなかったんだよ…!?本当に奇跡だよ…』
そう言って泣きながら抱きついてくる人たち。
(誰…?私はこの人たちを知らない…)
私がカタカタと震えていると、その人たちは、泣きながらさらにぎゅっと私を強く抱きしめる。
『あ…の……』
私が絞り出すように声を出すと、その人たちは優しい瞳で、
『なぁに?』
と聞いてきた。私は、
『だ…誰ですか……?』
と聞いた。その瞬間、その人たちの表情は一気に曇った。そして口々に、
『覚えていないのか?!凛は一週間前、事故に遭って大変なことになっていたんだ…。俺たちは軽症だったんだが、凛だけ…重症で…』
と言ってきた。何やら事故の経緯を話しているらしいが、私は知らない。
『凛…!しっかりして…!』
凛、という名前は覚えている。それは私の名前だ。しかし、人が思い出せない。私は今まで誰と会っていたのか、誰と話していたのか、誰と生きてきたのか。
全てがわからない。
『ごめんなさい…』
私は涙を流しながら、そう呟いた。
2年前の記憶を思い出しながら、転校先の学校へ向かう。現在も記憶が戻ることはなく、私の親というあの二人と弟の翔太という人とは一緒に暮らしている。それは間違いなく、自分が過ごしてきた部屋だったからだ。
記憶が戻らないまま、中3、高1は過ごしてきた。しかし、それでも補いきれないものがあった。
私と友達だったという人は笑顔で話しかけてくれていたが、思い出せることはなかった。そのせいか、相手の気分を悪くしてしまう事まであった。
そこで、私の親(多分)が別の高校に転校しようと提案してくれたのだ。私は拒否できなかった。今のまま過ごしてもなんだか辛いだけな気がしたから。
私は了承して、今日から新しい学校、飛坂高校というところに転校する。
「ここ…か…」
スマホの使い方はギリギリ覚えていたので、歩いていくことができた。
(と言っても…LINEは全く使えないし…)
私のスマホは連絡手段の一つにも入らない。ただの板だ。その板を握りしめて校門の前に立つ。校門はなぜか鍵がかかっていた。
時計を見ると、大分遅れて到着したようだった。
「はぁ…」
どうにかして中に入ろうとしていると、後ろから肩を叩かれた。振り返ると、男子だった。
「あれ…君…見たことないなぁ」
そう言われて、私は即座にお辞儀をする。そして、
「今日から転校してきた、笠原凛です」
と言った。すると、その男子は手をぱんと叩いて、「思い出した!」と言った。
「今日から同じクラスだと思うよ!」
そう言われて私は少しホッとする。緊張が少し和らぐ感覚がなんとも言えない心地よさを出している。
「えと…職員室に行きたくて…その、君…案内してくれませんか…」
私がそう言うと、彼は、
「俺は佐野海斗。案内するよ」
私は佐野くんの背中についていく。校門をこじ開けて、昇降口から入る。廊下は静かで二人で歩いている足音が大きく響き渡る。
「職員室はここ。多分、担任がいるから。じゃ」
佐野くんはそう言って走り去っていった。急いで教室に向かっている。
(引き留めちゃったかな…)
心配になる気持ちと裏腹に、学校に来て初めて人と話せて嬉しいという気持ちがある。
私は佐野くんに心の中でお礼を伝える。そして、扉をノックして職員室に入る。
職員室はなんとも言えない空気が漂っていた。身震いしてしまうような、そんな空気。
「あ!転校生の方ですか?」
突然、そうやって声をかけられた。驚きでぽかんとしてしまった。
「私は担任の有馬宙です」
さっそく先生に自己紹介されて、私もお辞儀をする。先生はいかにもしっかりものという感じだった。それでいて、フレンドリー。
(いい先生っぽいなぁ…)
私がそう思っていると、先生が
「一緒に教室に行きましょう。慣れないこともあるかもしれないけれど、頑張っていきましょうね!」
そう言われて私は嬉しかった。そこで、確認しなければならないことがあることに思い出す。
「あの…私の記憶については……?」
私がおずおずと聞くと、先生は頷く。
「事故で人に関する記憶だけ失ったのよね。その後遺症で人を覚えるのがなかなか難しくなった…とか」
先生が静かに言った。私は頷く。お父さんとお母さんだと思う2人はうまく事情を話してくれたのだ。
(ありがたい…のかな……)
私は自分の気持ちに整理をつけられない。
そんな感覚なんて誰にもわからないでしょ…。
キキーッドンッ
『きゃああぁぁぁ!!!』
『うわぁっ!!』
激しい衝撃と共に家族の悲鳴が聞こえる。パパとママと弟の翔太の悲鳴が。
(あ…これ…死ぬのかな……?)
目の前が赤くなり、黒くなり……
私は一瞬、死の淵を見た気がした。体が悟る。もう、これは避けようがないと。
私はその大きな衝撃に身を任せるしかなかった。
『ん…?』
目を開けると、そこは見慣れない白い天井。横には誰かが座って、涙を流している。
『凛…!良かった…!』
『一周間目を覚さなかったんだよ…!?本当に奇跡だよ…』
そう言って泣きながら抱きついてくる人たち。
(誰…?私はこの人たちを知らない…)
私がカタカタと震えていると、その人たちは、泣きながらさらにぎゅっと私を強く抱きしめる。
『あ…の……』
私が絞り出すように声を出すと、その人たちは優しい瞳で、
『なぁに?』
と聞いてきた。私は、
『だ…誰ですか……?』
と聞いた。その瞬間、その人たちの表情は一気に曇った。そして口々に、
『覚えていないのか?!凛は一週間前、事故に遭って大変なことになっていたんだ…。俺たちは軽症だったんだが、凛だけ…重症で…』
と言ってきた。何やら事故の経緯を話しているらしいが、私は知らない。
『凛…!しっかりして…!』
凛、という名前は覚えている。それは私の名前だ。しかし、人が思い出せない。私は今まで誰と会っていたのか、誰と話していたのか、誰と生きてきたのか。
全てがわからない。
『ごめんなさい…』
私は涙を流しながら、そう呟いた。
2年前の記憶を思い出しながら、転校先の学校へ向かう。現在も記憶が戻ることはなく、私の親というあの二人と弟の翔太という人とは一緒に暮らしている。それは間違いなく、自分が過ごしてきた部屋だったからだ。
記憶が戻らないまま、中3、高1は過ごしてきた。しかし、それでも補いきれないものがあった。
私と友達だったという人は笑顔で話しかけてくれていたが、思い出せることはなかった。そのせいか、相手の気分を悪くしてしまう事まであった。
そこで、私の親(多分)が別の高校に転校しようと提案してくれたのだ。私は拒否できなかった。今のまま過ごしてもなんだか辛いだけな気がしたから。
私は了承して、今日から新しい学校、飛坂高校というところに転校する。
「ここ…か…」
スマホの使い方はギリギリ覚えていたので、歩いていくことができた。
(と言っても…LINEは全く使えないし…)
私のスマホは連絡手段の一つにも入らない。ただの板だ。その板を握りしめて校門の前に立つ。校門はなぜか鍵がかかっていた。
時計を見ると、大分遅れて到着したようだった。
「はぁ…」
どうにかして中に入ろうとしていると、後ろから肩を叩かれた。振り返ると、男子だった。
「あれ…君…見たことないなぁ」
そう言われて、私は即座にお辞儀をする。そして、
「今日から転校してきた、笠原凛です」
と言った。すると、その男子は手をぱんと叩いて、「思い出した!」と言った。
「今日から同じクラスだと思うよ!」
そう言われて私は少しホッとする。緊張が少し和らぐ感覚がなんとも言えない心地よさを出している。
「えと…職員室に行きたくて…その、君…案内してくれませんか…」
私がそう言うと、彼は、
「俺は佐野海斗。案内するよ」
私は佐野くんの背中についていく。校門をこじ開けて、昇降口から入る。廊下は静かで二人で歩いている足音が大きく響き渡る。
「職員室はここ。多分、担任がいるから。じゃ」
佐野くんはそう言って走り去っていった。急いで教室に向かっている。
(引き留めちゃったかな…)
心配になる気持ちと裏腹に、学校に来て初めて人と話せて嬉しいという気持ちがある。
私は佐野くんに心の中でお礼を伝える。そして、扉をノックして職員室に入る。
職員室はなんとも言えない空気が漂っていた。身震いしてしまうような、そんな空気。
「あ!転校生の方ですか?」
突然、そうやって声をかけられた。驚きでぽかんとしてしまった。
「私は担任の有馬宙です」
さっそく先生に自己紹介されて、私もお辞儀をする。先生はいかにもしっかりものという感じだった。それでいて、フレンドリー。
(いい先生っぽいなぁ…)
私がそう思っていると、先生が
「一緒に教室に行きましょう。慣れないこともあるかもしれないけれど、頑張っていきましょうね!」
そう言われて私は嬉しかった。そこで、確認しなければならないことがあることに思い出す。
「あの…私の記憶については……?」
私がおずおずと聞くと、先生は頷く。
「事故で人に関する記憶だけ失ったのよね。その後遺症で人を覚えるのがなかなか難しくなった…とか」
先生が静かに言った。私は頷く。お父さんとお母さんだと思う2人はうまく事情を話してくれたのだ。
(ありがたい…のかな……)
私は自分の気持ちに整理をつけられない。



