この村には代々受け継がれる伝承がある。
三百年前のことだ。
一体の妖が悪さをしていた。
家畜や畑を襲い、森を破壊し、水源を独占し、人々は困り果てていた。
その時、ちょうどやってきた陰陽師がその妖を懲らしめ、土地に封印してくださったそうだ。
陰陽師は言った。
「この妖は、妖力がとても多いので、この土地と結びつけました。彼は、今日からこの土地の神となります」
人々は、今まで困らされてきた妖を神として崇めろというのか、と反発したが、陰陽師は人々に神とは何だと思うか、と問う。
「神とは、信仰心がなければ成り立たぬものです。彼は神となりました。この土地を守るための神です。つまり、あなた方の信仰心がなければ、妖力は尽き、いつか消滅してしまうでしょう」
それならば、妖力でこの土地を満たすだけ満たして消滅を待てばいい。
人々はそう考えた。
だが、陰陽師は更に言う。
「これだけの潤沢な妖力をこの一瞬で終わらせるなんてもったいない。一年後、きっとみなさんは理解するはずです。彼の妖力がどれほどまでに失くしては惜しいものなのか」
一年後、それでも考えが変わらなければ、信仰のない神として、八百万の忘れ去られた一柱として神々の歴史に埋もれさせればよいのだと。
人々は納得し、それから一年を過ごす。
だが、その一年で陰陽師の言ったとおりに人々は考えを変える。
これまでにないほどの豊作と、穏やかな気候。
春は花が咲き乱れ、夏は恵みの雨が降り、秋は作物が実り、冬は湧いた温泉が外と村を繋ぎ、それまでとは考えられない程豊かになった。
人々は徐々に妖を神として崇め始める。
そうして、二百年が経った頃、肩に不思議な文様のある少女が生まれた。
「もし、みなさんがいつか、彼を神だと認め、崇めた時、花の文様を持つ赤子が生まれるでしょう。その子は神の花嫁です。必ず、彼に嫁がせてくださいね」
――もし、拒めば彼は死に、この土地は神を失うでしょう。
三百年前のことだ。
一体の妖が悪さをしていた。
家畜や畑を襲い、森を破壊し、水源を独占し、人々は困り果てていた。
その時、ちょうどやってきた陰陽師がその妖を懲らしめ、土地に封印してくださったそうだ。
陰陽師は言った。
「この妖は、妖力がとても多いので、この土地と結びつけました。彼は、今日からこの土地の神となります」
人々は、今まで困らされてきた妖を神として崇めろというのか、と反発したが、陰陽師は人々に神とは何だと思うか、と問う。
「神とは、信仰心がなければ成り立たぬものです。彼は神となりました。この土地を守るための神です。つまり、あなた方の信仰心がなければ、妖力は尽き、いつか消滅してしまうでしょう」
それならば、妖力でこの土地を満たすだけ満たして消滅を待てばいい。
人々はそう考えた。
だが、陰陽師は更に言う。
「これだけの潤沢な妖力をこの一瞬で終わらせるなんてもったいない。一年後、きっとみなさんは理解するはずです。彼の妖力がどれほどまでに失くしては惜しいものなのか」
一年後、それでも考えが変わらなければ、信仰のない神として、八百万の忘れ去られた一柱として神々の歴史に埋もれさせればよいのだと。
人々は納得し、それから一年を過ごす。
だが、その一年で陰陽師の言ったとおりに人々は考えを変える。
これまでにないほどの豊作と、穏やかな気候。
春は花が咲き乱れ、夏は恵みの雨が降り、秋は作物が実り、冬は湧いた温泉が外と村を繋ぎ、それまでとは考えられない程豊かになった。
人々は徐々に妖を神として崇め始める。
そうして、二百年が経った頃、肩に不思議な文様のある少女が生まれた。
「もし、みなさんがいつか、彼を神だと認め、崇めた時、花の文様を持つ赤子が生まれるでしょう。その子は神の花嫁です。必ず、彼に嫁がせてくださいね」
――もし、拒めば彼は死に、この土地は神を失うでしょう。


