「はあ…」
どっと疲れが押し寄せ、床にへたり込んだ。
修夜さんに出会ったり奴隷になったり…怒涛の一日間だった。
それにしても…修夜さんは「奴隷など肩書だけ」と言っていたけれど…私はなにもしなくていいということ…?
それは、嬉しいけれど…私は、ただ存在しているだけになるってこと、だよね。
雑用を押し付けられ、置いていかれるのは悲しかったけど、私が必要とされてることをしっかりと実感することができた。
…修夜さんは、やっぱり…私のこと、ただの通りすがりに見かけた女だと思っているのかな。
なにか、私じゃなきゃいけない理由とかは、なかったのだろうか…。
瀬奈は…怒っているかな。許さないって、言っていたよね…。
——コンコンッ
あっ、お客様…?
「はいっ」
扉を叩く音が聞こえたので、慌てて扉へと走る。
「どちら様…えっ」
扉を開けた途端、息を呑んだ。
「お姉ちゃん…」
いつもの愛らしい笑みではなく、完全に狂ったような笑みを浮かべた瀬奈がいた。
「せ、瀬奈…今、修夜さんはいないから、また…」
「お姉ちゃんみたいなやつが、修夜さんのこと知ったような口聞かないでよ!」
瀬奈は叫んで、無理矢理扉の隙間から中へ入ってこようとする。
「ちょ、瀬奈!やめて…!」
「うるさいわねっ!邪魔、退きなさい!」
「うっ」
突き飛ばされ、床に倒れ込む。その横を、瀬奈が通り過ぎた。
「ちょっ!やめて!入らないで…っ!!」
「うるさい!お姉ちゃんの家じゃないでしょ!」
ずんずんと進む瀬奈は一瞬振り向いて、歪な笑みを浮かべた。
「——お姉ちゃん、ここにきてもやっぱり変わらないよね」
「え…?」
「お姉ちゃんは結局、どこに行っても必要とされないよ」
まるで、この一日を見ていたかのような言葉に、体が凍りついた。
奴隷なんて、肩書だけだけ。私は必要とされていない。
先ほどまで私が思っていたことと、一致していたから。
「…って、ちょっと!瀬奈、どこに行くの!?」
どんどん奥へと進み、私も行ったことのないような場所に行く瀬奈の足取りは、迷っている感じがない。
「ちょっと、瀬奈!勝手に漁っちゃだめ!」
ようやく、どこかの部屋に入り引き出しを漁っている瀬奈の肩を掴み、やめさせた。
部屋は引き出しを漁った時に取り出した物でごちゃごちゃになっていた。あ、これは怒られる…と覚悟した。
「沙奈、どこだ!」
修夜さん…!
「ここです!」
大声を上げた次の瞬間、部屋の扉が勢いよく開いた。
入ってきたのは…修夜さんじゃない…別の男性。
「沙奈…」
彼は私を見て、そうこぼした。
「なにこの人…お姉ちゃんの知り合い?」
嫌そうな顔をして瀬奈が聞いてきたけど、彼から目が離せない。
瀬奈は気付かないの?
間違いない。彼は、私がずっと探していた——。
「お父さん…」
私は震える唇で、その言葉をつぶやいた。

