——ドンッ
「不届者!もう二度と、私の視界に入ってこないで!」
「…っ、ごめんなさい…」
「謝るくらいならさっさとこのシミを落としなさいよ、役立たず!」
もう一度私を突き飛ばし、母はその場から立ち去った。
母と言っても、血は繋がっていない。私の母と父は私が幼い頃離縁し、父がこの人と再婚した。
そして今、私の父は消息を絶っている。
もうあの日から、何年も経つのか。
血の繋がっていない母は、父が居なくなってからというもの狂ったように私を虐げ続けている。
だが、母はきっと、父がいた頃から私のことを目障りだと思っていただろう。
シミって言っても、もう落ちないのに。
しばらく時間をかけてシミを薄くし、目を凝らさないと見えない程度にした。
でも多分、あの人は目ざとく見つけるだろうけど。
——ドン
「あ、ご、ごめんなさいっ…!」
「…っ、邪魔!」
——バンッ
「うっ」
向こう側から歩いてきた人にぶつかり、突き飛ばされる。突き飛ばされた時に柱に頭を打ちつけ、頭を押さえた。
「私にぶつかってんじゃないわよ!」
そう怒り狂う彼女は、私の妹だ。
妹と言っても、こちらも半分しか血が繋がっていない。いわゆる異母姉妹というやつで、父と、先程の血が繋がっていない母親の子どもである。
「ちょっと、瀬奈!どうしたの、大声を出して!」
あ。
遠くから母が走ってきた。
「お母さん、こいつが私にぶつかってきて…」
「なんてこと…」
私を無理矢理立ち上がらせ、そして頬を叩いた母。
鋭い痛みが頬に走った。そんな私を、母は睨みつける。
自分の子どもを、守るように抱きしめて、狂わんばかりに怒鳴る。
「ここはあんたの家じゃないわ!私たちの屋敷よ!私たちが置かせてあげてるのよっ!忘れないで!!」
そうだ。父がいない家では、私の居場所はない。
父が私を繋ぎ止めていたと言っても過言ではない。
だが、そんな辛うじて繋ぎ止めていた絆がなくなり、ぷつりと糸が切れてしまったのだ。
父は、どこに行ったんだろう。
妹…瀬奈は、私の横を通り過ぎるとき、甘い愛らしい笑みを浮かべた。
「邪魔しないでね。ここは“私の家”なんだから」
そう言って、くすりと耳元で嘲い、その場を去って行った。
…負けない。負けたくない。

