「もしもーし、キュントGBT!ギャルとはなんですか?」
天井に向けて掲げたスマホの画面に、安達 咲夏は情けない声を投げかけた。
直後、『キュピンッ』と気の抜けた電子音が響き、手の中の相棒が滑らかな合成音声で喋り出す。
『はい。ギャル(Gal)とは、英語の俗語で「女の子、若い女性」を語源とする言葉です。現在の日本では、明るいヘアカラー、特徴的なメイクやネイル、流行を取り入れた個性的なファッションを好み、ポジティブで自分の「好き」を貫くマインドを持った女性たちを指します。ちなみに、話し言葉は「アゲ~」「ま?」「り」など、極端に短い言葉を使うことが多い傾向にあります』
「いや、最後のそれよ……」画面を消し、スマホをベッドのマットレスに放り出す。
そのまま枕に顔をうずめ、咲夏はバタバタと両足をはためかせた。
「やっぱり、人生の選択肢(モード)間違えたかな…」
高校一年生になったばかりの咲夏は、諸事情あって「高校デビュー」ならぬ「ギャルデビュー」を決意したばかりだった。
なのに、本格的なスタートを切る前から、すでに心が折れかかっている。
短文? 「ま?」とか「り」だけで会話が成立するとはどういうことなのだろう。
ギャルたちの脳内補完スキルが高すぎて、もはや未知の領域だ。
「既にハードル高すぎなんだけど……。世の中の女子高生って、毎日こんな高度なコミュニケーション能力発揮して生きてるの!?」
お気に入りのゼラピケのクッションに顔をうずめながら、咲夏は深い深いため息をついた。
彼女の、波乱万丈?(予定)なギャルライフは、まだ一歩も進んでいない。



