土曜午後@ドンキ。
キャンプの肝試し用のグッズを買うためにやってきた。
同じE班、キャンプ係の桐山と待ち合わせをしている。が、時間になっても来ない。
手持ち無沙汰で、おもちゃやイベントグッズがうず高く積まれたジャングルのような棚の間を歩いてみる。陳列棚のあちこちにド派手なポップ。
実は初ドンキだ。キャンプの買い出しの話をしているときに、広川に「ドンキ行ったことねぇなら行ってみれば。楽しいよ」と言われ肝試しグッズ担当になった。目がチカチカするけどテンションもあがる!
ピーピー、とスマホが鳴った。「着いた。エレベーター前にいる」と桐山から。
手に取っていた吸血鬼のお面を棚に戻し、エレベーターホールに向かう。
そこにいたのは、デカい男二人。部活帰りなのかジャージにラケットを背負った桐山と、ーーん? 広川?
「広川も来たんだ」
「そー。暇だったし。レンのドンキデビューを見守ろうと思って」
いつものように、にっと笑う。
桐山が「広川、マジ面倒見いいよな。中学んときもさぁ…」と言いかけると、
「いや、それいいから」
広川が即座に止めた。
ん? なんの話?
というか桐山、広川と中学からの友達なのか。教室でもよく話しているし、仲がいいのは知ってたけど。まあ、いっか。
オレがさっき見つけたお面の場所を案内すると、もういつも通りだった。
「レーン! ほら、これお前似合うんじゃね?」
広川が見本としてかかっていたエプロンを広げてオレに見せる。女性のビキニボディが印刷されたエプロン。
「死ね!」
桐山がゲラゲラ笑っている。桐山は一見さわやかなテニス男子なのに、広川と仲がいい時点でお察しだった。ノリが似ている。
と、そのとき、
「あ、広川くん! ぐうぜーん!!」
聞き慣れた女子の声がした。
水無瀬さん?!
声を聞いた瞬間、広川は持っていたエプロンをオレに押し付けて前髪を整えていた。すごい反射神経。カスすぎる。
※ ※ ※
「水無瀬ちゃん、今日一人なの?」
広川が、水無瀬と並んで雑貨の棚の間に入っていく。水無瀬が持っていた大きな紙袋ふたつを、さっと代わりに持っていた。
オレと桐山も、なんとなく後をついていきながら肝試しに使えそうなグッズを探す。
「うん、一人。ほんとは傘買いにきたんだけど、いいのなくって。ついクッション3個も買ったら大荷物になっちゃった」
「私服の水無瀬ちゃんに会えるなんて超ラッキー。めっちゃ可愛いね」
「誰にでもそういうこと言うの知ってるもん」
「言わないって」
うぜえ。マジうぜえ。
オレと、多分横で聞いてる桐山もそう思ってる。
「ハイスペ同士のじゃれ合いだな!」
桐山がぼそっと吐き出した。分かる。
どっちもどっちだ。水無瀬も、見た目は可愛くていかにも女の子だけど、広川を余裕であしらう時点で見た目通りじゃないことは分かる。
二人が棚の向こうで笑い合っているのを聞きながら、オレと桐山はイベントグッズコーナーを離れて文具コーナーに来てしまった。蓄光ペンを発見。
「これ、看板書くのに買っとく?」
桐山に話しかける。
「確かに! 安いし何本か買っとこう。お、血糊もある」
桐山が高い棚から血糊を取った。広川ほどじゃないけど、背が高い。モテそうで羨ましい。
「桐山って、広川と同中なの?」
「中一から同クラ。なんでも知ってるよ、弱み知りたければ聞いて」
桐山がにやっと笑いながら血糊をカゴに入れた。
なんでも、ねえ。
さっき言いかけた面倒見云々の話は気になるけど、本人が止めたことは聞けねぇよな。
オレは蓄光ペンを3本カゴに放り込んだ。
「釣り竿コンニャク500円。買っとく?」
「買おう」
広川たちとはいつの間にかはぐれた。二人で肝試しグッズの物色を続ける。
ドンキの中をぐるりと回り、ちょっとしたことでパニックになりつつレジに向かっているタイミングで広川が戻ってきた。一人だ。
「水無瀬さんは?」
オレが聞くと「帰ったよぉ」と答える。
桐山が眉根をあげた。
「めずらし。荷物あるし家まで送ってくとか言うかと思った。断られたん?」
「いや、まあ軽いからいいかなって……」
「へ?! せっかくのチャンスを」
広川は「う……ん、ま、確かに?」と、よく分からないという顔でブツブツと言った。
「そういやさ」
桐山がニヤっと笑った。
「さっき真野が、奥の18禁コーナーに知らんで入って、パニックになってさぁ」
ぐっ……くそっ! 桐山め。言うなっつったのに。
オレは桐山を睨みつけた。
スマホの買い物リスト見ながら歩いてて、気づいたら突っ込んでたんだよ。
中に置いてあったローションとか穴の開いた下着とか、オ……いやいや、なにも見てねぇから!
でも言ってやる。
「うるせえ。桐山だって彼女いない暦イコール年齢っつってたよな。上から笑える立場じゃねーだろーがあ!」
「ウッ、真野、可愛いのにきっつー」
桐山がヒャハハと笑ってオレの肩に腕を回してきた。肩がずっしり重い……。
「確かに笑えるな」
広川の声に顔を上げると、笑っていない。
え?
笑えるな、と言いながら真顔。
「あ、なに? どしたの?」
桐山が言うと、広川ははっとしたように桐山を見た。
「お前、ラケットは?」
「へ?」
桐山が慌ててオレから離れて、周りを見回す。
オレは呆れながら言った。
「背負ってんじゃん」
「あ、オレの命より大事なラケットちゃんが! 広川おどかすなよ!」
広川がアハハと笑っている。
と思ったら、今度は広川がオレの肩に後ろから乗っかってきた。
ドンッ! 桐山より一段と重っ。
「レーン、あとさ、マシュマロ買おうよ。キャンプで焼く用」
「あーはいはい」
まさしく昔飼ってたゴールデンレトリバーの花ちゃんだ。
このでかさと重さがなんとも。
ドンッとこられると、鬱陶しいけど……満足感があるんだよな。
あ、広川が花ちゃんポジという意味じゃなくて。
広川が、オレの肩に回した腕にぎゅっと力を込めた。
「レンさあ、細すぎじゃね? 女の子と変わんな……」
「うるせえええええ!」
花ちゃんのほうが万倍可愛かったよ!
キャンプの肝試し用のグッズを買うためにやってきた。
同じE班、キャンプ係の桐山と待ち合わせをしている。が、時間になっても来ない。
手持ち無沙汰で、おもちゃやイベントグッズがうず高く積まれたジャングルのような棚の間を歩いてみる。陳列棚のあちこちにド派手なポップ。
実は初ドンキだ。キャンプの買い出しの話をしているときに、広川に「ドンキ行ったことねぇなら行ってみれば。楽しいよ」と言われ肝試しグッズ担当になった。目がチカチカするけどテンションもあがる!
ピーピー、とスマホが鳴った。「着いた。エレベーター前にいる」と桐山から。
手に取っていた吸血鬼のお面を棚に戻し、エレベーターホールに向かう。
そこにいたのは、デカい男二人。部活帰りなのかジャージにラケットを背負った桐山と、ーーん? 広川?
「広川も来たんだ」
「そー。暇だったし。レンのドンキデビューを見守ろうと思って」
いつものように、にっと笑う。
桐山が「広川、マジ面倒見いいよな。中学んときもさぁ…」と言いかけると、
「いや、それいいから」
広川が即座に止めた。
ん? なんの話?
というか桐山、広川と中学からの友達なのか。教室でもよく話しているし、仲がいいのは知ってたけど。まあ、いっか。
オレがさっき見つけたお面の場所を案内すると、もういつも通りだった。
「レーン! ほら、これお前似合うんじゃね?」
広川が見本としてかかっていたエプロンを広げてオレに見せる。女性のビキニボディが印刷されたエプロン。
「死ね!」
桐山がゲラゲラ笑っている。桐山は一見さわやかなテニス男子なのに、広川と仲がいい時点でお察しだった。ノリが似ている。
と、そのとき、
「あ、広川くん! ぐうぜーん!!」
聞き慣れた女子の声がした。
水無瀬さん?!
声を聞いた瞬間、広川は持っていたエプロンをオレに押し付けて前髪を整えていた。すごい反射神経。カスすぎる。
※ ※ ※
「水無瀬ちゃん、今日一人なの?」
広川が、水無瀬と並んで雑貨の棚の間に入っていく。水無瀬が持っていた大きな紙袋ふたつを、さっと代わりに持っていた。
オレと桐山も、なんとなく後をついていきながら肝試しに使えそうなグッズを探す。
「うん、一人。ほんとは傘買いにきたんだけど、いいのなくって。ついクッション3個も買ったら大荷物になっちゃった」
「私服の水無瀬ちゃんに会えるなんて超ラッキー。めっちゃ可愛いね」
「誰にでもそういうこと言うの知ってるもん」
「言わないって」
うぜえ。マジうぜえ。
オレと、多分横で聞いてる桐山もそう思ってる。
「ハイスペ同士のじゃれ合いだな!」
桐山がぼそっと吐き出した。分かる。
どっちもどっちだ。水無瀬も、見た目は可愛くていかにも女の子だけど、広川を余裕であしらう時点で見た目通りじゃないことは分かる。
二人が棚の向こうで笑い合っているのを聞きながら、オレと桐山はイベントグッズコーナーを離れて文具コーナーに来てしまった。蓄光ペンを発見。
「これ、看板書くのに買っとく?」
桐山に話しかける。
「確かに! 安いし何本か買っとこう。お、血糊もある」
桐山が高い棚から血糊を取った。広川ほどじゃないけど、背が高い。モテそうで羨ましい。
「桐山って、広川と同中なの?」
「中一から同クラ。なんでも知ってるよ、弱み知りたければ聞いて」
桐山がにやっと笑いながら血糊をカゴに入れた。
なんでも、ねえ。
さっき言いかけた面倒見云々の話は気になるけど、本人が止めたことは聞けねぇよな。
オレは蓄光ペンを3本カゴに放り込んだ。
「釣り竿コンニャク500円。買っとく?」
「買おう」
広川たちとはいつの間にかはぐれた。二人で肝試しグッズの物色を続ける。
ドンキの中をぐるりと回り、ちょっとしたことでパニックになりつつレジに向かっているタイミングで広川が戻ってきた。一人だ。
「水無瀬さんは?」
オレが聞くと「帰ったよぉ」と答える。
桐山が眉根をあげた。
「めずらし。荷物あるし家まで送ってくとか言うかと思った。断られたん?」
「いや、まあ軽いからいいかなって……」
「へ?! せっかくのチャンスを」
広川は「う……ん、ま、確かに?」と、よく分からないという顔でブツブツと言った。
「そういやさ」
桐山がニヤっと笑った。
「さっき真野が、奥の18禁コーナーに知らんで入って、パニックになってさぁ」
ぐっ……くそっ! 桐山め。言うなっつったのに。
オレは桐山を睨みつけた。
スマホの買い物リスト見ながら歩いてて、気づいたら突っ込んでたんだよ。
中に置いてあったローションとか穴の開いた下着とか、オ……いやいや、なにも見てねぇから!
でも言ってやる。
「うるせえ。桐山だって彼女いない暦イコール年齢っつってたよな。上から笑える立場じゃねーだろーがあ!」
「ウッ、真野、可愛いのにきっつー」
桐山がヒャハハと笑ってオレの肩に腕を回してきた。肩がずっしり重い……。
「確かに笑えるな」
広川の声に顔を上げると、笑っていない。
え?
笑えるな、と言いながら真顔。
「あ、なに? どしたの?」
桐山が言うと、広川ははっとしたように桐山を見た。
「お前、ラケットは?」
「へ?」
桐山が慌ててオレから離れて、周りを見回す。
オレは呆れながら言った。
「背負ってんじゃん」
「あ、オレの命より大事なラケットちゃんが! 広川おどかすなよ!」
広川がアハハと笑っている。
と思ったら、今度は広川がオレの肩に後ろから乗っかってきた。
ドンッ! 桐山より一段と重っ。
「レーン、あとさ、マシュマロ買おうよ。キャンプで焼く用」
「あーはいはい」
まさしく昔飼ってたゴールデンレトリバーの花ちゃんだ。
このでかさと重さがなんとも。
ドンッとこられると、鬱陶しいけど……満足感があるんだよな。
あ、広川が花ちゃんポジという意味じゃなくて。
広川が、オレの肩に回した腕にぎゅっと力を込めた。
「レンさあ、細すぎじゃね? 女の子と変わんな……」
「うるせえええええ!」
花ちゃんのほうが万倍可愛かったよ!

