山瀬の「モモと付き合ってる」設定は、あの告白の日から「山瀬はモモが好き」設定に変わった。
相変わらずデートを断る口実に使っているらしいが、もうスルーしている。
今日、オレと山瀬は、クラスメイトたちと郊外の自然公園に遊びに来ている。
雲一つない晴天。
「なんもすることなくね?」
そう言っていたクラスメイトも、子供のように鬼ごっこをしてはしゃいでいる。
山瀬が遠くの家族連れに目を向けながら言った。
「すっげー懐かしいよなぁー」
入り口近くの広場から、木々が生い茂る小道の方まで来た。
さわやかな風が吹き抜ける。
オレは山瀬を見上げて話しかける。
「小学生んときはけっこー来たよな。お前ジェットコースターでビビってたじゃん。怖がりなのに乗りたがって、オレが手ぇつないでやってさぁ」
自然公園には、500円で乗れるミニジェットコースターがある。子ども向けだが大人も乗ることができる。
「モモと違ってデリケートなんだよ、オレは」
「あー女の子達に言いたいな、山瀬くんはジェットコースター怖いんですーって。でも山瀬なら絶対隣に乗ってくれる女の子いるよな。手だって繫いで貰えるぜ」
「へえ、どうでもよすぎ」
山瀬はフンと鼻を鳴らして、スマホをポケットにしまった。
女子二人が声をかけてくる。
「何話してんのお? ジェットコースター好きなの?」
「うん、山瀬がさぁ、コースター怖いって……んんっ」
山瀬がいきなりオレの口を手でふさいだ。モゴモゴするオレ。女子が笑う。
「黙れ」と山瀬。
「えーなになに」
「じゃーいまからジェットコースター行こう!私も久しぶりに乗りたーい」
むぐぐぅ…ぷはっ。
オレは山瀬の手を口から無理やり外した。
「オレも! なー山瀬も行きたいよな」
「言ってねぇよ」
女子があはは、と明るく笑った。
「じゃ、山瀬くんも行くってことで」
そして、不満そうな顔をした山瀬を連れて皆でジェットコースターに移動する。
ジェットコースターには、待ち時間5分の看板が掛けられていた。
2列に並び、順番を待つ。
「私、山瀬くんと乗りたいなぁ」
「えー私も山瀬くんがいい!」
うわ、また始まった。オレは苦笑い。
ほかの男子も、げんなりした表情で見守っている。
山瀬が口を開く。
「オレ、モモ好きだからモモと乗るわー」
「もう!そうやってすぐ逃げる!」
女子が追い打ちをかけてくるが、山瀬は素知らぬ顔でオレの肩に手を回してくる。はは。
ガタンガタン。
並んでいるとすぐに順番がやってくる。
係員にチケットを渡し、二人並びの席に座った。安全バーを下げる。
「……やっぱヤバいかも」
「え?」
横を見ると、山瀬が視線を真っ直ぐに前にむけて固まっていた。ーー小さな頃と変わらない。
イキって乗りたがって、席に座ると怯えだす。
オレは可笑しくなった。子供だましのジェットコースターが怖い高校生ってなんだよ。
「山瀬、大丈夫かよ」
ぴーっと警報が鳴り、コースターがガタン、と動き出す。
ーーえっ?
少し驚いた。
突然、イスの上に下ろしていた手を握られた。
ガタンガタンとコースターが登っていく。
「手…」
隣を見るが、山瀬は前を向いたままだ。
あ、つまり。
オレは合点した。つまり、怖いから手をつないでほしいんだ。
オレはぎゅっと手を握り返した。大丈夫、大丈夫。子供の山瀬の世話を焼くような気持ちになった。
ジェットコースターが最上部まで上り詰める。
そこからの……
「きゃーーっっ」「ぎゃああーッ」
女子も男子も歓声を上げる。オレも山瀬の手を握りながら、大きな声を出す。
「怖えー!」
高低差の少ないコースターではあるが、体がブンブン振り回される。
意外に今でも面白い!
オレは両手を挙げようとしてーー山瀬に握られた手を離そうと指でもがいた。
でも、振りほどけない。
そんなに怖いのか。
だったら、手を繋いだまま挙げちまおう。
手に力をこめた途端、山瀬が繋いだ手にーーオレの指に、指を絡めてきた。
指の間に差し入れられた指に、ドキッとした。
反射的に逃げようと手を引いたのに、離してもらえない。抵抗しても…
えっ?
なに?
ゆび、ゆびが……。
ーーあ。
気づいたら、コースターは出発点まで戻ってきていた。
当たり前だが手は離されている。
山瀬は自分の手をポケットに突っ込んだまま、いつもと変わらず、何でもないような様子で立っている。ただ、こちらを見ない。
オレは、正直動揺していた。
ーー「ジェットコースター怖かった? 昔と変わんないな」
くらいのセリフで、山瀬をからかってやるつもりだったのに。
指を絡められて、一瞬だけ山瀬を怖いと感じてしまった。心臓の鼓動はコースターのせい…だけじゃない。
平然としている山瀬に苛立ち、なんとなく、ペットボトルの水を一気飲みする。
ーーんだよ!
悪態をつくが、ドキドキが収まらない。
相変わらずデートを断る口実に使っているらしいが、もうスルーしている。
今日、オレと山瀬は、クラスメイトたちと郊外の自然公園に遊びに来ている。
雲一つない晴天。
「なんもすることなくね?」
そう言っていたクラスメイトも、子供のように鬼ごっこをしてはしゃいでいる。
山瀬が遠くの家族連れに目を向けながら言った。
「すっげー懐かしいよなぁー」
入り口近くの広場から、木々が生い茂る小道の方まで来た。
さわやかな風が吹き抜ける。
オレは山瀬を見上げて話しかける。
「小学生んときはけっこー来たよな。お前ジェットコースターでビビってたじゃん。怖がりなのに乗りたがって、オレが手ぇつないでやってさぁ」
自然公園には、500円で乗れるミニジェットコースターがある。子ども向けだが大人も乗ることができる。
「モモと違ってデリケートなんだよ、オレは」
「あー女の子達に言いたいな、山瀬くんはジェットコースター怖いんですーって。でも山瀬なら絶対隣に乗ってくれる女の子いるよな。手だって繫いで貰えるぜ」
「へえ、どうでもよすぎ」
山瀬はフンと鼻を鳴らして、スマホをポケットにしまった。
女子二人が声をかけてくる。
「何話してんのお? ジェットコースター好きなの?」
「うん、山瀬がさぁ、コースター怖いって……んんっ」
山瀬がいきなりオレの口を手でふさいだ。モゴモゴするオレ。女子が笑う。
「黙れ」と山瀬。
「えーなになに」
「じゃーいまからジェットコースター行こう!私も久しぶりに乗りたーい」
むぐぐぅ…ぷはっ。
オレは山瀬の手を口から無理やり外した。
「オレも! なー山瀬も行きたいよな」
「言ってねぇよ」
女子があはは、と明るく笑った。
「じゃ、山瀬くんも行くってことで」
そして、不満そうな顔をした山瀬を連れて皆でジェットコースターに移動する。
ジェットコースターには、待ち時間5分の看板が掛けられていた。
2列に並び、順番を待つ。
「私、山瀬くんと乗りたいなぁ」
「えー私も山瀬くんがいい!」
うわ、また始まった。オレは苦笑い。
ほかの男子も、げんなりした表情で見守っている。
山瀬が口を開く。
「オレ、モモ好きだからモモと乗るわー」
「もう!そうやってすぐ逃げる!」
女子が追い打ちをかけてくるが、山瀬は素知らぬ顔でオレの肩に手を回してくる。はは。
ガタンガタン。
並んでいるとすぐに順番がやってくる。
係員にチケットを渡し、二人並びの席に座った。安全バーを下げる。
「……やっぱヤバいかも」
「え?」
横を見ると、山瀬が視線を真っ直ぐに前にむけて固まっていた。ーー小さな頃と変わらない。
イキって乗りたがって、席に座ると怯えだす。
オレは可笑しくなった。子供だましのジェットコースターが怖い高校生ってなんだよ。
「山瀬、大丈夫かよ」
ぴーっと警報が鳴り、コースターがガタン、と動き出す。
ーーえっ?
少し驚いた。
突然、イスの上に下ろしていた手を握られた。
ガタンガタンとコースターが登っていく。
「手…」
隣を見るが、山瀬は前を向いたままだ。
あ、つまり。
オレは合点した。つまり、怖いから手をつないでほしいんだ。
オレはぎゅっと手を握り返した。大丈夫、大丈夫。子供の山瀬の世話を焼くような気持ちになった。
ジェットコースターが最上部まで上り詰める。
そこからの……
「きゃーーっっ」「ぎゃああーッ」
女子も男子も歓声を上げる。オレも山瀬の手を握りながら、大きな声を出す。
「怖えー!」
高低差の少ないコースターではあるが、体がブンブン振り回される。
意外に今でも面白い!
オレは両手を挙げようとしてーー山瀬に握られた手を離そうと指でもがいた。
でも、振りほどけない。
そんなに怖いのか。
だったら、手を繋いだまま挙げちまおう。
手に力をこめた途端、山瀬が繋いだ手にーーオレの指に、指を絡めてきた。
指の間に差し入れられた指に、ドキッとした。
反射的に逃げようと手を引いたのに、離してもらえない。抵抗しても…
えっ?
なに?
ゆび、ゆびが……。
ーーあ。
気づいたら、コースターは出発点まで戻ってきていた。
当たり前だが手は離されている。
山瀬は自分の手をポケットに突っ込んだまま、いつもと変わらず、何でもないような様子で立っている。ただ、こちらを見ない。
オレは、正直動揺していた。
ーー「ジェットコースター怖かった? 昔と変わんないな」
くらいのセリフで、山瀬をからかってやるつもりだったのに。
指を絡められて、一瞬だけ山瀬を怖いと感じてしまった。心臓の鼓動はコースターのせい…だけじゃない。
平然としている山瀬に苛立ち、なんとなく、ペットボトルの水を一気飲みする。
ーーんだよ!
悪態をつくが、ドキドキが収まらない。


