17歳、僕たちの第一死望

 僕は中庭のステージに仰向けになり、流れる雲をぼんやりと見ていた。
 相変わらず、時間感覚がおかしい。
 もう夜になっていてもおかしくないはずなのに、太陽はまだ沈んでいなかった。

「――何も、聞こえない」

 周囲には、絵川も五十嵐もおらず、半透明の生徒の姿もない。
 幻死の世界に来て、一人になったのは初めてだった。
 そもそも、現実世界でも学校で一人になったことはあっただろうか。
 よく、思い出せない。

 あれから、僕たちは別々に過ごすことにした。
 五十嵐が一人にしてほしいと言ったわけでも、絵川が気を利かせたわけでもない。
 ただ、自然とそうなった。
 五十嵐はその場に留まり、絵川はノートを抱えて教室に戻っていった。
 僕は校舎をぶらぶらと見て回り、気づいたら中庭に戻ってきていた。

「……十二年、か」

 僕は五十嵐のやってきたことを『無駄』だと言い切ることも、『違う』と簡単に笑い飛ばすこともできなかった。
 階段の踊り場で、上ることも下りることもできなくなったみたいだ。
 この気持ちは、どんな言葉で表せるのだろうか。
 きっとそれは。

 ――僕がまだ知らない言葉。

 だから今は、これ以上考えても仕方ない。

 僕は両手で自分の頬を強く叩き、立ち上がった。
 僕の手のひらは、もう十分に――。

 温まっている。