絵筆の旋律 ※R15強



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⚠️後半R15強



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「じゃぁ、後はやっとくから。
 騒音と粉塵は、我慢してな。」


「大家さん、何から何まで、
 ありがとうございます。」


大家さんと話す流の隣りに、

俺が笑って、立っている。



これは、夢だろうか。



―――――


ドサッ……

流がソファに腰を下ろす。

「意外と、
 あっさりと進むもんだな。」



「あ……うん。」



「――慧。こっち。」


流がソファを
トントンと叩く。

黙ってそこに座る。


「どうした?
 
 ――心配するな。


 ……まだ、先延ばしにもできる。


 俺だけ、住むこともできる。」





覚悟しろ、
なんて言っときながら

ちゃんと
逃げ道を作ってくれてる。


――お前は、優しいな。



ゆっくりと

流の目を見る。





「これは――夢ではない?」


現実にしては、
都合がよすぎる。


流が驚いている。


「夢なわけないだろ。」

困惑しながら
コーヒーを口に含む。

静かに
俺の言葉を待っている。



「起きたらさ、

 あの大雨の日でさ、

 天井から水降ってきてさ、



 飛び起きた瞬間に……

 戻ってる……とか?」


ブハッ!!
ゲホッ……ゴホッ……

「うわ!流、大丈夫か!?」

カップを受け取り、
背中をさする。


流が涙目で俺を見る。

「ケホッ……
 作家の卵ってぶっ飛んでるな。

 いつから俺ら、
 そんなベタなファンタジーに?」


「こんな都合いいこと、あるか?

 ハッ!
 このやり取りも……

 まさか夢!?

 ほら!ファンタジーの鉄板!

 夢オチ!!」


カタカタと震える。



ピシッ!

デコピンを食らう。

「いってっ!何するんだよ。」

額を抑える。


その手を
流が解き外す。


「蹴っ飛ばして、
 起こしてやろうか?

 そんなラスト、
 俺が編集なら即却下だな。」


顔を近づけ
イタズラな笑みを浮かべている。




――ダメだ。

もう、食べたい。



こつん!

つま先で
流の脚を軽く蹴る。


「蹴り飛ばして起こす?
 それは俺の仕事だろ。」


サッと立ち上がる。


早く。


早く、離れないと。



目に付いた窓。


タタッと走り寄り、
開けようともがく。

ガタガタッ……ガタッ……

「あ、あれ?……開かないっ。」


背中からふわっと、
温度を感じる。

微かなアンバーの香りが
鼻をくすぐる。


――すぐ後ろに流がいる。

俺の身体が、
緊張するのが分かる。


「コツがあるんだよ。ほれ。」


ガタッ……ガコン!
ガラララッ。


「おお、開いた!」

嬉しくて顔を上げる。


触れそうな近さに
外を眺める流の横顔がある。


自然とその首筋に目がいく。

微かに
上下している流の喉。

ほんのりと
笑っている口元。

その口元が、
更に柔らかに
口角を上げる。

歯が少し見える。


風が吹く。

ボサボサくせっ毛が
くるんっとなびく。

流の手が、
髪を無造作にかきあげる。

ポケットから黒ゴムを出し
口にくわえる。

少し天を仰いで
手ぐしを通す。

一気に、縛り上げる。

ブルブルッと頭を振る。



アンバーの香りが

俺に絡みつく。



たまらず口が動く。


「俺のこと誘ってるの?」


「は?」

流が眉を寄せる。

“何言ってんだコイツ”って顔だ。


俺だって、
なぜそんなこと言ったのか
分からない。

うっかりと
こぼした自分が嫌になる。

いっそ、
お互いの記憶から

消し去りたい。


だけど――

劣情が収まらない。



すぐそばのお前に、

ただ、ただ、
食らいつきたい。



指先でそっと
流の腕に触れる。


つつっ……

と滑らせる。


「……お前。」

流が少しだけ身を引く。

「俺に触ることしか
 ――頭にないのか?」


「いや、他にも考えてるさ。
 それとこれとは別物だろ。」


「別物?……まぁ、そうだな。」






「――うん。」






話しながらも

俺の指先は、

流の皮膚を伝い、

下に透ける血管をなぞる。



そのすぐ後を

目線で
追いかけていく。


隙間なく、

指先と目で、



――愛撫する。




2人の呼吸が加速する。

熱く、
混ざろうとしている。



流の喉が動く。

「……触れよ。」

俺と窓の間に
流がゆっくり、まわり込む。

「もう、我慢は要らないんだぞ。」

掠れた声が、
耳元に落ちてくる。


――ズクンッ!

針を振り切る音がする。





……カタッ。カラララ。



俺と
目線を絡ませたまま、


流は

後ろ手で

窓を

閉めた。



カタン……ッ。




―――――



1人で眠ってる時、

寂しいほどに
広かったベッド。



それが――


お互い、何度も

ずり落ちそうになる。



その度に、

引き寄せて、
抱き寄せて、

絡み合い、

転がり合う。


落ちそうになる度、
グンッ――、と引き合う。


乱暴で、

優しくて、

少し痛いくらいに。



流の首筋に、唇を当てる。

そのまま肩へ、滑り落とす。



指先が

胸からみぞおちを、

つうっ……と撫でる。



唇が、
指の軌跡をなぞる。


吸い付くような肌、

美しいカーブを描いた筋肉、

そのカーブを止めるみたいに

ゴロッと、
存在する大きな関節。

その、



ひとつひとつを



確かめるように、

俺の指が、滑っていく。




まだ、足りない。




手のひらを脇腹へ
スライドさせる。


上へ、

下へ、


さわさわと……


だけど、力強く


繰り返す。


筋肉の曲線を

照らすように。


撫でる。




指に導かれた唇が、

小さなキスを

落としていく。




深く上下する、流の胸。



俺の目線が
一瞬、止まる。

――あ。

開いた唇を近づける。

そっと舌を出す。

胸の
ちっちゃな膨らみを
舌先でなぞる。

一気に

ヘソまで
つつっ……と落ちていく。


「ぅあっ……はっ、んっ……」

流がのけぞる。


腹部の筋肉が

顔を出す。



あぁ、エロスの瞬間だ。


――抗えない。


音を立てて――かぶりつく。



「くっ……!はぁ、っ……慧っ!」

流が俺の名前を呼ぶ。



「……なんだよ、流。」

「お前な。」

「??」



「本当に――慣れてないんだな。」



ガシッ!

肩を掴まれ、
押し起こされる。


「――えっ?」


流の脚の上に
ストンと尻もち。

流が、俺を抱きしめる。


一秒もない速さ。


「おい、慧。

 猿になる時はこれを忘れるな。」





「えっ。」

流のゴツゴツとした指が
俺の顎に触れた瞬間、

スッ。

目の前がワントーン暗くなる。


グッ…




ググ…


深く唇が合わさる。


流の舌が、
歯をこじ開ける。

強引に、
俺へと入り込む。



――逃げ場がない。



「んっ……んっ……」

脳の中まで、
入られてるようだ。


全てが、

熱くなっていく。


鼻から漏れる呼吸が

瞳を熱して、

溶かす。




呼吸、
心音、
血液の流れ、

俺のリズムが、加速していく。


訳が分からない。

頭の中が

ぶっとんでいく。



グッ。

強く深く
押し込まれた後、


そっと、

流が俺の唇を離す。



「ぷはっ!……はぁっ……はぁっ、
 ぅん……はぁ、んっ、ぅんんっ……」




唇を離したのに

漏れる声が、止まらない。




快楽に、捕まってる。




流の艶やかな瞳が

ゆらっと優しく光る。



「今日は、これくらいにしとこう。」



頬から、額へ


さっきとは違う

優しい熱が、



転写される。



柔らかな
絵筆みたいに。




―――――



数日後――。


「流っ!聞いてくれ!
 俺、新人賞取った!」

勢いよく扉を開ける。


筆を持ったまま
流が振り返る。

「凄ぇじゃん!
 何ていう公募なんだ?」

「萌えキュンスパダリチャンピオン!」


「……。」


流が俺の足元を
軽く蹴る。

「おい、原稿見せろ。」


パラッ…


パラッ…


「――おい。
 BLじゃねーか。」




―――――




受賞作品の
校正刷りが届いた。


――俺の処女作だ。


どうしても息が上がる。

深く深く、
深呼吸する。


封を切って、
そっと原稿を引っ張り出す。



そこにあったのは――……



おでこを寄せ合い、
鼻をくっつけ合う、
二人の子供。



その下に、小さく――



“Liu”




「……えっ」

息を呑む。

「これっ……」

ガタッ!

立ち上がり、
廊下へ飛び出す。


バタバタバタバタ……!!

バンッ!



絵の具まみれの流が
振り返る。

「お前はいつも、騒々しいな。」


「りゅ、りゅ、りゅ!」


「なんだよ。
 ちょっと落ち着け。」


落ち着いてみるが、
言葉が出ない。


原稿を
ぎゅっ!と突き出す。


「これ!お前っ、

 俺の装丁っ……

 お前がっ……俺っ……

 ――なんなんだよ、もう。」



グシャグシャだ。

流がクッと笑う。

「語彙が終わってんぞ。

 まったく……
 
 泣いたり笑ったり、
 相変わらず、忙しい奴。」


「だってさ!これっ!
 このっ……これ!

 ずっと、憧れてたんだ!」


「――うん。
 俺のやりたかったことも
 叶ったわ。」







触れた先に、残るもの。




~完結~

ここまでお読み頂き、
ありがとうございます。

ほんの少しでも、
貴方のキュンに
触れることができてたら
とてもとても嬉しいです😁

―WhoCROW―