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⚠️R15強
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「俺は、――ゲイだ。」
流の、
この言葉の重さ。
俺は、驚きもせず
無抵抗に受け止めていた。
代わりに、
自分の冷静さに驚く。
「だから、
初めて会った時、
帰れって言ったのか?」
流が、
両眉を少し上げる。
――そうだよ。
って言ってる。
「なのに、
俺が……居座った。と。」
「そう、だな。」
こんな時まで……
お前は、
柔らかく笑うんだな。
「今まで、辛くなかったか?
……寂しくなかったか?」
俺の口から
言葉が零れ落ちる。
流がゆっくりと首を振る。
「――もう慣れてる。
子供の頃、違和感に気付いた。
歴はベテランに近いんだ。」
そう言って笑ってみせる。
その表情に、
流の今までが
きっと、
全部込められてる。
俺の勘が当たってれば、
流は
この質問に、
“YES”と言うはず。
胸が、ズクッ……と痛い。
でも、聞きたい。
俺にとっても
大切なことだから。
「子供の頃――……。
もしかして、それでか?
クラブチーム、辞めたのって。」
流の目が、
切なく光る。
「――お前が、そこに居たから。」
「……俺。」
「そう、――お前だ。」
そうか。……俺、か。
うん。
――ビンゴだ。
なんだよ、もう。
なんなんだよ、もう。
あの頃の俺は、
お前の佇まいに。
筋肉の連動に。
激しく上下する肩に。
汗を拭う握り拳にすら、
いつも
目を奪われてた――。
おでこを出し合って、
鼻先をくっつける遊び。
その時は……
ドキドキしてた。
俺は、
こんなの、
友達同士でおかしいって
……気づいてたよ。
だけど。
この、
倒れてしまいそうな、
身体が跳ねるような、
“気持ち良さ”は何だろうって。
“もっと欲しい”って。
ただ、嬉しくて。
そればっかりだったんだ。
お前も、
同じ気持ちだったなんて……
能天気に
喜んでる俺とは対照的に、
お前は――
苦しんでたのか。
待てよ。
あれから、
もう15年経ってる。
俺もずっと
恋とは無縁だったけど、
こんな成りして、お前もか?
色気ダダ漏れの、お前が?
「ぶはっ……!」
耐えられず吹き出す。
「なんだよ、もう!ククッ……
お互い15年も
こじらせてるなんてさ……
苦しいっ……アハハハッ!」
「ひどいな。笑うなよ!」
「待って。
無理っ……ブハハハッ!」
「チッ……。」
クィ……
流の手が、
俺の顎を持ち上げる。
「俺の目を見ろ、慧。」
「……なんだよ。」
まただ。
その瞳に閉じ込められる。
逃げられない。
「同じ熱量で、
愛し合える恋人に
出会えることは奇跡だ――。
お前がその“奇跡”なら、
俺は絶対に逃がさない。
覚悟は――
出来てるんだろうな?」

逃げられない覚悟?
なら、喜んで捕まるよ。
お前の
瞳の奥の奥まで
俺が入り込んで
居座ってやる。
俺たちの視線が
絡み合う。
解け合う。
そして、絡み合う。
幾度も繰り返す、
目での愛撫。
触れられるよりも
――数倍、ゾクゾクする。
もっと、
もっと、俺を見てくれ。
その目で、俺に触れてくれ。
呼吸の温度上昇。
熱い。
早い。
荒い。
唇が、待つことを拒んでる。
早く。
流を――食べたい。
ガシッ……
俺の両手が、
流の頬を掴む。
そのまま
カプッ……
流の柔らかな熱を
甘噛みする。
グッ……
もっと、食べたい――
「……慧っ!」
流の手が
俺の背中ごと抱える。
押されるように
背中を反らす。
もっと深く
――噛み付く。
「……くっ……はぁっ……はっ……」
一度。
二度。
三度。
電光のように。
夢中で、
――噛みつき合う。
絡み合う腕が、
強く、
身体をまさぐる。
「んっ……はぁっ……はぁっ……」
筋肉、関節、
湿った肌の感触、
全部を確認するように。
呼吸の温度までも
覚えるように。
手を滑らせ、
この瞬間を焼き付ける。
その手を、
流の指が追いかける。
俺の指をとらえ
ゆっくりと握りしめる。
擦り合いながら
指同士を交差する。
スッ……
僅かに俺を引き剥がす。
「はぁっ……はぁっ……」
熱を帯びた、
荒い呼吸が混ざっている。
ほどけない視線。
触れそうな睫毛。
濡れた瞳が
湿度をあげる。
流が、大きく深呼吸する。
喉が上下する。
そして――
射るような目を
俺に向けた。
「俺の言葉、忘れるな。
覚えるまで何度でも
繰り返してやる。」
その光の強さに、
息を呑む。
裏腹に、
唇が流を欲しがる。
もう一度、触れたい。
指先が、
流の胸元に伸びる。
流が
すいっとかわし、
静かに立ち上がった。
「ちょっ!待て待て。
今離れるのはおかしいぞ?
俺、このまま……確かめ合いたい。」
体の疼きが止まらない。
もう一度、手を伸ばす。
掴もうとして、
スカッ!
空を切る。
「ちょっ……マジで!もう!」
さすがに
イーッ!となる俺。
スタスタと歩きながら
流が言う。
「猿になる前に
やることあるんだよ。」
――は!?
「猿だと!?お前っ……」
流は振り向かず、
机の引き出しを開ける。
紙の擦れる音。
数枚を取り出し、
俺に歩み寄る。
パサッ。
目の前に書類を置く。
「――ここ、読め。」
指先で、トンッ。
なんだコイツ。
こんな状態で
俺を放置しやがって。
ムシャクシャする。
「もう!なんの書類?」
書類をひったくる。
黙って
視線を落とす。
―――――
「ええぇぇぇっ!?」
ソファからずり落ちる。
口をパクパクさせる。
「その顔っ!最高だな!」
声を立てて笑う流。
その姿を
しおしおと見上げる。
「購入?ブロック施工…?
俺、こんな時に
何を見せられてるんだ?」
「住みながら建て替える。
お前が同意のサインすれば、
ここは、ずっと、
――俺たちのものだ。」
呆ける俺。
流が目線を合わせて
しゃがむ。
「かなりの優良物件じゃね?」
ニッと笑う流。
相変わらず
その瞳には、
俺が居座ってる。
瞳の中の俺と、目が合う。
その俺は、
はにかんで
笑ってるように見えた。
「クスッ……
――うん。
そうだな。即決だな。」
―――――
(キーボードを弾く音)
カチャカチャカチャ……
カチャッ……
カチャカチャ……カチャッ
……タンッ!
『ゆらゆらと。うろうろと。
俺は彼の瞳の奥に、
居座っていた。
すうっとピントが合った。
きっと、ずっと、
まっすぐに見ていたんだ。
未来の形を、
探していたのかもしれない。
深部が、熱く疼いている。
放熱する術を求めて
荒ぶっていたはずなのに。
今は、この熱を
胸の奥底に
こっそりしまっておきたい。
理由も分からず
惹かれ合っていた。
同じ温度で。同じ湿度で。
15年なんて、遠回りだった。
だけどその年月は、
僕たちを大人にして
今の時代に
連れてきてくれたんだ。
彼の言葉は、
俺の脳裏に焼き付いて
一生消えることはないだろう。
忘れるな、と。
何度でも繰り返してやる、と。
きっと、
ずっと、
こだまするんだ。』



