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※R15
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「そのまま……
静かにしてて――……」
低い声が、頬に響く。

窓から差し込む光が
変わらず
俺たちを照らしている。
とても、静かだ。
俺の頬の下。
流の呼吸だけがクリアだ。
耳を傾けながら
声をかける。
「……なぁ。流、起きてる?」
「起きてる。」
被り気味な流の即答に
少し戸惑う。
「えっと……覚えてるか?」
「――何をだ。」
「つい最近……
俺が“暴れた”こと、だけど。」
「超×3覚えてる。」
「超×3って……。小学生かよ。」
縮こまってた俺の心が、
ふっと解ける。
スラスラと
言葉が出てくる。
まるで、
待っていたかのようだ。
「びっくりしたんだよ。
初めてお前が筆持ってるの見て、
迫力すげぇってなって。
しかも、Liuってサインするし。
てか、俺、
その人の本抱えてるし。
情報量多すぎて。
感情、ぐちゃぐちゃになって。」
背中にある流の手に
ほんの少し力が入る。
その緊張を受け止める。
流、ごめんな。
きっと嫌だったよな。
追い出されても
仕方ないよな。
とても驚いてる。
自分が、こんなにも
危ない奴だったなんて――
「どうしようもなくて、
触れたくて。
……止めらんなかった。」
「――うん。」
トン…。
トン…。
流の手が
俺の背中を小さく叩く。
繰り返される
微かな振動が、
俺の緊張を溶かしていく。
お前は優しいな。
うん。言おう。
お前、出てけとか
言えないだろう?
「俺――
ここに居てもいいのかな?」
後ろ髪引かれる思い。
狡い言葉。
『俺出てくよ』が何で言えない?
俺、どうしようもない。
流の手が止まる。
深く大きな呼吸音が
頬から伝わる。
「――何だ?それは。」
「だって……!」
頭を上げようとする。
その後頭部を
流が撫でるように押さえる。
「正直。お前の考えてること、
今は全く分からん。
でも、知りたいと思ってる。」
静かな低い声が
俺の心臓にまで
響いてくる。
声を絞り出す。
「俺自身も……
よく、分かってないんだ。」
「それは、大変だな。」
「うん。……大変なんだ。」
「俺から質問してもいいか?」
「うん、――いいよ。」
「ずっと、触りたかったって?」
「……あ。……うん。」
「どういう意味だ?」
「……。」
「無理に答えなくていい。」
「なんて言えばいいのか……
今は、分からないんだ。」
「そうか。」
「うん……。」
流のTシャツを掴み
顔を覆う。
「……えっ?
お前、もしかして泣いてる?」
「うるさい。」
「いや、泣くところあったか?」
驚きながらも
少し笑う流の声。
「うるさいって。」
起き上がり、
掴んだTシャツを引っ張る。
流の胸に、
強く押し付ける。
「俺っ……情けない奴だ!
なんでそうなったんだ!?」
「――泣くなよ。」

少し荒れた
流の指先が、
俺の目尻に触れる。
流……
怒ってもいいんたぞ。
今すぐ出ていけって、
顔も見たくないって。
なじってもいいんだ。
「優しくするな……。
俺は最低だ。
自分の欲を……お前に押し付けた。」
陽の光だけが、
ぽかぽかと
静かに、暖かに、
僕たちへと降り注ぐ。
流が
すうっと息を吸い込む。
かすれた声が
部屋に低く響く。
「なぁ、慧。
なんでそうなったか、
俺にも分からないことがある。
ただ、あの時、
俺も体が熱くなったんだ。
反応した。
――すまん、同罪だ。」
「……それって。」
流の指を握り、
目線を上げる。
「それって、どういうことだ?」
流の目が泳ぐ。
額に手を当て
隙間から俺を見る。
「――聞くなよ。
そういうことだよ。
俺も欲情したんだよ。お前に。」
流の瞳の中に
ゆらゆら揺れる俺がいる。
その瞳から出られない。
流、
鍵でもかけたのか?
呼吸が
小刻みになっていく。
「それ以上言っちゃダメだ。
そんなの、
今度こそ、
俺、――もう無理だよ。」
流の目を見つめたまま、
細かに
何度も
首を振る。
突然、視界が揺れた。
「うわっ……!」
ドサッ。
「えっ?」
何がどうなったのか、
分からない。
気づけば、
俺はソファに転がっていた。
グッ……
流がゆっくりと
俺に、
乗りかかってくる。
艶やかな光を帯びた瞳が
俺を捕らえている。
その光が
俺の目、
唇、
落ちては上がる。
ゴクッと
俺の喉が鳴る。
「な……にしてるんだよ……。
熱あるだろ……
寝てろ、よ。」
裏返った声がこぼれる。
みぞおちが震えている。
ソファに沈んだ
俺の身体。
完全に
流が覆いかぶさっている。
――ヤバい。
簡単に、
逃げられない。
「流、正気か?
熱に――
浮かされてるんじゃないのか?」
「正気だ。
お前がさらけ出したなら、
俺もそうするのが
道理だろ。」
「……お前……熱は?」
「あるけどない。平気」
「いやでも……こんなに熱い……」
「――慧。」
流が遮る。
「いいか。よく聞け。」
僅かに、
流の視線が揺れる。
俺の目の奥を覗き込む。
「俺は、――ゲイだ。」

―――――
(キーボードを弾く音)
カチャカチャ……
カチャカチャ……カチャ……
『時間が――止まった気がした。
彼の言葉は、
ただ静かに落ちてきた。
強さも、荒さもない。
深いプールに
落としたビー玉みたいに。
揺らぎもせず、
胸の奥へと沈んでいく。
視線が外せない。
少しの隙も見逃さない。
ゆらり、ゆらりと、
捕らえて離さない。
拒絶されることが怖かった俺は、
戸惑いながらも、
喜びに打ち震えている。
戻れなくなることを、
心の奥では望んでいる。
――そう、二人一緒に。
俺の邪なこの感情。
彼は、
気づいているんだろうか。』



