ある日、ゾンビを助けたら。



煌人――空、見てるか?

初雪が降ってるよ。



ひらひらと、

風に吹かれて
あっちへこっちへ

舞い散る雪の中、

川沿いの遊歩道を
駆けていく。


目を凝らして
やっと見えるほどの
小さくまばらな雪。


「まだ止むなよ!」



俺の足が、更に加速する。



「はぁっ!はぁっ!」

冷たい空気が
俺の中に入ってくる。

負けじと
熱い息を弾ませる。



遊園地のゲートが見えた。


少しスピードを緩める。


そうだ。
素通りできないんだった。


「はぁ……はぁ……」


立ち止まり、
ゲートを眺める。


俺とゲートの間の

ほんの数メートル。




――遠い。




久しぶりのゲートが、
まるで人見知りしてるみたいだ。




一歩一歩近づいていく。


柄にもなく緊張している。




「おや、風太さん。」


「――え?」


声の主を
きょろきょろと探す。


「こっちこっち。」


「え?え?」




――あ。居た。


いつかのスタッフが、
手にほうきを持ち、
落ち葉の山の横に立っている。


この人に

聞きたいことがある。


でも今は、
止みそうな雪が……気になる。




――どうしよう。




「この季節は
 落ち葉拾いが楽しいねぇ。」


「あ、はぁ……」


「中に用事かい?」


「あ!そうです!
 非常に急いでまして!」


「そかそか。近道をどうぞ。」


カチャンッ……

生い茂る木の奥にある
小さな扉を開けてくれた。

俺の目が
スタッフと扉を
忙しく行き来する。


えーい。もういいや!!


「ありがとうございます!」

一礼をして、また走る。




本当は――怖い。

またあの更地を見ることが。




一晩で
あのホラーハウスが
忽然と消えてしまうなんて、
誰が予想できただろうか。



イカれた“ど変態ゾンビ”。

どこまでもイカれてる。




メリーゴーランドの向こうには
何が待ってるんだろう。


絶望か?

それとも――。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




「――なんだ……?これは。」


俺の目の前にドーンと。


「氷……の洞窟?」



✦・┈┈┈┈┈

シロクマ愛ランド
心も体も氷点下?

✦・┈┈┈┈┈



「愛……ランド……。

 どんなネーミングセンスだよ。」


シロクマだか何だかしらんが、
強烈におかしなもん作りやがって。

入口には
等身大シロクマが、
アホそうな顔で突っ立っている。



ここは
ホラーハウスが在るべき場所だ。

煌人の、
大切な場所なんだぞ。



「何、勝手なもん建ててんだよ……。

 “心も体も氷点下?”って
 客に問うんじゃねぇよ。

 あのシロクマ……
 アホ面しやがって――ムカつく。」



ザッザッ……

氷の洞窟に近づき、
シロクマの鼻っつらを
指で軽く弾く。

「お前が居ていい場所じゃねーんだよ。」

ポコンッ。



シロクマがこっちを見る。

「あ、おめでとうございます。
 1人目のゲストです。」


「わーっ!

 ……ビックリした。

 中の人いるのかよ!」


「ちょっ……やめてください。
 中の人はいません。」


「黙れ、《《シロクマ風》》。」


「ヒドイです!
 看板シロクマなのに!」


「うるせぇな。
 パンダにしてやろうか?」


「ヒィ。」

後ずさるシロクマの鼻に
手のひらを当て押しのける。

「大人、1名。入るからな。」


――イライラする。


本当はあの鼻を
引っぱたいてやりたい。

よく我慢した。俺、偉い。



コツ……コツ……

ローファーの音が響く。


コツ……ッ。


「うわ……」

息を飲む。

洞窟の中は、
氷のオブジェと透明な板で
幾重にもスペースが分けられ、
所々に鏡が配置されている。

青と紫をベースに
ふわふわと天井の色が変わる。

キラキラと輝くもの……

あ、雪の結晶だ。


プロジェクションマッピングか!


「へぇ……。」


もう一度、ぐるっと見渡す。


「二階もあるのか。

 ……洞窟全部が迷路になってる。

 これは……すごいな。」


後で“《《シロクマ風》》”に謝っておこう。

こんなにクオリティが高いとは。

アトラクション名からは
想像もできない。


「ギャップありすぎだろ。」


くるりと回りながら
四方八方を見上げる。


キラリ、キラリ、
天井から舞い降りる
幾つもの雪の結晶。

まるで星空の中にいるみたいだ。


夏休みのあの日の、
弾ける火花を思い出す。


嬉しそうに
俺を見て微笑んでいた。


――煌人。


「あー、もう。
 思い出しちゃったじゃん。
 
 やっぱ、ここ、ムカつくわ。
 ……帰ろ。」


ホラーハウスの面影すらなく、

新しいものが出来てしまった。


煌人との日々が
完全に消されたような、

――爽快な喪失感。


俺たちの日々なんてなかったように
ここには新しいゲストが来て、
新しい時間が流れるんだろう。



雪の結晶を手のひらに映す。

すうっ……と流れていく。

そしてまた、違う結晶が

俺の手のひらを

光りながら滑っていく。



「作り物の雪――……

 俺にぴったりだな。」



ガサッ!!

リュックを軽く背負い直し、
肩紐を握りしめる。

ギュッと。



“ほら、もう帰ろう。”



自分に言い聞かせるように。



さっきまで
何もかも忘れたように

顔を上げて
辺りを眺めていたのに、

今の俺は

重たそうな自分の足元と、

微かに視界に入る
通路の先を見ている。



コツ……コツ……



ローファーの音が

“お前は今、ひとりぼっちだ”

って、親切に教えてくれている。



┈┈
┈┈┈┈
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


帰ろうって思ったものの。


ただの迷子に成り下がる。


「出口どこだよ。
 クソ……完全ドツボじゃん。」


忘れてた。
ここ迷路だったわ。

しかも透明で向こうは見えるわ、
鏡で視界錯乱させられるわ、
すぐに出られるとは思えない。


「――詰んだな。」


コツ……コツ……

コツ……コツ……

コツ……ペタ……

コツ……ペタ……


コツコツ……ペタペタ……


――ん?なんだ?

試しに足を鳴らす。

コツ……?


ペタ……?



うわっ……返事した!

――怖っ!!


ペースをあげて
歩く。


コツコツコツコツ……


ペタタタタタッ……


コツコツコツコツ……


ペタタタタタッ……



――バッ!!

立ち止まりながら
一気に振り返る。


――ドンッ!

俺の鼻先に
もふもふとした何かがぶつかった。


「いててて……」

両手で鼻を覆う。


「あの、大丈夫ですか?
 クソ可愛い鼻は潰れてませんか?」



――クソ可愛い?



「――鼻を覆う姿っ……♡

 今すぐポケットにしまいたい。」


両手の上からそっと
目だけを出す。


全身毛むくじゃらのモサモサ……


――あ、雪男だ。


「グハッ……目だけが俺をっ……♡

 目玉の徒競走来たり!

 はうっ!心の臓がっ!

 俺のっ……心の臓がぁ……」


――バコッ!!

気づいたら、
思い切りソイツをはたいていた。


ピタッと――雪男停止。


「あ。悪い。
 なんか、反射的に。」


「ふふふ……
 ハムちゃんのおテテで
 もっと叩かれたい……♡」



これは……間違いない。



――アイツだ。



「ど変態ゾンビ。」


「ヒィ、しびれます!!」


「きっしょ!!」



――煌人じゃん……。



「なんだよ……
 なんなんだよ……
 お前、マジ、なんなの……」


ポタッ……ポタッ……



「……ムカつく。

 ……ウザイ。
 
 ……きしょい。」



ポタポタポタッ……



「――会いたかった。」



「風太……?

 お願いだから泣かないで。」



「お前はバカだ!!
 強烈に泣いてやる!!
 
 うわぁぁーーーん!!」



「ギャーッ!!

 やめて、泣かないで。

 どどど、どうしよう、あわわ……

 ――えい!」



ぎゅうぅぅっ……



顔ごと
力強く抱きしめられる。


背中にトントンと
温かい手のひらの温度。


「よしよし。
 いい子だ~いい子だ~
 
 ――いや、違いますな。

 えっと……
 ハムちゃんや~ハムちゃんや~

 よしよし……」


――ゴッ!!

もふもふ越しに
頭突きを食らわす。


「ゲフッ!!」


「誰がハムちゃんだ!!
 泣き止んだら覚えてろ!!」


トン……トン……


「……はい。
 喜んで、引き受けますよ。」




┈┈
┈┈┈┈
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「あの、風太さんや?」

「なんだよ……グスッ。」

「もしかしてなんですけどね。」

「……なんだよ。」



「俺で鼻水も拭いてませんか?」



「拭いてねえし。

 ブーッ!!グスグスッ!!」


「ぅわーっ!!
 ほら!!拭いてますやん!!」


「ぷは~……っ。」

思いっきり、顔を擦り付け
すっと離れる。


煌人が
ベタベタのもふもふを
呆然と見つめている。

「これ……」


「ふん。謝んねーぞっ!」

プイッとそっぽを向く。


「いえ、持って帰って保管しても?」


「《《やめろ》》!!
 今、本気で引いたぞ!

 返せ!!
 俺の鼻水、全部返せ!!」


ククッと煌人が笑った。



「ねぇ、今、笑った?
 いつもそうやって笑ってんの?」

ポケットに手を突っ込み、
下から煌人の顔を覗き込む。


「風太、それ、懐かしすぎます!」


「ふふっ、だろ?」


「さて、外まで送ります。
 その後、お時間あります?」


「時間……ある……けど。
 
 何か
 大事なことあったような……

 あーーーーーっ!!」


そうだ。
そうだそうだ。

初雪っ!!


「煌人!すぐ外に出れる!?」


「出れますけど、どうしたんですか?」


「理由は後!今すぐ出よう!!」


「了解っ!!
 久しぶりの爆走行きますか!!」


「え?」

――ヒョイッ!!

「ぅわ!お前また!
 俺を米俵みたいにっ!!」


「じっとして!!」


――ギューンッ!!

俺の髪が逆さまになびく。

「うそ~ん……
 やっぱイカれてるわ……」

煌人の走る衝動のままに
俺の手足がぶらぶらと揺れている。



「――到着ぅ。」

ぶわっと砂煙があがる。


「ってか、おかしくね?
 この砂煙どっから出てんだよ。」


「あ、これですね。」

腰に砂袋付けてやがる。


もう、どうでもいいわ。

そうだそうだ。
コイツと居たら
こんなんばっかりだった。

懐かしいわ。
うんうん。


空を見上げる。


――止んじゃったかな。


目を凝らす。

チラッ……チラッ……と
小さな白い雪が見えた。


「煌人、空見て。」


隣に立つ雪男が空を見上げる。


「何があるんです?」


「――いや、脱げよ、《《それ》》。」


「あ。へへっ……さーせん。」


ゴソゴソッ……

バッ!!

パサッと
少し伸びた黒髪が揺れる。


久しぶりに見る煌人だ――。


照れくさくて直視できない。

目を逸らし、
空を見上げる。

「ほら、何か見えない?」


「――あっ。


 ……ちっちゃな雪。」


「初雪だぞ。
 お前、約束忘れたんか?」


腕組みをして
じろりと目線を投げる。


「中にいて、
 情報が入ってこなかったです。
 すみません……。


 でも!忘れてねっすよ!

 忘れるわけなかろうが!」



「言葉おかしくなってんぞ。

 いいんだよ。それはもう。

 俺は、
 お前と見られただけで

 超~満たされてんだから。」


必死の煌人に
クスッと笑いがこぼれる。


「風太、
 バリケードたちから
 聞いてると思いますが、

 俺からも話をさせてください。」


ん?

バリケードたち?


「あいつらがどうした?
 なんの事だ?」


「……え。」

みるみる煌人の顔が青ざめる。

「まさか、あいつらから、
 何も聞いてないんですか!?」



首を傾け、肩をすくめる。



煌人が
手のひらで顔を覆う。

指の隙間から俺を見る。


「……じゃぁ、俺は、

 何も言わずに消えた……。

 ……ってことに?」




「そう思ってるけど?」




「えええっ……何てことだ……。

 違います。違うんです。

 風太、ごめんなさい。
 本当にごめんなさい。

 もしかして、
 傷つけてしまいましたか?」


「そだな。超~泣いたわ。」


「想い人を
 悲しませるなんて……

 俺は……最低なことを……」


口に手を当て、
煌人がカタカタと震えている。


何やら
行き違いがあったようだな。

俺もあの時
最低な別れ方したんだ。

煌人を責める気にはなれない。


「もういいよ。会えたしさ。

 で?
 ――話せよ、続き。」



「あぁ……はい……。

 俺、初めてだったんです。

 引越しが嫌だ。
 離れたくない。
 
 ――そんな風に思ったのが。

 風太や
 バリケードたちと出会うまでは、
 俺の人生はそんなもんだと。

 疑問すらなかったのに。」


「うん。」


「だから、
 年間通して……
 ずっと、ここに居られるように、

 《《企画》》を通して帰ってきました。」



「うん?何て?企画?

 ――お前、何者なの?」



「あれ?言ってませんでした?

 俺、この遊園地の息子です。

 一応、副社長やってます。」


「はぁーー!?」


うっわ。ビックリした。

ビックリした。

ビックリした。

生まれて初めてのレベルで

――ビックリした!!



「俺が初めて抵抗したんで……

 新学期も、
 押し切って登校しようとしたんで……

 祖父母に
 スマホも取り上げられまして。」


「おお……
 じいちゃんばあちゃん怖えな。」


「あぁ、鬼ですね。
 だけどその気概があってこその
 遊園地でもあるのですが。

 一晩で
 跡形もなく消えるのは使命だと、
 それを本当にやってのけるのは
 簡単なことじゃないですから。」


「そう言えるお前、すげえよ。」


「へへっ……
 風太に褒められると……」


「ロケット飛んじゃうよな。」


「いえ、
 空中分解からの……」


「そこ掘り下げなくていいから。
 続き、はよ。」


「それでですね、
 ひたすら企画書を練ってました。

 初雪の季節には絶対!と
 それだけを思って……。」


「で、雪男に。」


「認められた企画が
 《《コレ》》だったんで。

 詰んだゲストの案内役として
 雪男に任命されました。」


「さらっと言ってるけどさ、

 お前、めちゃくちゃ
 大変だったんじゃね?」


煌人の目が
静かに俺の目を見つめる。

真っ黒な瞳に、俺が映ってる。

また、映ることができてる。



これは夢か?



夢じゃないよな?


するっと煌人の手指に
自分の指を這わせる。

親指の腹で
その手を優しく撫でる。

「この手は、
 たくさん頑張った手なんだな。


 お前、
 ゾンビあんなに好きだったじゃん……

 なのに雪男か……。

 ――それで良かったのか?」





「ここに居続けるためなら、

 俺は何度でも生まれ変わります。

 風太の傍にいるためなら、

 俺は何にでもなりますよ。」




「煌人、お前……」



「大好きです。

 風太が、大好きなんです。

 ずっとずっと

 傍に居たいんです。」



煌人の瞳がゆらゆらと
俺を捕らえている。


少し顔を傾け、

俺の目と、
触れるべき場所を、

真っ黒なまつ毛が

上下しながら

近づいてくる。




いいよ。

俺も触れたい。





ある日、ゾンビを助けたら

ゾンビが雪男になって帰ってきました。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「そこ。今すぐ離れて。

 綺麗なエンディングなど与えない。」



――ピタリ。


鼻先が触れたところで
冷たい声に止められる。


ドンッと《《シロクマ風》》が立っている。


「出た。シロクマ風。

 なんだよ、邪魔すんなよな。」


「わっ……風太っ……

 ダメです、アイツはダメッ。」


煌人が慌てて俺の口を塞ぐ。


シロクマ風が腰に手を当て
ビシッと俺を指差す。

「煌人、コイツがお前の想い人か?」


「あ、はっ……はい。
 牙の生えたハムちゃんですね。

 ふふっ♡」


「ふーん、牙の生えたハムか。

 看板シロクマを
 パンダにすると言ったお前を、

 俺は――絶対に認めない。」



なんだ、コイツは。

ムカつく野郎だ。


煌人の手を引っぺがし、
シロクマ風の指を握りしめる。


「パンダじゃなくて
 ツキノワでもいいぞ。
 ちょっとだけ白を残してやるよ。」


バチバチッ!!


俺とシロクマ風に火花が散る。



「あぁぁ、ダメです。

 お二人とも、仲良くしましょう?」


「うるせぇ。」
「うるさい。」


チッ!

ハモっちまった。



ゴソゴソ……

バッ!!

シロクマ風が頭をとる。



「え。……茶髪の煌人?」



煌人が額に手を当て
大きなため息をつく。

「俺の双子の兄貴です……。」



「ええぇぇーー!?」



ソイツは俺たちを見て、
ニヤリと笑った。


「よろしくな。

 俺の《《新しいクラスメイト》》くん。」



あぁ、神様、ヤドカリ様。

俺たちに平穏はないのですか。




「……兄貴、出てくるの早すぎ。
 せめてマシュマロは食いたかった。」

バコッ!
ボコッ!


俺とシロクマ風の手が

煌人を思い切りはたいたのであった。


✦・┈┈┈┈┈

ハムちゃんの

マシュマロもぐもぐ

おあずけだ


✦・┈┈┈┈┈



┈┈
┈┈┈┈
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



――学校のベランダ。

空を眺める鷹野に
富士川と茄子が窓から声をかける。

「たーかのっ。何してんだ?」
「なにか、耽ってますなぁ。」

「あぁ、光星、上手くいったかな?と。」

「いったんじゃね?」
「まさかお前、責任感じてるのか?」

「うん、まあ。」


新学期の朝、
偶然、俺は洞と出くわした。

ひどく慌てているようで
つい、聞いてしまった。

「どうした?
 もしかして光星に何かあったのか?」

すがるように洞が言った。

「時間がないので、
 伝言をお願いできますか?」

「え?あぁ、いいけど。」

「俺、今からしばらく居なくなります。
 でも、雪の季節に必ず帰ってきます。
 その時には、
 光星を不安にさせることは
 もうない。と。」


ドクン……

何だか胸が痛くなった。


「待てよ。
 そんな大事なこと、
 お前、自分で言えよ。」


「そうしたかったのですが……
 連絡がつきません。

 悔しいけど、伝言を……
 ――お願いします。」


連絡つかない……か。
既に何かあったようだな。

大きく息を吐く。


「わかった。
 でも、伝言は必ずじゃないぞ。」


「え。」


「光星に委ねる。
 俺は、一方的に聞かせたくない。
 アイツにも選ぶ権利があるだろう。」


「でも、しかし!」


「お前、なんでもっと早くに言わない?
 そこは履き違えるなよ?」


洞が唇を噛む。

また俺の目を真っ直ぐに見る。


「――うん。
 鷹野、ありがとう。
 その通りです。
 もしも光星が聞いてくれるなら、
 伝えてもらえますか?」


「いいぜ。
 何かは分からんが、
 お前、頑張れよ。きっと大丈夫だ。」


ふっと洞の表情が和らぐ。


「ありがとう。
 もちろん頑張りますよ。」






うん。洞、お前を信じてるよ。





✦・┈┈┈┈┈┈┈ 終 ┈┈┈┈┈┈┈ ・✦


ここまでお付き合い頂き、
ありがとうございました。

一旦、ここで完結となります。

見つけてくださった方、

並走してくださった方、

心より感謝致します。


WhoCROW R8.8.18記