ある日、ゾンビを助けたら。



✦・┈┈┈┈┈


こみ上げる

熱い何かは

レモン味


✦・┈┈┈┈┈





――(ほう) 煌人(きらと)の回。



どうも、こんにちは。


昼は、
ひっそり暮らす高校生。
 教室のすみっこ在住、
 推し活が生きがい。


夕は、
スペシャル敏腕ゾンビ。
 武術使えますし、
 基本何でもありです。


謎多き俺ですが、
気にしてたら
物語進まないんで、

そんなもんだ、と
受け入れてください。


風太に出会うまでは、

人を、恐怖のどん底に
突き落とすことしか
頭にありませんでした。


ゾンビ歴=年齢の俺、

ほんの束の間の
ゲストとの出会い――

そして、突然の別れ。
(俺が驚かすと秒で別れが来ます。)

その、ほんの少しの交流を、
大切にして生きてまいりました。




ある日の図書室――

うっかり見つけた、
非常にだらしない風太。


見つけてすぐ
覗き見を始めたんですが、

教室での姿とは――まるで違う姿。



ひとり、毒を吐きまくり、

ソファに足を投げ出し、

服をめくりあげて

腹をボリボリとかいていました。

※第6話参照
 ↑俺、気配消して見てました。



なんて……悪い口っ!

なんて……綺麗な腹っ!

なんて……
だらしなく
――悪い顔をしているのだろう。


牙の生えたハムスターかと
マジ萌えました。


俺は、手のひらを
ぎゅっと胸に当てました。

心臓がトクトクと音を立て、
急に走り出したものですから、

そうしないと
倒れてしまいそうで――


呼吸と心臓のリズムが

浅く速く、
静かに強く、

全身に
血が巡るのを感じました。


その瞬間から、

俺から見えている世界が

キラキラと輝き、

カラフルになりました。



俺は心の中で、
彼をキラメキ君と呼び、

彼の一瞬一瞬を
大切な宝物としました。


まるで、
広い砂浜で見つけた
キラッと光る小石を
ポケットにしまい込むみたいに――


物心ついた時から、

ホラーシーズン《《だけの》》居場所って

割り切って生きてきたのに、



それがもう……

どうしても割り切れないのです。



風太は、
俺の生き方を変えてくれたんです。


こういう気持ちを、なんて呼ぶのか。

ググってみたところ
“萌え”“推し”と呼ぶ、と。

生活の一部になっていることを
“推し活”という、と。


なるほど。

俺の、このカラフルで熱い
表現に困る日々は――“推し活”。

脳にインプットしました。



┈┈
┈┈┈┈
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


あれは――
ほんの少し気温が上がった日。


ホラーハウスに
バリケード3人組、
富士川・鷹野・茄子がご入場。

風太のことを話してるんで、
職場放棄して
合流してしまいました。




――俺の部屋。



ふとした隙間に、
富士川が言う。

「洞って光星が好きなの?」

「――えっ?」

俺が反応すると同時に

バシッ!(鷹野)
ドカッ!(茄子)

「うがっ!」(富士川)

彼は、他のふたりに
制圧された。


「洞、ごめんな!」

謝る茄子。


「ホント、
 コイツはデリカシーないな。」

富士川を
頭から押さえつける鷹野。



「――いえ、大丈夫ですよ。

 見てて分かるでしょう?
 “好き”どころか“大好き”です。」


「さらっと認めちゃうんだ!」

3人が声を揃える。


「認めるも何も……。
 おかしなことを言いますね。」

正直、驚く。
分かりきったことを
何をこんなに騒いでいるのか。

しっかりと
教えておかなくては。

「大好きというより、
 超×∞の好きですよ。」


「ヒューーーーゥ♬」

富士川と茄子が
身体をくねらせる。


――気持ちの悪い子たちだ。

ちょっと、引く。


その俺の肩を
鷹野が指でトントンとやる。

「おい、洞、念の為聞く。

 それって――

 《《恋愛感情》》の“好き”だよな?」


しばらく
俺と鷹野、見つめ合う。


「レンア……イカ……ン……

 えっと、何でしたっけ?
 魚か何かですか?」

ふと、
イカとドジョウを思い出す。


「まず、切るところ違うから。

 えー、タイムタイム……」

鷹野が
手のひらを俺に向ける。

「正しくは、
 レンアイ、カンジョウな。」


「ふんふん。
 真ん中をイカで
 繋ぐ訳ではないのですね。」


「ちょっとよく分かんないけど、
 
 とにかく、
 ぜんっぜん違うから。」



他のふたりへ
目線をなげる鷹野。

明らかに困惑している。

3人、顔を見合わせ
揃って頷くと、鷹野が続けた。

「“恋”、これは分かる?」


「――あ。そっちの話ですか。

 なんだ。
 急にそっちの話になるとは。

 で、さっきのは、
 “恋愛感情”ってワードですね。」


「――知ってはいるんだな。」


それくらいは知っている。

当たり前だろ。
何を言ってるんだ?


首を傾げ、
3人の顔を順に見る。


茄子がポン!と手を叩く。

「そうだ。

 洞はさ、風太のこと
 どう思ってるのさ?」


「あ、おい!そんな直接的な……」


「いいからいいから。
 多分だけど、
 こっちの方が話が早いって。」



――風太をどう思う、か。

トクンッ……



トクトク……


トクトクトクトク……


あ。まだだ。
俺の心臓が走り出した。

合わせて
呼吸も、浅く速くなる。



――これは

――間違いない。



「推しを語り倒して
 萌え散らかす時間ですかっ!?」


ぶわっ!!

熱い何かが、
身体中を駆け巡る。


走った時に似てるけど、


この熱い“何か”は

初めての――“何か”。



「来た!ビンゴ!」
茄子が親指を立てる。

「おお……」
富士川と鷹野、拍手。


「もういいですか!?
 語ってもっ!!」

全身が熱くてたまらない俺。


茄子が座り直して頷く。

「もちろんだ、話してみてよ。

 それ聞いたら、
 俺たち3人も
 推し活一緒にしたくなるかも。

 早く。――待ちきれない。」


うわぁぁぁ!!

嬉しいっ!!

共有できるのか!?

クソたまんねぇ!!


「あの、まずですね!
 えっと、風太って……

 あのっ、風太は……」

――ピタリ。

あれ?

言葉が続かない。


「ほら、話して?」

茄子に続いて、
富士川と鷹野も
うんうん!と待ちの姿勢。

目を輝かせて待っている。



――でも。

「すみません。
 やっぱ、やめときます。」

うっかり断ってしまった。


なぜだ、俺よ。

同志が今、
増えようとしているのに。

この
溢れんばかりの萌えを、
今こそ、
世に放つチャンスなのに。

目の前にそれが
転がってるのになぜだ。



「なぜ、やめるの?」

茄子の言葉が
なんだか俺を、逆撫でする。


「そんなの、
 俺の自由ではないですか?」


「そうだけど、
 なぜなのかを聞きたくて。」

さっきまで笑っていた茄子。

目が――本気(マジ)だ。

怒ってるわけじゃない。

俺のことを
しっかりと見据えてる。


「……分からなくなりました。
 風太の萌えポイントを
 具体的にとか、無理なようです。

 それに――……」


「それに?」


「俺、多分――」


ゴクッ……

富士川と鷹野の喉が鳴る。


茄子は相変わらず
俺から目線を離さない。

「多分、なに?」


どうにも居心地が悪い。

えーい、もう!

「すみません!!」

パンッ!!

顔の前で手を合わせ
頭を下げる。

「俺っ!

 強烈な“同担拒否”みたいですっ!

 わっ……言っちゃった!」



富士川が
コソッと鷹野に耳打ちする。

「……どうたんきょひって何?」


「あれだよ……
 同じ担当は
 仲良くできません的な……」


「ああ、なる……」

「違います。それは違います。」

遮って否定する。

「バリケードとは仲良くしたいし、
 正直、風太の話を
 もっとしたいと思ってるんです。」


なんなんだろう。

自分でも、
言ってること矛盾してるって
分かってる。

でも、一方で全く分からない。

分からないことが
全く分からない。

なんか――動けない。




「なぁ、洞?

 多分だけど、

 それ、“恋”なんじゃないか?」



「えぇっ!?」

「えーーーー!?」

俺と富士川&鷹野、
見事にハモってしまった。



恋って……。

あの、
書き方間違うと
『変』になるやつ。

習いたての子供が
ちょっと喜ぶやつ。


その恋――だと?


俺の目は、
3人を見ているようで
まるで、
視界に入ってこない。



もう、

頭の中も
心の中も

てんやわんやの大騒ぎだ。



鷹野がやっと口を開く。

「それだと合点が行くな。

 見てても明らかに好意的、
 語りたいのに一言で語れない、
 仲間増えるのは嫌だ、

 とにかく、
 たくさん推しポイントあるくせに
 いざとなると出てこないのは、

 間違いなく――恋だな。」



あ、なるほど。

ストンと腑に落ちた。


ドクン。

ドクン、ドクン……


「あれ?胸が、痛い……」

手のひらを胸に当てる。

伝わるほどの拍動。


ドクン、ドクン、と

ゆっくりと、

強く、深く。


さっきまでとは
比にならないほど

身体の中が熱い――


富士川が俺の顔を指さす。

「うーわ!真っ赤!!」


バシッ!(鷹野)
バチーンッ!(茄子)

「へぶっ!」←(富士川)


「ごめんなさい。」

2発のビンタを食らった富士川、
俺にひれ伏す。



「いや、いいんだ。
 本当に真っ赤なんだと思う。

 自分でも、
 今、鼻血でも出そうな……」


……たらり。


「あ、出ました。」


「出ました。じゃねーよっ!」

3人が慌てて
ティッシュを持ってくる。


鼻を抑えながら
小さく息を吐く。

「そうですか……

 俺は風太に……

 恋しちゃってますか……」


そう言いながらも、
間違いないって自覚はある。

だって、
俺の心がそう言ってる。


気づくの遅いよ!
おバカさん!


あー、
甘酸っぱいッス!!