季節は変わり、すっかり寒くなった。楓はまだ目を覚まさない。最初は会う度に泣いてばかりいた。でも今は、楽しく話した方が楓が帰ってきてくれるような気がしている。
「楓、今日は天気がいいよ。でも、凄く寒い。そういえば、冬もバイクに乗るの?」
そんなことを話していると、楓の友達の響くんがお見舞いに来た。ここに通うようになってから、楓の友達何人かと顔を合わせている。ヒロさんは、楓がこんなことになってしまった理由を誰にも話していないようだった。わたしからみんなに話そうかとも思ったけれど、その勇気が出なかった。
「美月ちゃん来てたんだね」
「響くん髪の毛短くしたんだ」
真っ白になるまで色を抜いた髪の毛は、この前まで肩に届く程長かった。それが今では耳が見える長さまで短くなっている。
「切れ毛が酷くてね」
「似合ってる」
響くんはにこっと笑うと楓の脇に座る。楓を愛おしそうに見つめる響くんは、とても静かで儚い雰囲気を持った人だ。楓とは、小学生の頃からずっと一緒で、中学生の時に初めて開けたピアスの穴は、お互いに開け合ったと言っていた。響くんは楓の顔を見つめながら、自分の耳に触れると、とても大切なもののように、たくさんついたピアスの中から一つをつまんだ。
「楓、今日も眠ってばっか」
わたしがそう話すと響くんは「そうだね」と静かに言う。
「もう、起きてくれないのかな」
つい、そんなことを呟いたわたしに、響くんは「楓は必ず戻ってくるよ」と、当然のように言った。
「楓、また来るね」
響くんはいつものようにそっと、枕元に言葉を置いて帰って行った。彼が帰った後は、誰かがカーテンを開けるまで、静かな優しさが残った。
「ねぇ楓、もうすぐクリスマスが来るんだよ。楓は毎年どんなクリスマスを過ごしていた?やっぱり大人数でパーティーとか?今年のクリスマスはちょうど土曜日だから、一緒に過ごそうね」
楓からの返事はない。そしてまた、もう二度と目を覚ましてくれないかもしれないと考える。ネガティブな気持ちは常にすぐ傍にあって、消そうとしても消せはしない。でも、こうも思う。楓は今、休憩をしているだけなのだと。人の何倍も使ってきたその体を休めているのだと。休憩が長ければ長い程、それは楓が頑張ってきた証なのだと。
窓の外を眺めると、すっかり葉を落とした桜の木は、寒空に細い枝だけを伸ばしている。あの木がまた来年、盛大に花を咲かせるなんて想像もできない。まるで枯れてしまったかのようにそこに佇みながら、春に向けて力を蓄えている。そしてまた来年、圧巻の美しさで人々を魅了するんだ。
楓の胸に耳を当てた。鼓動はしっかりと胸を打つ。大丈夫だと、心臓がわたしに言っている。
「お願いします」
その鼓動に楓を託すと病室を出た。
「楓、今日は天気がいいよ。でも、凄く寒い。そういえば、冬もバイクに乗るの?」
そんなことを話していると、楓の友達の響くんがお見舞いに来た。ここに通うようになってから、楓の友達何人かと顔を合わせている。ヒロさんは、楓がこんなことになってしまった理由を誰にも話していないようだった。わたしからみんなに話そうかとも思ったけれど、その勇気が出なかった。
「美月ちゃん来てたんだね」
「響くん髪の毛短くしたんだ」
真っ白になるまで色を抜いた髪の毛は、この前まで肩に届く程長かった。それが今では耳が見える長さまで短くなっている。
「切れ毛が酷くてね」
「似合ってる」
響くんはにこっと笑うと楓の脇に座る。楓を愛おしそうに見つめる響くんは、とても静かで儚い雰囲気を持った人だ。楓とは、小学生の頃からずっと一緒で、中学生の時に初めて開けたピアスの穴は、お互いに開け合ったと言っていた。響くんは楓の顔を見つめながら、自分の耳に触れると、とても大切なもののように、たくさんついたピアスの中から一つをつまんだ。
「楓、今日も眠ってばっか」
わたしがそう話すと響くんは「そうだね」と静かに言う。
「もう、起きてくれないのかな」
つい、そんなことを呟いたわたしに、響くんは「楓は必ず戻ってくるよ」と、当然のように言った。
「楓、また来るね」
響くんはいつものようにそっと、枕元に言葉を置いて帰って行った。彼が帰った後は、誰かがカーテンを開けるまで、静かな優しさが残った。
「ねぇ楓、もうすぐクリスマスが来るんだよ。楓は毎年どんなクリスマスを過ごしていた?やっぱり大人数でパーティーとか?今年のクリスマスはちょうど土曜日だから、一緒に過ごそうね」
楓からの返事はない。そしてまた、もう二度と目を覚ましてくれないかもしれないと考える。ネガティブな気持ちは常にすぐ傍にあって、消そうとしても消せはしない。でも、こうも思う。楓は今、休憩をしているだけなのだと。人の何倍も使ってきたその体を休めているのだと。休憩が長ければ長い程、それは楓が頑張ってきた証なのだと。
窓の外を眺めると、すっかり葉を落とした桜の木は、寒空に細い枝だけを伸ばしている。あの木がまた来年、盛大に花を咲かせるなんて想像もできない。まるで枯れてしまったかのようにそこに佇みながら、春に向けて力を蓄えている。そしてまた来年、圧巻の美しさで人々を魅了するんだ。
楓の胸に耳を当てた。鼓動はしっかりと胸を打つ。大丈夫だと、心臓がわたしに言っている。
「お願いします」
その鼓動に楓を託すと病室を出た。

