「美月の誕生日は四月六日だね」
教えていないのに突然、誕生日を言い当てるから驚いてしまう。
「なんで知ってるの?」
楓の表情にわずかな苦しさが滲む。わたしの質問が、そんな表情を作らせたとは思えない。どうしたの?そう訊こうにも声を掛けることができずにいると、楓は小さく息を吐き、静かに話し始めた。
「事故が起きたあの日、俺と喧嘩になる前に琉依がここでみんなに話してたんだよ、明日、静花の妹の誕生日だから買い物に付き合うんだって。事故が起きたのは四月五日だったから」
高校に入ってすぐにお姉ちゃんはアルバイトを始めた。それまでは、わたしに誕生日プレゼントなんてくれたことはなかったけど、きっとアルバイトのお金が入って、それで――。
「これを話したら、美月が辛くなるかもしれないと思ったんだけど、プレゼントを渡せなかった静花のことを考えると、どうしてもそのことを美月に知ってほしくて。ごめん……俺の勝手かもしれないけど」
楓は本当に人の気持ちを大切にする人だ。
「そんなことないよ、教えてくれてありがとう楓」
お姉ちゃんとの思い出が雪崩のように一気に頭の中に流れ込み、あっという間に埋め尽くされる。笑っているお姉ちゃん、怒ってるお姉ちゃん、わたしの手を引いてひまわり畑を走るお姉ちゃん、お化け屋敷は苦手で、それでもわたしが怖がると急に強くなるおねえちゃん。これでもかというくらい、お姉ちゃんの記憶が押し寄せて来ると、堰を切ったかのように涙が溢れ出す。わたしはお姉ちゃんの死を乗り越えた訳じゃない。止まっていたのは母ではなくてわたしの方だ。
ようやく今、お姉ちゃんの死を悲しんでいる。もう話すことも、一緒にどこかに行くこともできない。深い悲しみが胸に広がる。楓の話をしたかったな、そんなことを思えば悲しみはより一層、深く、濃くなっていく。乗り越えるのはこれからで、この悲しみがいつまで続くのかもわからない。でも、やっとお姉ちゃんの死と向き合うことができて安心している。
「楓、二人はきっと一緒にいるよね」
「もちろん」
お姉ちゃんと琉依くんが、同じ世界にいることを願った。
教えていないのに突然、誕生日を言い当てるから驚いてしまう。
「なんで知ってるの?」
楓の表情にわずかな苦しさが滲む。わたしの質問が、そんな表情を作らせたとは思えない。どうしたの?そう訊こうにも声を掛けることができずにいると、楓は小さく息を吐き、静かに話し始めた。
「事故が起きたあの日、俺と喧嘩になる前に琉依がここでみんなに話してたんだよ、明日、静花の妹の誕生日だから買い物に付き合うんだって。事故が起きたのは四月五日だったから」
高校に入ってすぐにお姉ちゃんはアルバイトを始めた。それまでは、わたしに誕生日プレゼントなんてくれたことはなかったけど、きっとアルバイトのお金が入って、それで――。
「これを話したら、美月が辛くなるかもしれないと思ったんだけど、プレゼントを渡せなかった静花のことを考えると、どうしてもそのことを美月に知ってほしくて。ごめん……俺の勝手かもしれないけど」
楓は本当に人の気持ちを大切にする人だ。
「そんなことないよ、教えてくれてありがとう楓」
お姉ちゃんとの思い出が雪崩のように一気に頭の中に流れ込み、あっという間に埋め尽くされる。笑っているお姉ちゃん、怒ってるお姉ちゃん、わたしの手を引いてひまわり畑を走るお姉ちゃん、お化け屋敷は苦手で、それでもわたしが怖がると急に強くなるおねえちゃん。これでもかというくらい、お姉ちゃんの記憶が押し寄せて来ると、堰を切ったかのように涙が溢れ出す。わたしはお姉ちゃんの死を乗り越えた訳じゃない。止まっていたのは母ではなくてわたしの方だ。
ようやく今、お姉ちゃんの死を悲しんでいる。もう話すことも、一緒にどこかに行くこともできない。深い悲しみが胸に広がる。楓の話をしたかったな、そんなことを思えば悲しみはより一層、深く、濃くなっていく。乗り越えるのはこれからで、この悲しみがいつまで続くのかもわからない。でも、やっとお姉ちゃんの死と向き合うことができて安心している。
「楓、二人はきっと一緒にいるよね」
「もちろん」
お姉ちゃんと琉依くんが、同じ世界にいることを願った。

