夏休みが終わって三日目の今日はまだ、学校のリズムに体が付いてこない。授業がやけに長く感じて、まだ二限が終わったばかりという事実にがっかりする。
それは、玲香ちゃんも一緒のようで、だるそうにわたしの席の前に座ると窓際で話す東条君たちを一瞥し、スマホに目を向けた。
「東条君ってやっぱりかっこいいよね。ほら、このクラスの男子って子供っぽいやつばっかじゃん。長谷部なんて、高二にもなって体育の時間に女子の前で土井のズボン下ろすとかガキ過ぎるでしょ。それに比べて東条君は落ち着きがあるし女子に優しいしイケメンだし完璧なんだよな、彼女がいるってこと以外は」
スマホ片手に話していた玲香ちゃんの目が突然わたしを捉えた。それは、返事を待っている目だということに気が付き慌てて言葉を寄せ集めると一番無難な回答を選んで声に出した。
「どんな人なんだろうね、東条君の彼女」
玲香ちゃんは「知らないの?」と素っ気なく言うとスマホを操作しながら箇条書きを読み上げるように話した。
「西華女子の三年、家は超が付く程のお金持ち、しかも美人でスタイル抜群」
全部知っている。東条君の声にはもちろん、誰かが彼の名前を出せば耳が勝手に反応するから自動的にいろんなことを知ってしまう。
今更知っていたとも言えず返答を探していると玲香ちゃんが呟いた。
「わたし、東条君のことが好きなんだよね」
一瞬目の前が真っ白になって、それからすぐにあの言葉が浮かんだ。
――こんな時、お姉ちゃんだったら。
想像の中のお姉ちゃんは屈託のない明るい笑顔で「実はわたしも、東条君のことが好きなんだよね」と話し豪快に笑った。
いつだって彼女が正解なのに、わたしは正解を知っているのに不正解を出してしまう。「へぇ、そうなんだ」と、自分の気持ちを悟られないように呟いて、少しもやもやしたのも束の間、後悔へと変わる。
「告白しようと思ってる」
あっさりと言った玲香ちゃんに変な笑顔を浮かべて、「へぇ、そうなんだ」と、数秒前と同じ言葉を違う声色で言うのが精いっぱいで、でも、玲香ちゃんがスマホから目を離さなかったお陰でこの酷く引きつった笑顔が見られないで済んだことだけが唯一の救いだった。
それは、玲香ちゃんも一緒のようで、だるそうにわたしの席の前に座ると窓際で話す東条君たちを一瞥し、スマホに目を向けた。
「東条君ってやっぱりかっこいいよね。ほら、このクラスの男子って子供っぽいやつばっかじゃん。長谷部なんて、高二にもなって体育の時間に女子の前で土井のズボン下ろすとかガキ過ぎるでしょ。それに比べて東条君は落ち着きがあるし女子に優しいしイケメンだし完璧なんだよな、彼女がいるってこと以外は」
スマホ片手に話していた玲香ちゃんの目が突然わたしを捉えた。それは、返事を待っている目だということに気が付き慌てて言葉を寄せ集めると一番無難な回答を選んで声に出した。
「どんな人なんだろうね、東条君の彼女」
玲香ちゃんは「知らないの?」と素っ気なく言うとスマホを操作しながら箇条書きを読み上げるように話した。
「西華女子の三年、家は超が付く程のお金持ち、しかも美人でスタイル抜群」
全部知っている。東条君の声にはもちろん、誰かが彼の名前を出せば耳が勝手に反応するから自動的にいろんなことを知ってしまう。
今更知っていたとも言えず返答を探していると玲香ちゃんが呟いた。
「わたし、東条君のことが好きなんだよね」
一瞬目の前が真っ白になって、それからすぐにあの言葉が浮かんだ。
――こんな時、お姉ちゃんだったら。
想像の中のお姉ちゃんは屈託のない明るい笑顔で「実はわたしも、東条君のことが好きなんだよね」と話し豪快に笑った。
いつだって彼女が正解なのに、わたしは正解を知っているのに不正解を出してしまう。「へぇ、そうなんだ」と、自分の気持ちを悟られないように呟いて、少しもやもやしたのも束の間、後悔へと変わる。
「告白しようと思ってる」
あっさりと言った玲香ちゃんに変な笑顔を浮かべて、「へぇ、そうなんだ」と、数秒前と同じ言葉を違う声色で言うのが精いっぱいで、でも、玲香ちゃんがスマホから目を離さなかったお陰でこの酷く引きつった笑顔が見られないで済んだことだけが唯一の救いだった。

