放課後の教室、帰り支度や部活に向かう生徒達で一気に辺りが騒がしくなる中、すぐ脇から聞こえてきたパチンという音に目を向けるとそこには、ぎゅっと目を閉じ顔の前で手を合わせる玲香ちゃんの姿があった。
「お願い美月お金貸して」
――こんな時、お姉ちゃんだったら。なにかを決断する時、必ずお姉ちゃんの顔が浮かんだ。
きっとい姉ちゃんなら「ごめんね、お金は貸せないんだ」そうあっさりと告げるだろう。相手は断られたことを全く気にすることはなく、二人の関係性が変わることもない。 あの、屈託ない大きな笑顔と豪快な笑い声は相手に負の感情を抱かせない。そう、だから彼女と同じように振舞えいい筈なのに――。
「玲香ちゃん」
目の前の彼女の顔が不安そうに歪む。その顔を見た途端、わたしは急ハンドルを切った。
「五千円までなら貸せるけどそれで大丈夫?」
わたしがお姉ちゃんと同じことを言っても同じ結果にはならない。あの顔とあの声とあの性格だから断っても嫌われないんだ。
「ありがとう美月!来月バイト代入ったら絶対に返すから」
鞄から財布を取り出すと「いいよ、ゆっくりで」そんな言葉と一緒に五千円札を差し出した。
手を振る代わりに受け取ったお金をひらひらさせ「ありがとう」と言って教室を出て行く玲香ちゃんを見送ると辺りを見渡した。
鞄を肩に掛けたまま教室の出口で話し込んでいる男子に、好きな先輩が校舎から出て来るのを一目見ようと窓際に集まる女子。それは、いつもと変わらない放課後の光景。空気も匂いも雰囲気も何一つ変わらない。窓があって黒板があって机があって椅子があって、長谷部君は今日も土井君に嫌がらせをしていて、玲香ちゃんは今日も衣織ちゃんがいないところで陰口を言っていた。
なにも変わらない日常。わたしがクラスメイトの東条君に片思いしていることも、東条君に年上の彼女がいることも。こんな毎日でいい。いや、こんな毎日がいい。なにもない平坦な毎日が続いてほしい。
「お願い美月お金貸して」
――こんな時、お姉ちゃんだったら。なにかを決断する時、必ずお姉ちゃんの顔が浮かんだ。
きっとい姉ちゃんなら「ごめんね、お金は貸せないんだ」そうあっさりと告げるだろう。相手は断られたことを全く気にすることはなく、二人の関係性が変わることもない。 あの、屈託ない大きな笑顔と豪快な笑い声は相手に負の感情を抱かせない。そう、だから彼女と同じように振舞えいい筈なのに――。
「玲香ちゃん」
目の前の彼女の顔が不安そうに歪む。その顔を見た途端、わたしは急ハンドルを切った。
「五千円までなら貸せるけどそれで大丈夫?」
わたしがお姉ちゃんと同じことを言っても同じ結果にはならない。あの顔とあの声とあの性格だから断っても嫌われないんだ。
「ありがとう美月!来月バイト代入ったら絶対に返すから」
鞄から財布を取り出すと「いいよ、ゆっくりで」そんな言葉と一緒に五千円札を差し出した。
手を振る代わりに受け取ったお金をひらひらさせ「ありがとう」と言って教室を出て行く玲香ちゃんを見送ると辺りを見渡した。
鞄を肩に掛けたまま教室の出口で話し込んでいる男子に、好きな先輩が校舎から出て来るのを一目見ようと窓際に集まる女子。それは、いつもと変わらない放課後の光景。空気も匂いも雰囲気も何一つ変わらない。窓があって黒板があって机があって椅子があって、長谷部君は今日も土井君に嫌がらせをしていて、玲香ちゃんは今日も衣織ちゃんがいないところで陰口を言っていた。
なにも変わらない日常。わたしがクラスメイトの東条君に片思いしていることも、東条君に年上の彼女がいることも。こんな毎日でいい。いや、こんな毎日がいい。なにもない平坦な毎日が続いてほしい。

