四季を巡って、恋し愛する僕たちは

つい耳に入った名前に驚き、志雫は声が聞こえた方へ振り向いた。

「う゛おッ!」
「……京翔」

横を向くと目の前に羽田本が立っており、志雫は驚いて野太い間抜けな声を出した。
いつの間にか、羽田本のクラスの入口で堂々と立ち止まっていたのだ。

「ビッ、クリしたぁ……」
「あ…ごめん……。教室出ようとしたら京翔が立ってたから……」
「お、おおぅ…わり……」

その時、今日初めて羽田本の顔をちゃんと見たと思った。
羽田本が悲しんでいる。
しかしその表情は、長年一緒に過ごしてきた志雫だからこそ分かるものだった。

志雫の気持ちは、少し前から決まっていた。

「……お前も移動?」
「…えっ?……あ、うん」
「俺も。一緒だな」

志雫はいつものようにニッと笑った。

「聞いてくれよー、アイツら俺を置いてさっさと行きやがってさー。薄情だよなー、悲しいぜ」
「あ……そうなんだ……」
「あ!今日の昼って流李も購買だよな?水曜限定のハンバーグパン、ぜってぇ欲しいから付き合えよな!」
「う、うん」
「んじゃ、また昼に来るな〜」

そう言って、志雫は再び歩き出した。

返事はともかく、羽田本との関わりは変えない。
それが、勇気を出して告白した羽田本への礼儀だと思った。

志雫の気持ちは少し楽になり、先程よりも軽やかな足取りで、移動教室へ向かう。

「お、志雫来た。遅かったじゃん」
「あれ?なんか顔色良くなった?」
「ホントだ。シワシワじゃねぇじゃん」
「元からシワシワじゃねーわ」
「分かった!!お前便秘だったんだろ。さっきの時間でスッキリしてきたか」
「ちげーわ!!」