四季を巡って、恋し愛する僕たちは

羽田本の告白から翌日。
志雫の心境などお構いなしに、朝は当然のようにやってきた。

「…んぁあ〜〜〜」

通学中の志雫は、大きな欠伸を漏らした。
昨日はようやく睡魔がやってきたと思ったら、変な夢を見てしまい、あまり寝た気がしない。

(なんで俺が姫になって、敵に捕まったところをあの4人が助けに来るなんて夢見るんだよ……。しかも協力すりゃあいいのに、俺と敵の前で堂々と喧嘩しだすし……)

これが似たような正夢にならないことを、志雫は願うばかりだった。
もう一度欠伸が出て、志雫は今にも寝入ってしまいそうな眠たい目をこすった。

「あっ……」

目を開けると、いつもの場所で羽田本が待っていた。
向こうも、志雫がやって来たことに気付き、すぐに目が合ってしまった。

「……京翔」
「……あ……はよ」
「…おはよう」

なんとか挨拶をしたが、しばらく2人とも黙ってしまい 、微妙な空気が漂っていた。

「……行こうぜ」
「あっ……うん」

志雫はそう言うと、先を歩き始めた。
羽田本もなんとか返事をして、志雫のあとをついて行く。
いつもなら2人並んで歩くが、なぜか羽田本は志雫の1歩後ろを歩いた。

(き、気まづ〜〜〜!!!いやでも、どんなテンションでいたらいいか分かんねぇだろ…)

志雫は羽田本の様子を伺いながらも、話しかけることができなかった。
羽田本もずっと暗い表情で、無言のまま。
そのまま学校に到着してしまい、特に会話もない最悪の雰囲気で、それぞれの教室へと分かれてしまった。

___


朝のホームルームが終わってからも、志雫は苦渋の顔を浮かべていた。

(マジでどうしよ〜〜〜っ…!!?結局、昨日は返事のことちっとも考えなかったし!今日、流李とは最悪の雰囲気だし!!めっちゃヤダ〜〜〜っ!……えぇ〜〜〜、てかマジで?流李って俺のこと好きだっの…?ホント?ホントに??しかも幼稚園の時からって…じゃあほぼ好きだったじゃねえかよ!!よくここまで言わずに耐えたなッ?!我慢しすぎだろ!!もっと早く言えよ!!いや、言われても仕方ないけどよ!!!)

昨日のことを振り返るほど、志雫は頭を悩ませた。
それ以上に気がかりなのは、たったそれだけの出来事で羽田本との関係が悪くなっていることだ。

(今まで喧嘩とかしたことなかったもんな〜……。俺がヘマしても、流李はいっつも許してくれたし…。……って、もしかして俺のこと好きだったからなのか…?)

思い返せば、羽田本はいつもなんだかんだ志雫に優しかった。
羽田本の想いがつながっているのなら、今までの出来事も納得できるものがあった。
かと言って、羽田本と付き合っている図がなかなか思い付かず、さらなる悩みの迷宮へと入り込んでしまう。

「志雫どしたん?朝からずっとブス顔で」
「だれがブスだ!!」
「さっきからずっとシワシワの顔で頭抱えてよ〜」
「どしたん?話聞こかー?」

クラスメイトたちは揶揄いながらも志雫を気にかけた。
けれど、志雫はこんな悩みをそう易々と話すことなどできない。
一歩間違えれば、羽田本を傷付けかねないからだ。
志雫は、相談したい気持ちをなんとか抑えながら、唸り声をあげた。

「つか、1限移動だから行くぞー」
「へ〜い」
「あ゛ッ!そうだった!」
「先行ってるからな、志雫〜」
「じゃあな、シワー」
「だれがシワだ!!つかちょっとだろ!待てよ!!?」

志雫に集まっていたクラスメイトは、次々と教室から出ていく。
志雫も急いで準備し、クラスメイトたちのあとを追いかけたが、彼らの姿はすでに見えなくなっていた。

(アイツらいねぇ…!!歩くの速すぎるだろ!!?)

1限前とはいえ、廊下にはそれなりの生徒たちが集まっている。
駆け抜けてしまえば早いが、昨日の階段スライダーで朝からお叱りを受けたこともあり、早歩きで移動教室に向かう。

そしてこんな時でも、志雫は羽田本のことを考えずにはいられなかった。

(…でも、だからって俺が態度変えるのは違うよな……。あんなこと言うのめっちゃ勇気いっただろうし、俺、昨日あんな余裕で「返事待ってくれ」とか言ったクセにこれだもんな……。カッコわる……)

志雫は無意識に足を止めて考え込んだ。
ここまで一緒に過ごしてきた友を、たった1つの出来事で自分から一線引いてしまっていいのか。
羽田本の勇気に応えてやれなくて、自分はそれでいいのか。

「うおッ!?何してんだよ羽田本」