四季を巡って、恋し愛する僕たちは

「じゃあ、また明日な」
「うん。……京翔」
「ん?」
「……ありがとう」
「…ん」

それぞれの家に向かって、志雫と羽田本は別々の道へ進んだ。

「ただいま〜。母ちゃん、飯〜」

志雫は家に帰ると、呑気にいつもの帰宅ルーティンをこなした。
温かい夕食を食べ、好きな芸人が出るお笑い番組を少し眺め、順番が来たので風呂に入りサッパリする。
自室に戻り、出された課題があったな〜と考えながらも、寝るまでの自由な時間をダラダラと過ごしていた。

「…………」

ふと、ベッドの上で大の字になり、今日のことを振り返った。

(………あれッ!?もしかして俺、ヤバい状況なのでは…!!?)

志雫は冷静に羽田本とのやりとりを思い出し、自分の状況が大変なことになっていると気付いた。

(だって、すでに翼と朱崎先輩と深都先輩に狙われてんのに、そこに流李も参戦するってことだろ!!??怖い……!!いや、普通に怖いだろ!!去年までなんもなかったのに、今年に入ってなんで男にばっかモテなきゃいけねぇんだよ!!)

志雫の頭の中では、自分を含む5人の関係図が綺麗に出来上がってしまい、その現実を受け入れることを拒否したい気持で溢れていた。
しかも、元々の関係図に加わってしまったのが、絶対安全圏だったはずの羽田本なのだから尚更だ。

(分かんねぇ…!意味分かんねぇよ…!!俺なんかした!?前世が女でめちゃくちゃ男食い漁ってた罰でも返ってきてんのか!?!)

ついに、飛躍した妄想まで出始めてきた。
志雫はここで、一旦状況を整理することにした。


まずは、後輩の詠瀬。
後輩としてのポジションだけなら文句無しといったところだ。
詠瀬が志雫に言う『好き』という気持ちが、人としてなのか恋愛としてなのかが定かでないことが、唯一の気がかりだった。

(こん中では俺への好き好きアピールが飛び抜けて分かりやすい…。後輩ってのもあってかわいがってるし、別に嫌じゃねえけど……あの突然やってくる感じは慣れねぇんだよなぁ……)


続いて、部活の先輩である朱崎。
入部した時から面倒はよく見てもらっていたが、やはり、最近の関わり方は少し違うことを確信している。

(悪い人じゃねぇんだよな〜。気さくに絡める兄ちゃんって感じで俺も好きだし。……いや、恋とか愛とかじゃなくてな??けど、ちょっと危ない雰囲気?っていうの?なんかあの3人が険悪になる時のきっかけって、いっつも朱崎先輩の発言では?)


さらに、生徒会長の深都。
志雫からすれば校内で見た事ある程度の関係。
入学してからこの関係になるまで、自分が好かれるようなエピソードがあったわけでもない。

(この人はマジで意味分からん。そもそも、なんで深都先輩とこうなってるのかも分からん。怖い)


そして、羽田本。

(…………)

もう何年もの付き合いのはずなのに、今日初めて羽田本の本音を目の当たりにした。
志雫はずっと、夢と現実が混ざっているような気持ちだった。

(でも……流李もしんどかったろうな。俺にずっと言えずにいたんだから。……ごめんな、俺なんにも気付かなくって)

「……っはぁぁぁ〜〜〜」

志雫は大きなため息をついた。

「明日、どんな顔して会えばいいんだよ……」

その日の夜はなかなか寝付けず、羽田本への答えも迷ったままだった。