四季を巡って、恋し愛する僕たちは

目の前には、懐かしい光景が広がっている。

3人から逃げるために駆け回った校舎。
代償にかわいいカフェへ連れ込まれた、少し肌寒い春。

「ここのガトーショコラ、美味かったな〜。でももう、ああいう店には行かねぇ……。場違いすぎんだろ、俺ら」
「そう?今はそんなこと気にされない時代だよ?」

宝石のように輝く青い海と、喉が焼けるような甘さのかき氷。
暑さと熱さが重なり合った、焦がれるような夏。

「暑そ〜〜。お前まだ、日焼け跡残ってるんだろ?」
「服で隠れるから問題ない」

ボールを追い、バットを振り…今までの人生で1番、部活に熱中した日々。
新たな世界の発見に、恐れ慄いた秋。

「ホントにこんなことされたら、僕なら殴って逃げるだろうな〜」
「……俺もそうしたかったよ」
「そもそも、野球やったことあるんですか?」
「ねぇよ。俺、サッカーの方が好きだもん」

バラバラだったはずの5人が過ごした時間。
共に寒さを耐え抜き、満開に咲き誇った冬。

「けっこう楽しかったね、ガーデニング」
「あの大雨はキツかったけどね〜」

そして……次の春を迎えるために、ラストを飾った告白。

これまで彼らが過ごした記憶は、映画のスクリーンのように鮮明に甦ってくる。

「おぉ、クレジットとかもあるのか。マジで本格的だな」

それもそのはず。
教室のスクリーンに映し出されたのは、全部自分たちがやってきたことなのだから。

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「はい!以上が、今年の映画部が応募する作品、『四季を巡って、恋し愛する僕たちは』の完成版になりま〜す!どおどお?上手くできてたでしょ!?」
「まあ、ちゃんと映画にはなってたわな。でもよぉ………野郎が野郎に囲まれてるの見て楽しいかよ」
「え〜?ノリノリだったじゃん。ねぇ〜このまま映画部入ってよー」
「ぜってぇヤダ」

今日の回を仕切る女子生徒が、その映画の主演だった生徒にグイグイと感想を求める。

志雫(しだ)京翔(きょうか)もとい、主演を務めた志田(しだ)は、気怠そうにしながら背中を軽く伸ばした。

「流李くんもありがとうー!手伝ってくれて!」
「いいよ、これくらい。京羽ちゃんのお願いだし」

主演の次に出番の多かった羽田本(はたもと)流李(るい)。
それを演じた畠本(はたもと)は、身を縮めるように座り、女子生徒に淡い笑顔を向けた。
幼なじみ設定はノンフィクションだ。

「ねー俺は?俺、けっこう良かっただろ?」
「お前はマジで途中、ガチなのかと思ってビビったわ!アドリブのボディタッチが多すぎるんだよ」
「何言ってるの!それが良かったのよ〜!」

赤崎(あかさき)は、映画で演じた朱崎(あかさき)清彦(きよひこ)のように、呑気に足を伸ばしていた。
本当は志田や畠本と同じく2年だが、大人にも負けない高身長と落ち着いた顔立ちのせいか、今回は上級生役に選ばれた。

「お前もけっこうノリノリだったよな。天然なのは変わんねーけど」
「長い台詞は大変だったよ〜。でも、生徒会長の役っていうのはちょっと楽しかったかも。狙ってみようかな〜、生徒会長」
「お前には無理だろ」

神さま信者と生徒会長という極端な2面性を持つ、深都(ふかみ)雪那岐(ゆきなぎ)役の深見(ふかみ)は、語尾をほわほわと伸ばしながら喋った。
こちらも本当は、志田たちと同級生である。

「でも1番すごかったのは長瀬くんだよ〜。普段は冷血なのに、あんな明るいキャラができるなんて」
「……俺は役者だ。どんなキャラでも演じれる」

少し離れたところで、ツンとした表情で座っているのは、詠瀬(ながせ)翼(つばさ)を演じ、メイン出演者の中で唯一の映画部員である、1年の長瀬(ながせ)。
俳優の養成所にも所属し、既にドラマやCMに出ている文句なしの実力派。
この撮影のために髪も染めるほど、部活だろうと本気だった。

「みんな良かったよ〜!演技経験無いのにここまでできるなんて!」
「京羽ちゃんのシナリオが良かったんだよ」
「だな。俺らのキャラをそのまま使ってくれてて、こっちもやりやすかったし」
「お話も書けちゃうなんて、すごいね〜」
「……ま、お前しては頑張ったんじゃねーの?」
「京翔ってば照れちゃって」
「て、照れてねーよ!」
「えへへ〜、お兄ちゃんありがとうっ」
「ばっか…抱きつくな!!」

志田を“お兄ちゃん”と呼ぶその女子生徒は、志田京羽(きょうう)。
映画部部員で志田の双子の妹。

ここまでの話は、京羽がシナリオ・キャラ設定を考え、監督した自主制作映画だったのだ。