「さくらのシフォンケーキとアイスコーヒーでお願いします。京翔は?」
「…俺はいい」
「えー、頼みなよ。…ガトーショコラとイチゴミルクで」
「あッ……」
羽田本は聞きもせず、志雫の分のケーキとドリンクも注文した。
店員が席から離れたあと、志雫は不機嫌そうに羽田本を睨みつけた。
「流李ぃ〜…好き勝手しやがって……」
「いいじゃん。僕より甘いの好きなくせに」
「辛いのと苦いのが食えねぇだけだ!!」
思った以上に大きな声が出てしまい、店内にいる他の客からチラチラと視線を感じる。
羽田本は口元に人差し指を立てて、『静かに』と合図を送った。
ここは羽田本行きつけのカフェ。
スイーツ好きの羽田本は、こうして志雫を引き連れていろいろなカフェを巡っていた。
志雫は、いかにも女性向けのカフェに入ることに恥ずかしさがあり、席に着いてもソワソワしていた。
「……なにも学校帰りじゃなくていいだろ」
「奢るって言ったのは京翔でしょ?今年はさくらにハマってるから、絶対来たかったんだ」
「そのブーム、一昨年も来てたろ」
「そうだね。よく覚えてるね〜。やっぱ好きなんじゃん」
「ちーがーうッ!!」
「はははっ」
何を言っても羽田本の方が一枚上手で、志雫は子どもっぽく反論した。
そんな志雫を見て、羽田本は無邪気に笑う。
「そんなことより、お礼は?」
「は?」
「さっき助けてあげたでしょ?ちゃんと空気読んであげたことに感謝してほしいなー」
「う゛……………助かった……」
「はい、どういたしまして」
少し長い沈黙のあと、志雫は小っ恥ずかしそうに礼を伝えた。
「しかし……あの絵面はカオスだったなー。京翔はなぜか詠瀬くんに抱えられてるし、それを深都先輩と朱崎先輩が見てるし」
「今日こそ逃げられると思ったんだけどな……」
「逃げられた試しないでしょ、特に詠瀬くん」
「あいつどこからでも飛び出してくるんだよなー……。マジで、なんで急に男からモテねぇといけねぇんだよ……」
志雫はこうやって、3人に付き纏われるようになってから、定期的に羽田本に助けてもらい、愚痴を零していた。
そうこうしていると、2人が注文していたケーキたちが運ばれてきた。
羽田本はいそいそと皿やコップの配置を整え、スマホで何枚も写真を撮り始めた。
それを見ながら、志雫はモフモフと頼まされたガトーショコラを食べ始める。
甘さの中にあるほんの少しのチョコレートの苦さ。
シロップ多めのイチゴミルクを飲めば、それがリセットされるようだった。
糖分を摂取したおかげか、志雫の顔は少しずつ穏やかになってきた。
「………」
羽田本は美味しそうにガトーショコラを口に運ぶ志雫を見て、ケーキに向けられていたスマホでこっそり志雫を映した。
視線とシャッター音で、志雫は自分が撮られていることに気付いた。
「……?んだよ」
「ううん。……かわいいなって」
「は?かわいかねーだろ」
「いやいや。京翔みたいなのがこんなかわいいお店でガトーショコラ食べてるんだもん。……ふッ」
「笑ってんじゃねーか!」
「ふふふッ……いや、ちがうちがう。……かわいいなって」
「あ゛〜〜腹立つ。それ食っちまうぞ」
「あー、1口食べたかったんだ〜」
「違う!」
ころころと表情を変える志雫が面白いのか、羽田本は終始楽しそうに笑っていた。
羽田本を見ていると放課後にあった面倒なイベントのことも忘れてしまい、いつの間にか他愛のない話に変わっていった。
今日の授業が難しかったこと。
クラスメイトがふざけていたのが面白かったこと。
新作のゲームが気になっていること。
親が些細なことでうるさく言ってくること。
幼い頃から自分のことを知っている羽田本には、心置き無くなんでも話すことができた。
特段、趣味や性格が合うわけでもないのに、長らく関係を続けられていることが、むしろ不思議なくらいだ。
話しているだけで、いつも時間があっという間に過ぎ、この日も、夕焼けが窓から差し込んでくることにようやく気付くほどだった。
「ねぇ、あの子めっちゃキレイな顔してたよ」
「思った〜!背は低いけど、アイドルみたいだった〜!」
人通りが多いショッピング街。
そこで1人、しらみ潰しに歩き回る男がいた。
「先輩……どこだ……?」
志雫と羽田本がケーキを食べながら談笑している一方。
志雫を追いかけようと、急いで荷物を取りに戻って学校を飛び出した詠瀬は、全く別の場所で志雫を見つけるべく練り歩いていた。
「…俺はいい」
「えー、頼みなよ。…ガトーショコラとイチゴミルクで」
「あッ……」
羽田本は聞きもせず、志雫の分のケーキとドリンクも注文した。
店員が席から離れたあと、志雫は不機嫌そうに羽田本を睨みつけた。
「流李ぃ〜…好き勝手しやがって……」
「いいじゃん。僕より甘いの好きなくせに」
「辛いのと苦いのが食えねぇだけだ!!」
思った以上に大きな声が出てしまい、店内にいる他の客からチラチラと視線を感じる。
羽田本は口元に人差し指を立てて、『静かに』と合図を送った。
ここは羽田本行きつけのカフェ。
スイーツ好きの羽田本は、こうして志雫を引き連れていろいろなカフェを巡っていた。
志雫は、いかにも女性向けのカフェに入ることに恥ずかしさがあり、席に着いてもソワソワしていた。
「……なにも学校帰りじゃなくていいだろ」
「奢るって言ったのは京翔でしょ?今年はさくらにハマってるから、絶対来たかったんだ」
「そのブーム、一昨年も来てたろ」
「そうだね。よく覚えてるね〜。やっぱ好きなんじゃん」
「ちーがーうッ!!」
「はははっ」
何を言っても羽田本の方が一枚上手で、志雫は子どもっぽく反論した。
そんな志雫を見て、羽田本は無邪気に笑う。
「そんなことより、お礼は?」
「は?」
「さっき助けてあげたでしょ?ちゃんと空気読んであげたことに感謝してほしいなー」
「う゛……………助かった……」
「はい、どういたしまして」
少し長い沈黙のあと、志雫は小っ恥ずかしそうに礼を伝えた。
「しかし……あの絵面はカオスだったなー。京翔はなぜか詠瀬くんに抱えられてるし、それを深都先輩と朱崎先輩が見てるし」
「今日こそ逃げられると思ったんだけどな……」
「逃げられた試しないでしょ、特に詠瀬くん」
「あいつどこからでも飛び出してくるんだよなー……。マジで、なんで急に男からモテねぇといけねぇんだよ……」
志雫はこうやって、3人に付き纏われるようになってから、定期的に羽田本に助けてもらい、愚痴を零していた。
そうこうしていると、2人が注文していたケーキたちが運ばれてきた。
羽田本はいそいそと皿やコップの配置を整え、スマホで何枚も写真を撮り始めた。
それを見ながら、志雫はモフモフと頼まされたガトーショコラを食べ始める。
甘さの中にあるほんの少しのチョコレートの苦さ。
シロップ多めのイチゴミルクを飲めば、それがリセットされるようだった。
糖分を摂取したおかげか、志雫の顔は少しずつ穏やかになってきた。
「………」
羽田本は美味しそうにガトーショコラを口に運ぶ志雫を見て、ケーキに向けられていたスマホでこっそり志雫を映した。
視線とシャッター音で、志雫は自分が撮られていることに気付いた。
「……?んだよ」
「ううん。……かわいいなって」
「は?かわいかねーだろ」
「いやいや。京翔みたいなのがこんなかわいいお店でガトーショコラ食べてるんだもん。……ふッ」
「笑ってんじゃねーか!」
「ふふふッ……いや、ちがうちがう。……かわいいなって」
「あ゛〜〜腹立つ。それ食っちまうぞ」
「あー、1口食べたかったんだ〜」
「違う!」
ころころと表情を変える志雫が面白いのか、羽田本は終始楽しそうに笑っていた。
羽田本を見ていると放課後にあった面倒なイベントのことも忘れてしまい、いつの間にか他愛のない話に変わっていった。
今日の授業が難しかったこと。
クラスメイトがふざけていたのが面白かったこと。
新作のゲームが気になっていること。
親が些細なことでうるさく言ってくること。
幼い頃から自分のことを知っている羽田本には、心置き無くなんでも話すことができた。
特段、趣味や性格が合うわけでもないのに、長らく関係を続けられていることが、むしろ不思議なくらいだ。
話しているだけで、いつも時間があっという間に過ぎ、この日も、夕焼けが窓から差し込んでくることにようやく気付くほどだった。
「ねぇ、あの子めっちゃキレイな顔してたよ」
「思った〜!背は低いけど、アイドルみたいだった〜!」
人通りが多いショッピング街。
そこで1人、しらみ潰しに歩き回る男がいた。
「先輩……どこだ……?」
志雫と羽田本がケーキを食べながら談笑している一方。
志雫を追いかけようと、急いで荷物を取りに戻って学校を飛び出した詠瀬は、全く別の場所で志雫を見つけるべく練り歩いていた。
