四季を巡って、恋し愛する僕たちは

「……京翔?」
「!!」

さらに志雫を呼ぶ声がした。
その人物の訪れに、志雫の表情は一気に明るくなった。

「る、流李〜〜っ!!」
「なにやってるの?これ、なんの図…?」

羽田本(はたもと)流李(るい)、高校2年生。
幼い頃からの付き合いで、志雫の大親友。
活発な志雫と対比し、大人しい優男といった感じだが、なんだかんだ長く交友関係を続けてきた。
困った時にはここぞと現れてくれる、志雫の心強い味方だ。

志雫はここで、はっと思い付く。
羽田本を理由にすれば、3人から上手く逃げられるのではないかと。
頭を使うことがてんで苦手な志雫だが、脳の奥深くに眠っていた知力が、突然覚醒したように次々とプランが流れ込んできた。

「ッ悪ぃ!今日、帰る約束してたよなー!待った?待ったよな?結構待っただろ?な!」

詠瀬の腕の中からスルリと抜け出し、その場しのぎの嘘をつく。
ぽんぽんっと羽田本の肩を叩く力は、『俺に合わせろ』と言わんばかりの勢いだ。
羽田本は少し考え、静かに笑った。

「…うん、待った。教室行ったらいないし、ビックリしたよ」
「えー!迎えに来てくれたのかよー!!そりゃあ悪いことしたな〜。ゴメンな!!?あれだ!なんか食って帰ろう!お詫びに奢るからよー!」
「ホント?じゃあ、あそこのカフェ行こ。新作のケーキ、かわいいんだ」
「え゛ッ…!?」

羽田本の提案に、志雫は顔を引きつらせる。
間髪入れずに、羽田本は言葉を続けた。

「お詫びでしょ?奢ってくれるんだよね?なら、僕の好きなところでいいよね?京翔?」
「い゛…………いいよぉ〜〜……」

その返事に、羽田本はふわっと天使のように微笑んだ。
志雫からすればかわいい顔した悪魔のようで、その場を誤魔化すために、無理やり笑顔を作った。

「じゃあ早く行こう」
「お、おう!」

羽田本はスタスタと玄関に向かって歩き出し、志雫もそのあとを追った。

「………」
「あ〜らら、またしてやられたな〜」
「……随分呑気だね」
「俺はいつでもチャンスあるからな」
「あっそう」

朱崎の挑戦的な言葉に、深都は機嫌が悪そうに返事をした。

「……追いかけないの?」
「バーカ。んな野暮ったいことしたら嫌われるだろ?今日は俺らの負けだよ。“今日は”、な……」

朱崎は終始笑顔を絶やさなかったが、その目は静かに闘争心を燃やしていた。
朱崎だけではない。
深都……そして、それは羽田本も同じだった。