四季を巡って、恋し愛する僕たちは

朱崎の不調を聞いてから、志雫は朱崎から目が離せなかった。
ちょっとした動きでも、不調の右肩を気にしているのではないかと、不安を募らせる毎日で、つい朱崎のことを考えてしまう。

「志雫〜」

不意に聞こえたその声に、心臓がドキッとした。
先程まで考えていた朱崎が、教室の出入口に立っており、手招きをして志雫を呼ぶ。

「悪いな、今日の部活なんだけど。みんなに話すことがあるから、練習前に一旦グラウンドに集まってほしいって2年の奴らに声掛けといてくれないか?」
「あー…分かりました」
「よろしくな」

志雫は朱崎の背中を見送った。

(……なんだろ、話って)

___


「よぉ〜し、揃ってるな。今日はお前らに、大事なお知らせがありまーす」

レギュラー・補欠関係なく、野球部のメンバーは練習前に集められた。
ソワソワしている1・2年をよそに、朱崎はニコニコと呑気に話し始めた。

「なんとなく分かってると思うけど、俺ら3年はぼちぼち引退だ。てか、甲子園終わった時点でやめてる奴の方が多いけどな!俺ら受験もあるに朝練も来て、暇人かよッ!てな!はははッ」

朱崎の自嘲混じりの話に、他の3年はうんざりし、話をすることを急かした。

「今年のレギュラーメンバーは、圧倒的に俺ら3年が多い。だから、俺らが抜けるとメンバーが格段に減っちまう……。そこで!」

しんみりと話直したかと思えば、急に声のトーンを変え、手を叩いた。

「新レギュラーメンバーの座をかけたオーディションを開催しまーす!レギュラーも補欠も関係なく、部員全員が対象者だ。場合によってはレギュラーから補欠への降格も有り得るからなー?」

朱崎の説明に、部員たちは驚きが隠せない。

「オーディションは来月入ってすぐ。1日みっちりやるからな〜?なんか、ドラフト会議みたいでワクワクするな!」

集まった部員たちは全員、『お前は選ぶだけだからな』という目で、1人盛り上がる朱崎を見つめた。

「あ!選ぶのは俺じゃないぞー?最終決定権はもちろん、監督にありま〜す。大丈夫、大丈夫!広い目で見るために、俺ら3年も入るんだから!今まで自分たちがやってきたモン全力で出して、あとは当たって砕けろだ!!」
「砕けちゃダメだろ」
「いやいや〜。……砕けても自力で立ち直るくらいの気力がねぇと、俺だってこの座は渡さねぇよ?」

笑顔は崩さないが、その目は至って真剣で鋭かった。
戦力の要であった自身の不調で、優勝に導けなかった悔しさか。
それとも、次の世代に叶えられなかった夢を託す故の本気なのか。
どちらにせよ、朱崎の気持ちは他の部員にしっかり伝わった様子だった。

「お前らがこの1年で、どれだけ成長したのか。…楽しみにしてるからな!」

最後の最後に見せた爽やかな笑顔は、不思議と安心感があった。