「京翔、お昼食べよう……って、寝ないの京翔」
「う゛ぅう〜〜流李〜〜……。腕が…肩がぁ……」
「夏休み中、僕をほったらかして遊んでた怠け根性と体を鍛え直すいい機会だと思いなよ」
「お前、根に持ちすぎだろ……」
志雫は疲れて机に伏せており、今にも枯れそうな花のようだった。
「ほら、卵焼きと唐揚げ、どっちがいい?」
志雫の前の席に座った羽田本は、自分の弁当を見せながら、志雫に問いかけた。
「唐揚げ」
「食い意地だけはあるんだね」
ラインナップを聞いた途端、志雫は顔を上げ、自分の箸を出して、羽田本の弁当から唐揚げを取った。
「そりゃあお前、朝から体動かしたら腹は減るだろ〜」
「体動かしてなくても減ってたけどね。試合いつなの?」
「来月末。がっつり2ヶ月は部活行かなきゃだわ」
「部活、辞めないの?3年はもう引退しててもいい時期でしょ?」
「朱崎先輩は、体動かす程度にギリギリまで続けるんだって。あの人、スポーツ推薦だしな」
「でも今年、甲子園は全然だったんでしょ?予選敗退って」
「らしーな。なんか先輩、調子悪かったらしいわ」
「惜しいね……最後の夏だったのに」
「なー…」
通りすぎる風が心地良い時期になってきた。
その風はどこか、寂しくなるような冷たさもあった。
3年生たちの卒業、別れの季節がそろそろ近付いてくる。
___
「なぁ、なんでうちの部活はマネージャーいねぇの?」
「人気ねぇからじゃね?」
「あんなに女子が集まってんのに?」
同じ補欠部員である同級生が指差す方へ、志雫は目を向けた。
フェンス越しに数名の女子生徒が集まり、時折黄色い声を上げている。
バッターボックスに立っているのは朱崎だ。
「あれは特別だろ。ほら、アイドル的な感覚で推したいって感じじゃね?」
「えー?俺だったらこの作ったドリンク、自分で手渡ししてぇけどな〜」
志雫の同級生は、ボトルを振りながらそう答えた。
補欠部員である今日の志雫の仕事は、ほぼマネージャー業務だ。
部室を掃除し、ボールを磨き、今は同級生と一緒に、部員たちのドリンクをせっせと作っていた。
「キャー!」
バットにボールが当たる音とともに、女子の甲高い声が響いた。
思わず志雫はグラウンドの方を見て、他の補欠部員が飛んできたボールを拾う姿を目で追いかけた。
もう何度か続ける朱崎のバッティングを見て、志雫はどこか違和感を覚えた。
「……なぁ、朱崎先輩っていつもはもっとボール飛ばすよな?コントロールも、なんかイマイチ?」
「あれ?お前聞いてねぇの?」
「何が?」
「朱崎先輩、右肩壊したんだよ。だから甲子園も、ほぼ試合に出られなかったんだよ」
「え……?」
何も知らなかった志雫でも想像がついた。
朱崎がどれだけ悔しい気持ちで、この夏を過ごしたのか。
「う゛ぅう〜〜流李〜〜……。腕が…肩がぁ……」
「夏休み中、僕をほったらかして遊んでた怠け根性と体を鍛え直すいい機会だと思いなよ」
「お前、根に持ちすぎだろ……」
志雫は疲れて机に伏せており、今にも枯れそうな花のようだった。
「ほら、卵焼きと唐揚げ、どっちがいい?」
志雫の前の席に座った羽田本は、自分の弁当を見せながら、志雫に問いかけた。
「唐揚げ」
「食い意地だけはあるんだね」
ラインナップを聞いた途端、志雫は顔を上げ、自分の箸を出して、羽田本の弁当から唐揚げを取った。
「そりゃあお前、朝から体動かしたら腹は減るだろ〜」
「体動かしてなくても減ってたけどね。試合いつなの?」
「来月末。がっつり2ヶ月は部活行かなきゃだわ」
「部活、辞めないの?3年はもう引退しててもいい時期でしょ?」
「朱崎先輩は、体動かす程度にギリギリまで続けるんだって。あの人、スポーツ推薦だしな」
「でも今年、甲子園は全然だったんでしょ?予選敗退って」
「らしーな。なんか先輩、調子悪かったらしいわ」
「惜しいね……最後の夏だったのに」
「なー…」
通りすぎる風が心地良い時期になってきた。
その風はどこか、寂しくなるような冷たさもあった。
3年生たちの卒業、別れの季節がそろそろ近付いてくる。
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「なぁ、なんでうちの部活はマネージャーいねぇの?」
「人気ねぇからじゃね?」
「あんなに女子が集まってんのに?」
同じ補欠部員である同級生が指差す方へ、志雫は目を向けた。
フェンス越しに数名の女子生徒が集まり、時折黄色い声を上げている。
バッターボックスに立っているのは朱崎だ。
「あれは特別だろ。ほら、アイドル的な感覚で推したいって感じじゃね?」
「えー?俺だったらこの作ったドリンク、自分で手渡ししてぇけどな〜」
志雫の同級生は、ボトルを振りながらそう答えた。
補欠部員である今日の志雫の仕事は、ほぼマネージャー業務だ。
部室を掃除し、ボールを磨き、今は同級生と一緒に、部員たちのドリンクをせっせと作っていた。
「キャー!」
バットにボールが当たる音とともに、女子の甲高い声が響いた。
思わず志雫はグラウンドの方を見て、他の補欠部員が飛んできたボールを拾う姿を目で追いかけた。
もう何度か続ける朱崎のバッティングを見て、志雫はどこか違和感を覚えた。
「……なぁ、朱崎先輩っていつもはもっとボール飛ばすよな?コントロールも、なんかイマイチ?」
「あれ?お前聞いてねぇの?」
「何が?」
「朱崎先輩、右肩壊したんだよ。だから甲子園も、ほぼ試合に出られなかったんだよ」
「え……?」
何も知らなかった志雫でも想像がついた。
朱崎がどれだけ悔しい気持ちで、この夏を過ごしたのか。
