四季を巡って、恋し愛する僕たちは

「素直な人なんて、世界中探したらきっとたくさんいますよ。でも……俺の人生で、初めて会ったそんな人は、先輩だったんです」

詠瀬は、幸せいっぱいの穏やかな表情で語った。
志雫は覚えてるはずもなかった。
確かにその日は、期末テストの成績が悪かったせいで、補習を受けるため学校にいた。
見張りとして付き添ってくれた羽田本と、そんな話をしたような気もするが、志雫にとってはなんでもない日常の会話にすぎなかった。

「入学したあと、すごい探しましたよ。2年の教室に行きまくって、授業の時間も忘れて、クラスメイトに迎えに来させてしまうくらい。…ようやく見つけた時、思いました。……『きっとこの人は、俺の運命の人だ』って」

そう言われた瞬間、志雫は詠瀬の瞳に心を奪われ、時が止まったように目が離せなかった。

「……だから俺、負けたくないんです。朱崎先輩にも、深都先輩にも……羽田本先輩にも」

狙いを定めたような鋭い視線に変わり、幼なじみの名前を言う詠瀬の姿に、志雫の体には緊張が走った。

「先輩たちに比べたら、出会って間もない俺なんて、勝てっこないです。そこは嫉妬もします。……だからこの夏休み、少しでも先輩の気を引きたくて、ちょっとズルしました。すみません」

ここまで強引な予定を組み立てたことは、意図があってしたことなのだと、志雫もようやく今までの言動を理解できた。

「でも、俺も同じくらい…それ以上に先輩のこと本気です。だから……俺のこと、これからもっと、ちゃんと見て下さい。……京翔先輩」

志雫の心臓は、パンクしそうなほど早くなっていた。
ただのかわいい後輩だと思っていた詠瀬の想いの熱により、今まで志雫が向けていた気持ちは、手元のかき氷のように溶けきり、形を変えようとしていた。