「せんぱああああああああああああああああい!!!!!!」
「……ッうるせぇ!!!!んな声出さなくても聞こえるわッッ!!!!」
ある日の夕方。
詠瀬は志雫の家の前で、大声で志雫を呼んでいた。
そして志雫は自室の窓を開けて、負けじと大声で返す。
「京翔ッッ!!!!!静かにしなさい!!!!」
「イデッ!!……翼!大人しくして待ってろ…!」
「はぁぁぁい!!!」
志雫は母親に頭を1発叩かれ、大声で叱られた。
渋々声の大きさを落とすが、詠瀬は全く気にせず、また大声で返事をした。
「お前うるせぇよ…。普通にインターホン押して呼べよな」
「すみません!」
「ったく……なんでそんなとこは田舎くせぇんだよ」
「京翔っ!あんた、何時に帰ってくるの?!」
「知らねーよッ!坊っちゃんがいるから、んな遅くはなんねーようにする!!……ほら翼、行くぞ…!」
母親とのやり取りを見せるのが恥ずかしいのか、志雫は急かすように詠瀬の背中を押して家から離れた。
これから向かうのは夏祭り。
中心部で毎年開催している、少し大きめの祭りで、近所の子どもたちや、同じ学校の生徒の参加することだろう。
「先輩、言われた通りちゃんと現金持ってきましたよ!」
「おー、えらいえらい。祭りの屋台でカードなんて使えねぇからな。今日は俺が夏祭りの楽しみ方、しっかり教えてやるよ」
「ありがとうございます。…この夏祭り行くの初めてで、すっごい楽しみです!ふふっ♪」
この祭りを提案された時、同級生たちと鉢合わせるかもしれない可能性があるため、志雫は若干嫌がった。
しかし、ウキウキしている詠瀬を見ていると、『こんなことも経験したことないのか…』と不憫に思い、提案を受けることにした。
___
会場はすでに、多くの人で溢れかえっていた。
祭り独特の騒がしさと、屋台から漂う食欲を唆る匂い。
詠瀬は、初めての感覚に目を輝かせながら、辺りを見渡した。
「すごい人ですね……。昼間はあんなところにお店なんて出てないのに…!」
「そーゆうもんだよ、とりあえず1周するか。食いたいもんとかあったら遠慮なく言えよ」
「あ…はい!」
先を行く志雫を追いかけ、詠瀬は祭りの波に入っていった。
「腹減ったなー。肉とか食いてぇな」
「俺、よく分からないので、先輩のおすすめ教えてください!」
「……翼くん」
「はい!なんでしょう!」
「……この手はなんですか?」
気付くと、志雫は詠瀬に腕を掴まれていた。
ふと、志雫はあのショッピングモールでの買い物を思い出す。
「だって、好きな人とは手を繋ぐものだと書いていたので!」
「何にだよ……。あと、それはたぶん“付き合ってるやつ”とすることの間違いだぞ」
「じゃあ、どっちにしても合ってますね!先輩は俺に付き合ってもらってるので!」
「お前それ天然で言ってんの?それとも一休的な斜め上の発想で言ってんの??」
「一休?昔話がどうかしたんですか?!」
「……はぁ〜〜……もういいわ。……迷子防止だと思っておくよ」
「ていうか先輩、浴衣着てる人けっこういますよ!まあでも!俺と先輩はお揃いだから、俺たちの方が楽しそうに見えますよね!」
「はいはい、そうね」
今日2人が着ているのは、あの日ショッピングモールで買った色違いのシャツ。
お揃いの服を着た男2人が手を繋いで歩いている状況だ。
周りからどう思われるのか気になりつつも、詠瀬を止める術が思い付かない志雫は、すでに諦めていた。
(むしろ、この人の波に坊っちゃんを1人にして迷子になられる方が嫌だわな…)
チラッと横目で、詠瀬の方を見た。
忙しそうに頭を左右に動かして、あちこち並ぶ屋台を見ては、ワクワクした表情を浮かべている。
詠瀬がちゃんと楽しそうにしていることに、志雫はなんだかホッとした。
___
「…甘い。なんでこのかき氷、こんなに甘いんですか?」
「シロップの味だろ?普通じゃね?」
「お菓子みたいで美味しいですね!でも、メロンの味はしないような…」
「あれ、味書いてたけど、全部一緒なんだぞ」
「えぇっ!?そうなんですか!!?」
「さぁな、そういう噂だ」
少し悪い笑顔を浮かべ、志雫は自分のかき氷をひと口食べた。
見た目も涼しげな青色のシロップのかき氷。
人工的な甘さが口に広がるが、喉を通る度に体が冷えていくようで、爽快感もあった。
隣に座っている詠瀬は、鮮やかな緑色のシロップを選び、同じように口に運んでいた。
発光しているオモチャの腕輪は、詠瀬がしっかり夏祭りを満喫していることが目に見えて分かった。
「翼、見て」
「…っえ!?先輩、舌が青いですよ!?」
「そーいうもんだよ。お前も緑になってるから見てみろよ」
「ええッ?!……うわっ、ホントだ!」
「はははッ!んなことも知らねぇんだなぁ、お前」
反応1つ1つが予想通りで面白可愛く、志雫はつい、詠瀬の頭を犬のように撫でた。
「…………」
「え……なん、だよ。急に黙って……」
「いえ。なんか先輩を見ていたら、変な気持ちになって」
「え、もしかして怒った…?ごめん……」
「そうじゃなくって!なんか、こう…先輩がかわいく、色気があるように見えるな〜って……なんか変な感じで!!」
「……そっか。……翼くん、他のこと考えようか」
「なんでですか?!」
「お前には純粋なままでいてほしいからだよ…。ほら溶けるぞ。早く食いなさい」
「確かに!」
純粋すぎてその気持ちの名前に気付いていない詠瀬の意識を、なんとかかき氷に戻させた。
ふと、志雫は視線を逸らすと、たまたま見てしまったその光景が気になり、しばらく眺めてしまった。
志雫が何かに気を取られていることに気付いた詠瀬は、志雫と同じ方へ顔を向けた。
「カップルですかね?」
「……そーかもな」
少し離れた、人気の少ない場所。
そこでぽつんと、男女がそわそわしたような雰囲気で話していた。
志雫はその2人の様子を眺めて察していた。
この2人は、今日晴れて結ばれたのだと。
イベントに乗じて告白することはよくあることだが、たまたまその瞬間を見たのは初めてで、つい志雫は見入ってしまったのだ。
「……なぁ、翼」
「なんですか?」
「お前って……なんで俺のこと好きなの?」
「……ッうるせぇ!!!!んな声出さなくても聞こえるわッッ!!!!」
ある日の夕方。
詠瀬は志雫の家の前で、大声で志雫を呼んでいた。
そして志雫は自室の窓を開けて、負けじと大声で返す。
「京翔ッッ!!!!!静かにしなさい!!!!」
「イデッ!!……翼!大人しくして待ってろ…!」
「はぁぁぁい!!!」
志雫は母親に頭を1発叩かれ、大声で叱られた。
渋々声の大きさを落とすが、詠瀬は全く気にせず、また大声で返事をした。
「お前うるせぇよ…。普通にインターホン押して呼べよな」
「すみません!」
「ったく……なんでそんなとこは田舎くせぇんだよ」
「京翔っ!あんた、何時に帰ってくるの?!」
「知らねーよッ!坊っちゃんがいるから、んな遅くはなんねーようにする!!……ほら翼、行くぞ…!」
母親とのやり取りを見せるのが恥ずかしいのか、志雫は急かすように詠瀬の背中を押して家から離れた。
これから向かうのは夏祭り。
中心部で毎年開催している、少し大きめの祭りで、近所の子どもたちや、同じ学校の生徒の参加することだろう。
「先輩、言われた通りちゃんと現金持ってきましたよ!」
「おー、えらいえらい。祭りの屋台でカードなんて使えねぇからな。今日は俺が夏祭りの楽しみ方、しっかり教えてやるよ」
「ありがとうございます。…この夏祭り行くの初めてで、すっごい楽しみです!ふふっ♪」
この祭りを提案された時、同級生たちと鉢合わせるかもしれない可能性があるため、志雫は若干嫌がった。
しかし、ウキウキしている詠瀬を見ていると、『こんなことも経験したことないのか…』と不憫に思い、提案を受けることにした。
___
会場はすでに、多くの人で溢れかえっていた。
祭り独特の騒がしさと、屋台から漂う食欲を唆る匂い。
詠瀬は、初めての感覚に目を輝かせながら、辺りを見渡した。
「すごい人ですね……。昼間はあんなところにお店なんて出てないのに…!」
「そーゆうもんだよ、とりあえず1周するか。食いたいもんとかあったら遠慮なく言えよ」
「あ…はい!」
先を行く志雫を追いかけ、詠瀬は祭りの波に入っていった。
「腹減ったなー。肉とか食いてぇな」
「俺、よく分からないので、先輩のおすすめ教えてください!」
「……翼くん」
「はい!なんでしょう!」
「……この手はなんですか?」
気付くと、志雫は詠瀬に腕を掴まれていた。
ふと、志雫はあのショッピングモールでの買い物を思い出す。
「だって、好きな人とは手を繋ぐものだと書いていたので!」
「何にだよ……。あと、それはたぶん“付き合ってるやつ”とすることの間違いだぞ」
「じゃあ、どっちにしても合ってますね!先輩は俺に付き合ってもらってるので!」
「お前それ天然で言ってんの?それとも一休的な斜め上の発想で言ってんの??」
「一休?昔話がどうかしたんですか?!」
「……はぁ〜〜……もういいわ。……迷子防止だと思っておくよ」
「ていうか先輩、浴衣着てる人けっこういますよ!まあでも!俺と先輩はお揃いだから、俺たちの方が楽しそうに見えますよね!」
「はいはい、そうね」
今日2人が着ているのは、あの日ショッピングモールで買った色違いのシャツ。
お揃いの服を着た男2人が手を繋いで歩いている状況だ。
周りからどう思われるのか気になりつつも、詠瀬を止める術が思い付かない志雫は、すでに諦めていた。
(むしろ、この人の波に坊っちゃんを1人にして迷子になられる方が嫌だわな…)
チラッと横目で、詠瀬の方を見た。
忙しそうに頭を左右に動かして、あちこち並ぶ屋台を見ては、ワクワクした表情を浮かべている。
詠瀬がちゃんと楽しそうにしていることに、志雫はなんだかホッとした。
___
「…甘い。なんでこのかき氷、こんなに甘いんですか?」
「シロップの味だろ?普通じゃね?」
「お菓子みたいで美味しいですね!でも、メロンの味はしないような…」
「あれ、味書いてたけど、全部一緒なんだぞ」
「えぇっ!?そうなんですか!!?」
「さぁな、そういう噂だ」
少し悪い笑顔を浮かべ、志雫は自分のかき氷をひと口食べた。
見た目も涼しげな青色のシロップのかき氷。
人工的な甘さが口に広がるが、喉を通る度に体が冷えていくようで、爽快感もあった。
隣に座っている詠瀬は、鮮やかな緑色のシロップを選び、同じように口に運んでいた。
発光しているオモチャの腕輪は、詠瀬がしっかり夏祭りを満喫していることが目に見えて分かった。
「翼、見て」
「…っえ!?先輩、舌が青いですよ!?」
「そーいうもんだよ。お前も緑になってるから見てみろよ」
「ええッ?!……うわっ、ホントだ!」
「はははッ!んなことも知らねぇんだなぁ、お前」
反応1つ1つが予想通りで面白可愛く、志雫はつい、詠瀬の頭を犬のように撫でた。
「…………」
「え……なん、だよ。急に黙って……」
「いえ。なんか先輩を見ていたら、変な気持ちになって」
「え、もしかして怒った…?ごめん……」
「そうじゃなくって!なんか、こう…先輩がかわいく、色気があるように見えるな〜って……なんか変な感じで!!」
「……そっか。……翼くん、他のこと考えようか」
「なんでですか?!」
「お前には純粋なままでいてほしいからだよ…。ほら溶けるぞ。早く食いなさい」
「確かに!」
純粋すぎてその気持ちの名前に気付いていない詠瀬の意識を、なんとかかき氷に戻させた。
ふと、志雫は視線を逸らすと、たまたま見てしまったその光景が気になり、しばらく眺めてしまった。
志雫が何かに気を取られていることに気付いた詠瀬は、志雫と同じ方へ顔を向けた。
「カップルですかね?」
「……そーかもな」
少し離れた、人気の少ない場所。
そこでぽつんと、男女がそわそわしたような雰囲気で話していた。
志雫はその2人の様子を眺めて察していた。
この2人は、今日晴れて結ばれたのだと。
イベントに乗じて告白することはよくあることだが、たまたまその瞬間を見たのは初めてで、つい志雫は見入ってしまったのだ。
「……なぁ、翼」
「なんですか?」
「お前って……なんで俺のこと好きなの?」
