「予定…………」
それは、詠瀬が度々口にしていた言葉だ。
「なんだよ…予定って」
「…今日買った物」
「今日…?水着と、シャツ?」
「はい。あと、浴衣もちょっと見ましたよね?」
「うん……」
「俺、親ともう1個、約束したことがあるんです」
「…………」
緊張した空気と裏腹に、カランと氷の軽快な音が響く。
「全教科で最高得点が取れたら…夏休み、好きに遊んでいいって」
「…………ほお?」
「で、考えたんです。先輩と一緒に過ごそうって」
「……あぁ?うん…?」
「俺、今まで夏休みに遊んだこともなくて…!何しようかすっごい考えたんです!ネットとかも漁って!!」
「おおぅ、翼クン?オチツイテ??」
急にイキイキと話しだす詠瀬は、ついに立ち上がって熱く語り始めた。
「海!プール!夏祭り!花火大会!今まで親の会社付き合いでしか行ったことなかったから色褪せて見えていたんですけど、夏ってこんなにわくわくするイベントがあったんですね!!それを全部!今年は先輩と一緒にやりたいんです!!」
「え、えぇッ……?」
「だから今日は、その準備として。水着も買ったし、浴衣は着ないって言っていたので、そこは先輩に合わせます!せっかくならお揃いにしたかったですし、先輩が俺のために服を選んでくれて……。本当にいい買い物ができました!!」
「あ、えッ…?もしかして、付き合うって……」
「はいッ!!先輩には夏休み中、俺に付き合ってもらいます!!」
疑うことを知らない無垢な笑み。
何もかもが衝撃すぎて、志雫は言葉が出てこなかった。
___
「……で、オッケーしたんだ??その約束全部」
「だ……だって…………すげぇ嬉しそうだったし……。勢いのまま……」
「……はぁぁぁ〜〜〜〜」
翌日、詠瀬とはどうだったのか聞かれた志雫は、少し申し訳なさそうに、羽田本にありのままを報告した。
怒涛の情報量と志雫の気の弱さに、羽田本は呆れて大きなため息をついた。
「まぁ別に…僕が止めることではないけど。しかし意外だったなぁ……。詠瀬くんはその辺のクソガキと同じだと思ってたのに」
「おお、どしたの??急な悪口挟むじゃん」
「おっと……ん゛んッ。…でも、まんまと詠瀬くんの言葉のあやに乗せられたわけだけど。そこはどうお思いですか?志雫さん??」
「えぇ…………。でも、俺が出したのより遥かに高い条件だった上に、ちゃんと達成してんだから……。それは、アイツの努力を認めてやるのが…誠意だと、思う、ます…。たぶん」
なぜか羽田本に詰めらながらも、詠瀬を認めようとするのは、志雫の男気ある性格が滲み出ている。
羽田本も、そんな志雫の性格はよく理解している。
それ以上は志雫のことも、詠瀬のことも責めようとしなかった。
「分かったよ……。京翔は年下に弱いからな〜。あーあ、今年は一緒にいろんなかき氷食べ尽くそうと思ったのに」
「あ、別に毎日翼といるわけじゃねぇぞ?お前との時間もちゃんと作れるから!じゃねーと、俺の課題終わんねぇし!」
「僕は京翔の家庭教師じゃないんだけど〜」
「……誠心誠意ッ、かき氷巡りにお供させていただきます!」
志雫は羽田本に、深々と頭を下げた。
「……ふッ、はははッ。も〜〜、なにそれ」
「……ははっ」
「んははっ。…別に無理しなくていいよ。詠瀬くんとの予定だけでもハードスケジュールなんだから。かき氷くらい、来年でも再来年でも行けるよ」
「流李……ありがとな」
「ていうか、順位が張り出されるって僕らは無かったよね?」
「なんか、今年の1年から始まった新ルールらしい」
「へ〜〜、なるほど」
いつの間にか、2人には和やかな雰囲気が戻っていた。
「せえぇぇんぱぁぁぁぁいッッ!!!!」
そんな雰囲気を掻き消すように、豪快な声が響いてくる。
「げっ……翼……」
「ほーら、ワンコが来たよ。じゃあ僕、日直の仕事あるから」
「えぇッ!?ちょ、流李!」
羽田本は志雫を残してその場を去った。
そこに替わるように、詠瀬が志雫のもとへかけてくる。
「あれ?羽田本先輩は?」
「あ〜〜……日直だからって帰ってったよ」
「そうですか。先輩ッ!俺、いい海探してきましたよ!」
「あそ〜〜…」
「ちょっと距離はあるんですけど、グアムの海みたいに透き通っててすごく綺麗で!」
「ホントか〜〜グアムねぇ〜」
「プールは探したんですけどやめました!人が多いと気になるので!」
「うんうん、そっか〜」
「花火大会もいい場所があったんですよー!旅館はダメだって言われたので、それ以外で絶景スポットを押さえました!あとあと、他にも〜……」
昨日からはしゃいだままの詠瀬は、またしてもすごい勢いで話し続けた。
面倒くさいと思いつつも、今まで無表情が多かった詠瀬の笑顔を見ていると、志雫も嫌な気にはならなかった。
ジワジワと上がり始めた気温。
気付けば鳴いている蝉の声。
あと数週間で、夏休みが始まる。
それは、詠瀬が度々口にしていた言葉だ。
「なんだよ…予定って」
「…今日買った物」
「今日…?水着と、シャツ?」
「はい。あと、浴衣もちょっと見ましたよね?」
「うん……」
「俺、親ともう1個、約束したことがあるんです」
「…………」
緊張した空気と裏腹に、カランと氷の軽快な音が響く。
「全教科で最高得点が取れたら…夏休み、好きに遊んでいいって」
「…………ほお?」
「で、考えたんです。先輩と一緒に過ごそうって」
「……あぁ?うん…?」
「俺、今まで夏休みに遊んだこともなくて…!何しようかすっごい考えたんです!ネットとかも漁って!!」
「おおぅ、翼クン?オチツイテ??」
急にイキイキと話しだす詠瀬は、ついに立ち上がって熱く語り始めた。
「海!プール!夏祭り!花火大会!今まで親の会社付き合いでしか行ったことなかったから色褪せて見えていたんですけど、夏ってこんなにわくわくするイベントがあったんですね!!それを全部!今年は先輩と一緒にやりたいんです!!」
「え、えぇッ……?」
「だから今日は、その準備として。水着も買ったし、浴衣は着ないって言っていたので、そこは先輩に合わせます!せっかくならお揃いにしたかったですし、先輩が俺のために服を選んでくれて……。本当にいい買い物ができました!!」
「あ、えッ…?もしかして、付き合うって……」
「はいッ!!先輩には夏休み中、俺に付き合ってもらいます!!」
疑うことを知らない無垢な笑み。
何もかもが衝撃すぎて、志雫は言葉が出てこなかった。
___
「……で、オッケーしたんだ??その約束全部」
「だ……だって…………すげぇ嬉しそうだったし……。勢いのまま……」
「……はぁぁぁ〜〜〜〜」
翌日、詠瀬とはどうだったのか聞かれた志雫は、少し申し訳なさそうに、羽田本にありのままを報告した。
怒涛の情報量と志雫の気の弱さに、羽田本は呆れて大きなため息をついた。
「まぁ別に…僕が止めることではないけど。しかし意外だったなぁ……。詠瀬くんはその辺のクソガキと同じだと思ってたのに」
「おお、どしたの??急な悪口挟むじゃん」
「おっと……ん゛んッ。…でも、まんまと詠瀬くんの言葉のあやに乗せられたわけだけど。そこはどうお思いですか?志雫さん??」
「えぇ…………。でも、俺が出したのより遥かに高い条件だった上に、ちゃんと達成してんだから……。それは、アイツの努力を認めてやるのが…誠意だと、思う、ます…。たぶん」
なぜか羽田本に詰めらながらも、詠瀬を認めようとするのは、志雫の男気ある性格が滲み出ている。
羽田本も、そんな志雫の性格はよく理解している。
それ以上は志雫のことも、詠瀬のことも責めようとしなかった。
「分かったよ……。京翔は年下に弱いからな〜。あーあ、今年は一緒にいろんなかき氷食べ尽くそうと思ったのに」
「あ、別に毎日翼といるわけじゃねぇぞ?お前との時間もちゃんと作れるから!じゃねーと、俺の課題終わんねぇし!」
「僕は京翔の家庭教師じゃないんだけど〜」
「……誠心誠意ッ、かき氷巡りにお供させていただきます!」
志雫は羽田本に、深々と頭を下げた。
「……ふッ、はははッ。も〜〜、なにそれ」
「……ははっ」
「んははっ。…別に無理しなくていいよ。詠瀬くんとの予定だけでもハードスケジュールなんだから。かき氷くらい、来年でも再来年でも行けるよ」
「流李……ありがとな」
「ていうか、順位が張り出されるって僕らは無かったよね?」
「なんか、今年の1年から始まった新ルールらしい」
「へ〜〜、なるほど」
いつの間にか、2人には和やかな雰囲気が戻っていた。
「せえぇぇんぱぁぁぁぁいッッ!!!!」
そんな雰囲気を掻き消すように、豪快な声が響いてくる。
「げっ……翼……」
「ほーら、ワンコが来たよ。じゃあ僕、日直の仕事あるから」
「えぇッ!?ちょ、流李!」
羽田本は志雫を残してその場を去った。
そこに替わるように、詠瀬が志雫のもとへかけてくる。
「あれ?羽田本先輩は?」
「あ〜〜……日直だからって帰ってったよ」
「そうですか。先輩ッ!俺、いい海探してきましたよ!」
「あそ〜〜…」
「ちょっと距離はあるんですけど、グアムの海みたいに透き通っててすごく綺麗で!」
「ホントか〜〜グアムねぇ〜」
「プールは探したんですけどやめました!人が多いと気になるので!」
「うんうん、そっか〜」
「花火大会もいい場所があったんですよー!旅館はダメだって言われたので、それ以外で絶景スポットを押さえました!あとあと、他にも〜……」
昨日からはしゃいだままの詠瀬は、またしてもすごい勢いで話し続けた。
面倒くさいと思いつつも、今まで無表情が多かった詠瀬の笑顔を見ていると、志雫も嫌な気にはならなかった。
ジワジワと上がり始めた気温。
気付けば鳴いている蝉の声。
あと数週間で、夏休みが始まる。
