四季を巡って、恋し愛する僕たちは

買い物を一通り終えたタイミングで、志雫は『休憩したい』と詠瀬に頼んだ。
快く志雫の要望を受け入れた詠瀬は、再び志雫の腕を掴み、近くのカフェスペースへ引きずり込んだ。

勢いで店に入ったはいいが、詠瀬は注文の仕方が分からず、気を利かせた志雫が会計まであっという間に済ませた。

「お前、来たことねぇの?」
「……外食なんてしないので」
「別に外食ってほどじゃねぇけどな…。まぁ今日1つ、お勉強できて良かったじゃねぇの」

そんな会話をしていると、注文したドリンクができあがった。
ソファ席へ移動し、志雫は手際よくストローの袋を空け、早々とドリンクを飲み込んだ。

「うんま〜。炭酸が染みるわ〜」
「…………」

志雫の様子を伺いながら、詠瀬もストローでドリンクを吸い上げた。

「ッゲホ!ゴホ、ゴホッ…!」
「え?!だ、大丈夫かよ?」

ひと口飲んだだけで、詠瀬は盛大にむせ込んだ。
しばらく咳が止まらず、若干涙を浮かべる詠瀬に、さすがの志雫も心配した。

「だ…大丈夫です…。こんなにピリピリするものだと思ってなくて…」
「は?…飲んだことねーの?炭酸」
「無いです…。家では、紅茶かコーヒーしか飲まないので」
「へぇ〜……」
「…………うん、美味しいです」

飲み方を理解したのか、今度はちゃんと味わえたようだ。
詠瀬は、初めて体験した嬉しさと、むせたことの恥ずかしさが混じったような笑顔を見せた。

「……お前さ、普段どんな生活してんの?」
「え?」
「だって、頭良くて、店の中のことは知り尽くしてるくせに、飲み物の注文はできねぇし、炭酸飲んだことねぇとか。なんか変だろ?つかマジで、なんでお前頭良いの?」
「毎日家庭教師が入っているので、それでだと思います」
「えっ、そうなん?お前ん家(ち)、そんな厳しい家なの?」
「厳しいというか…英才教育を受けさせたいって感じですかね?勉強以外にもいろいろやりましたよ。スポーツは全般、ヴァイオリンとかピアノの音楽…あ、ビジネスマナーとかも」
「えぇっ……??」

自分の知っている習い事の範疇を越えている単語の羅列に、志雫は情報処理が追いつかない。

「…………お前んち、金持ちかなんかなの?」
「父が海外の金融会社の社長で、母が私立大学の学園長なだけですね」
「それを金持ちって言うんだよッ!!……お前ッ、ボンボンだったのかよ!!その頭でッ??!!」
「これは地毛です。父がフランス人なので」
「あーーーーそう…なの……」

派手髪というだけでヤンチャの括りにしていたことに、志雫は心の中で反省した。
今まで思い描いていた詠瀬のイメージが一気に崩れ落ち、志雫の頭はまだ混乱している。

「……じゃあ、あれか?今までこんな風に遊んだこと無かったから、遊んでみたくて俺を誘った……ってことか?」
「半分はそうですね。今回のテスト最終日に発表される学年順位で、上位3位までに入ってたら、今日の習い事は全部休んでいいって言ってもらえたので。……先輩が『赤点取るな』って条件出してくれたので、逆に頑張れました。ありがとうございます」
「あぁ……いえいえ……」

深々と頭を下げる詠瀬に対して、志雫もつられて頭を下げた。

「じゃあ……もう半分はなんだよ…?」
「……先輩」

手に持っていたグラスを置いて、詠瀬は真剣な目で志雫を見つめた。
いつも向けられる瞳とは雰囲気が違う。

「俺……まだ全部話してないですよね?“予定”について」