四季を巡って、恋し愛する僕たちは

「……なぁ翼?」
「なんですか先輩」
「なんで、俺との遊びにここを選んだんだ?」
「買い物をするならこのショッピングモールだと、クラスメイトから聞きました」
「まぁ、確かにそうなんだけどさ…。つか、なんで買い物?俺、お前の買い物に付き合わされてるってこと??」
「俺の買い物でもあり、先輩の買い物でもあるからです。先輩もいることから、俺の予定は始まるんです」
「はあ…?」

面倒くさくなり、志雫はそれ以上追求することはやめた。
それに、先程から普段と違うキラキラした目をする詠瀬を見ていると、志雫の先輩心がくすぐられた。

(まぁ、なんか翼が楽しそうだし…なんでもいっか)

「先輩、着きましたよ」

気付けば目当ての店が見えていた。
志雫がよく行くメンズ向けのアパレルショップ。
こちらの店内も、夏に向け商品が変わり始めている。

「お、新作出てんじゃん。これいいなー」
「じゃあこれにしましょう」
「まあ待て。あっちも新作だし、一通り見てみようぜ」

今度は志雫が先を行き、詠瀬は志雫の腕を掴んだままついて行った。

「お!これめっちゃいいなー。あ〜、でも色がな〜。あ、あれもカッケェな。見てたら欲しくなるな〜」
「………」

志雫は楽しそうに夏服を物色していた。
詠瀬は見るものが新鮮なのか、志雫の話はあまり頭に入らず、店内をキョロキョロしている。

「あ!翼、翼!!これめっちゃ良くね!?」

名前を呼ばれ、詠瀬は志雫の方へ意識を戻す。
志雫の手にはサラッとした黒地の襟付きカジュアルシャツがあった。
襟と袖にラインのように入っている、ネオンイエローが目を惹かれそう。

「シンプルだけどカッコよくていいじゃん!お前も似合うと思うぞ、髪とおんなじ派手黄色」
「……俺に?」
「おう。まぁお前は顔良いから、なんでも似合いそうだけどな。あ、ちょっと持ってて。カラバリあるし、俺買っちゃおうかな〜」

持っていた服を詠瀬に渡し、志雫は他の色を見始めた。
詠瀬は、渡されたシャツをじっと見つめた。

「赤……青…?シルバーもいいな〜…。うわ〜…どーしよ」

悩んでいるのに志雫は嬉しそうで、その姿を見て、詠瀬も思わず嬉しくなった。

「あ!」
「紫!/紫」
「え…?」

2人の声が重なった。

「……先輩は紫、ですよね?」

そう言うと、詠瀬は色違いでネオンパープルのラインが入ったシャツを手に取り、志雫に渡した。

「俺、これ買います…!」

志雫に渡されたシャツを大事そうに持ちながら、詠瀬は無邪気な笑顔を見せた。
パッと咲くような明るさと、子犬のような可憐さが合わさり、思わず志雫の胸が高鳴った。

「お、おぉっ、そうか…!あッ…!!お、俺が買ってやるよ!」
「え!?いいんですか?」
「任せとけ!先輩だからな!ちょ、ちょっとその辺見て待ってろっ!!」

詠瀬が持っていた服を奪い取り、ようやく腕を解放してもらえた志雫は会計へ向かう。

(……なんで俺、翼のこと“かわいい”って思ったんだ…?)

初めて見た詠瀬の笑顔と、新たに込み上げる感情に志雫は戸惑った。