四季を巡って、恋し愛する僕たちは

2人がやって来たのは、大型ショッピングモール。
買い物、食事、遊び…なんでも揃っている、若者の溜まり場にはもってこいの場所。
どの学校もテスト明けのなのか、今日は特に学生が集まっていた。

「どこに行くのかと思ったら、案外ベタじゃねーか」
「こっちです先輩。行きたいお店があるんです」

志雫は言われるがまま、詠瀬のあとをついて行った。
最初に訪れたのは、大手スポーツメーカー店。

「…ここか?」
「はい。こっちです先輩」

行き着いた場所は、これから迎える夏にぴったりのマリンスポーツ用品が揃ったコーナー。

「水着?」
「はい。今年は海かプールに行きたいので」
「ふーん」
「先輩はどれが好みですか?」
「俺?うーん…無難に黒でいいんじゃね?」
「じゃあそれします」

詠瀬は、志雫が適当に手に取った黒の水着を選んだ。

「…その手に持ってんのは?」
「これは先輩のです」
「え?なんで?」

詠瀬の手にはもう1着、バイオレットの差し色が入った水着があった。
志雫が選んだ物の色違いだ。

「先輩にも一緒に行ってもらうからです。せっかくだからお揃いにしましょう」
「え??お前と行くの?海かプール」
「そうですよ。これ買ってきますね」
「あ、ちょ……えぇ?」

詠瀬は志雫を置いてレジへ向かった。
詠瀬の発言を理解できない志雫は、その場に立ち止まり、遠くから会計が終わるのを見届けた。

「お待たせしました。じゃあ次、行きましょう」
「お、おう…?」
「…………」
「……どうしたんだよ?」

詠瀬は突然、志雫を見つめ始めた。
何を考えているのか分からないが、やけに真っ直ぐな瞳。
志雫の苦手とする詠瀬の部分だ。

すると詠瀬は、ポケットに突っ込んでいた志雫の片手を掴み、そのまま歩き出した。

「えっ…!え、ちょ、なんだよ?!」
「次はこっちです」
「んえッ?!こ、この手は!?この手はなんだよッ!!?」

ほぼ引っ張られている感覚で、志雫は詠瀬に連れ回された。

___


「…………」
「あのーー………翼クン…?」
「…………んー」
「あのっ、これ……なにしてんの、俺ら…?」

次に訪れたのは、季節物の商品が陳列されるブース。
この時期は色とりどりの浴衣や、それに合わせる小物が並んでいた。
詠瀬は志雫の手を掴んだまま、ほぼ無言で浴衣を物色していた。

(なんだよコレ…?!なんで俺は腕掴まれながら、翼と浴衣見てんの…?!!翼もずっと黙ったまんまだしッ、なに考えてんだお前ッ!!)

「先輩」
「はいッ!」
「こっちと、こっち。先輩ならどっちが着たいですか?」

志雫は2つの浴衣を提案された。
1つは、浴衣は無地だが帯が鮮やかで目立つ物。
もう1つは、和柄の入ったクールな印象の物。

「あーー……どっちでも、良くね…?俺、こういうの着ねぇし」
「え?着ないんですか?じゃあ、夏祭りとか行く時、何着るんですか?」
「別に普通の服でいいだろ。こういうの着たがるのって女だけだろ?今どき、祭りとか行くのにこんなのちゃんと着ねぇよ」

詠瀬は少し驚いたような表情を見せて、持っていた浴衣を元の場所に戻した。

「……じゃあ、先輩がいつも買ってるお店に行きましょう!」
「え?……あ、おう」
「どこですか?この中にありますか?」
「おー、あるある。あっちの方…」
「あっちですね!行きましょう!」
「うお゛ぉッ……はぁ〜…ったく」

志雫はもう諦め、再び詠瀬に引っ張られながら歩き出した。