四季を巡って、恋し愛する僕たちは

中間テスト最終日。
志雫はホームルームで名前を呼ばれなかった。
そのことに歓喜の雄叫びを上げ、そのまま廊下に飛び出すと、今回も手助けしてくれた羽田本へ報告をしに行き、『喧(やかま)しい』と羽田本の担任に叱られた。

だが、そんなことはどうでもよく、現時点で赤点を回避できたことは志雫にとって誇らしく、舞い上がるほど嬉しいことだった。
ホームルーム後、志雫はスキップ混じりで、羽田本と一緒に詠瀬のクラスへ向かった。

「ふっふふ〜ん♪やったぜー!俺だってやりゃあできんだよコノヤロー!」
「良かったね、京翔。てか、なんで僕も一緒に行くの?」
「そりゃあお前!もし翼が赤点取ってたら、慰めてやんねぇとだろ!?先輩として、優しいところ見せとけば、お前も翼から恨まれなくなるかもしれねぇだろ〜」
「別に詠瀬くんから恨まれてないけど」
「いいからいいから〜♪あともし、翼が赤点取って補習になったら、暇になるし。代わりに遊んでくれよ!」
「最低だね、京翔」

そんなことを言っていると、あっという間に1年生のフロアに着いた。
すると、ある場所で生徒たちが集まっているところが目に入る。

「なんだ?」
「あれは、掲示板かな」

ちょうど前を通るため、志雫と羽田本は少し足を止めてみた。
掲示板には大きめの用紙が張り出されており、2人は書かれた内容を見て驚愕した。

用紙のタイトルは【中間テスト 上位20名(現時点のもの)】。
栄えある1位の横には、詠瀬の名前と、現時点での総合点数が書かれていた。

「はあ゛ぁ゛ッ!?!!?翼ッッ!!!???」

志雫は思わず大声を上げてしまい、集まっていた生徒達の視線は、一気に志雫へ向いた。

「あ!先輩!!」

聞き慣れた声とともに、詠瀬がワンコのようにかけてくる。

「先輩!俺、赤点なかったですよ!先輩もここにいるってことは、赤点なかったんですね!じゃあ約束通り、俺と付き合ってくださいね。この前話せなかったんですけど、今後の予定は…」
「待て待て待てッッ!!いやッ……お前!」
「はい?」
「お前ッ…これ、こ…これお前!?」
「はい、そうですよ」

詠瀬はきょとんとしながら、淡々と答えた。
志雫はもちろん、羽田本もまだ驚きが隠せない。

「…………実は1年に“詠瀬翼”って2人いる?」
「いませんね。俺だけです」
「……1位が取れることは不思議じゃないかもしれないけど……これ、どの教科も満点の点数じゃない?」
「そうですね。自己採点でも同じ結果だったので、間違いではないと思います」

堂々と話す詠瀬の姿に、ついに志雫と羽田本は黙り込んでしまった。
そして、志雫はゆっくりと詠瀬に近付き、詠瀬の両肩を掴んだ。

「お前、騙したなーーーーッッッ!!!???こっち側だと思ってたのに……!翼ぁぁぁ〜〜っっ!!」

詠瀬の肩を思いっきり揺さぶりながら、志雫は叫んだ。
上級生とは思えない情けない姿で、羽田本は恥ずかしさでいっぱいになる。

「……まあ、2人とも条件達成したんだし。ともかく行っておいでよ」
「ぐぅうう〜〜……まぁ、そうだな…。んじゃ行くぞ、翼。悪ぃな流李、付き合わせちまって」
「いいよ。いってらっしゃい」

志雫は先に靴箱へ向かい、詠瀬もあとをついて行く。

詠瀬と羽田本がすれ違う時、一瞬2人の挑戦的な視線がぶつかり合った。
そんな2人の冷戦が繰り広げられていることを、志雫はまだ知らない。