ドキドキ大作戦


 朝スッキリした気持ちで目が覚めた。

 あれ?昨日たろちゃんとソファーでテレビ見てたのに。

 テレビを見てた記憶はある。
 自分でベッドまで行った記憶はない。

 昨日は2人の姿が頭から離れなくて、たろちゃんと離れたくなかった。
 たろちゃんが帰ると言ったのを、止めてたろちゃんから離れずにピッタリくっついてた。

 たろちゃん……。

 ぼくが眠っちゃったのに気がついて、ベッドまで運んでくれたんだ。
 そう思ったら嬉しくなって起き上がっりベッドから立ち上がってからも自然と口角が上がりっぱなしになる。

 でも……。

 メッセージの返事の違和感。
 2人の駅での姿。
 それが……胸の中に小さな、小さな石のように残ってる。
 説明できない……ざわつきがある。

 ざわついてる胸を押さえる。

 手を押さえながらも、静かにゆっくり息を吐く。

 でも……。
 ぼくは……。
 
 たろちゃんの前から離れない。
 たろちゃん以上にぼくが興味を沸ける人はいない。

 ゆっくりと机まで歩く。

 そこに置いてある高校時代カバンに付けてたクマのぬいぐるみをそっと手に取る。

 新しいクマちゃんをくれたから、この子はここに置いてる。

 寝る時も視界に入る位置に大事に置いてる。

 このクマちゃんはぼくとたろちゃんを繋いでくれた大切な子。

 ぼくの宝物。

 そのクマちゃんを優しく撫でる。

 さっちゃんと一緒にいたぐらいで不安になるなんて……。
 そんなのぼくらしくない。

 たろちゃんと絶対離れないって、決めてるのに。
 それに……。
 

 たろちゃんだってぼくのこと1番と言ってくれてる。

 (そうだよね……たろちゃん……)

 自信持たなきゃ。
 このクマちゃんをたろちゃんがくれるのはぼくだけ。

 クマちゃんに心の中で話しかける。


 少しだけ、気にならなくなってきた。
 

(でも消えてはいない)
 
 そうだよ!

 弱気になるなんてぼくらしくない。
 たろちゃんの1番はぼくなんだもん。

 弱気になる前にやることがある。
 さっちゃんがどんな人物なのか……知りたい。


 クマちゃんぼく、頑張るね。

 そう語りかけながらクマちゃんの頭を撫でて元に位置に戻す。



 悩んでる暇はない。やらなきゃ。


 
 今日の朝の段取りを頭の中で考える。
 たろちゃんを朝部屋に迎えに行って一緒にご飯を食べよう。

 そして……。

 そうだ!

 今日はぼくがたろちゃんを大学まで送ろう。
 ぼくの大学からだと1回駅に戻る方が早いからたろちゃんがぼくの大学に来てくれるか駅で待ち合わせをすることが多かった。

 でも!
 今日は遠回りになってもいい。

 ぼくがたろちゃんを大学まで送りに行くんだ。
 たろちゃんの仲良いさっちゃんを見られるかもしれない。

 会えるかもしれない。
 そのチャンスを逃す手はない。

 落ち込むよりまず動こう。

 たろちゃんはよくクラスメートの話をする。
 話を聞いてるとさっちゃんが1番仲良いみたい。

 でも、どうやらクラス全体みんな仲良さそうだ。
 さっちゃんに会えなくても、他の子に会えるかもしれない。
 
 洗面所で朝の準備をして、服を着替えてたろちゃんの部屋に行く。
 たろちゃんがおにぎりを握ってくれてる間、ぼくはテーブルセッティングをする。

 テーブルにお盆を置いたりしながら、考えた。
 
 たろちゃんが抱きついてくれるのがお互い当たり前になってる。

 ぼくはいつもそれを受け止めてる。

 ぼくがたろちゃんに抱きつくことで、たろちゃんに意識してもらう?

 いや……でも、たろちゃんと同じことしても意味はない。

 たろちゃんが意味を理解してくれるか怪しい……。


 そうだ!


 ぼくはたろちゃんにぴったりくっつこう。

 隣でぼくの体温を感じてもらおう。
 そしたら……少しはたろちゃん意識してくれるかもしれない。
 
 たろちゃん1番とは言ってくれてる。


 ぼくもその言葉に安心し切ってたのかもしれない。

 たろちゃんにもっとぼくを意識してもらおう。


 まずはそこからだ!


 急いでテーブルに食べる準備をして、キッチンでおにぎりを握ってるたろちゃんの隣にいく。
 喋りながらたろちゃんの隣に、ピッタリくっつく。

 海苔を取ったりお皿取る時は一旦離れるけど、またすぐ戻ってたろちゃんにひっつく。

 たろちゃんが作るツナマヨのおにぎり大好きと伝えたら、たろちゃんがぼくの作るカレーが好きと言ってくれた。

 今日はぼくがカレーを作ることにした。
 そのまま2人で出来上がったおにぎりを運んで一緒にご飯を食べる。

 食べ終わり大学に向かうため家を出て、大学最寄りの駅に到着し改札口を出た。
 いつもならここでぼくたちバイバイする。

 けど今日は違う。
 ぼくがたろちゃんを送っていく。

 そう思ってたろちゃんの大学側に進むため、体の向きを変えた。

 たろちゃんは、ぼくを送っていこうとしてくれてた。
 その気持ちはとっても嬉しい。

 でも、今日は譲れない。
 ぼくにもたろちゃんの大学にいく目的がある。
 
 大学までいく道のりもいつも通りいろんなことを話しながら歩く。
 でも今日は、少しだけ違う。

 ぼくは、いつもより離れないの気持ちでたろちゃんにぴったりくっついて歩く。

 ぼくがたろちゃんにぴったりくっついてるから、たろちゃんのカバンで揺れてるクマちゃんとぼくのカバンで揺れてるクマちゃんもひっついてたまに手を繋いだように見える。

 クマちゃんが、
 ぼくはずっとたろちゃんと一緒にいれるよ。
 そう語りかけてくれてる気がした。

 勇気をもらえた。

 話しながら歩いてたら校門に辿り着いた。

 ここで、お別れ。

 そう思ったら離れるのが寂しい気持ちになった。
 自分の夢のために勉強はおろそかにするつもりはない。

 勉強は頑張るけど、たろちゃんと一緒にいるのがいちばんの原動力であるのも改めて実感する。
 校門前でたろちゃんと話しながらキョロキョロと校門に入っていく子達をみる。

 これまでの道のりでたろちゃんに話しかける子はいなかったからクラスメイトはいないみたい。
 さっちゃんは青い髪の毛の子だから探しやすいそう思ったけど、今の所青い髪の毛の子はいなかった。


 残念。


 また今度探すしかない。

 でも今日はたろちゃんがぼくに大学まで送らせてくれた。
 たろちゃんに声かけてくる子もいなかったのがわかった。

 それだけでも大きな収穫だ。

 たろちゃんに手を振りぼくも自分の大学にいくため、来た道を帰った。
 

 大学着いたら昨日ぼくに質問を聞いてきた友達が待っていた。

 遅れてごめんね。
 そう手を合わせながら講義室に入りカバンを机に置いて昨日の授業の振り返りをした。

 昨日講義室を出る時は胸がざわついてたけど、今日はもうそんなことなくなった。
 
 もうちょっとたろちゃんにぼくを意識してもらうためにこれからは積極的にくっつこう。


 あとはさっちゃんを見ること。


 そのためには……と、

 友達に教えながらも頭の中ではその段取りを考え始めた。