ドキドキ大作戦


授業がもうすぐ始めるその時、スマホが揺れた。

 チラリと画面をみたら、たろちゃんの文字。

 即座にスマホを手に取り内容を確認する。

『凪紬くん、あと一限で今日は終わり?さっちゃんと駅前のお店でパフェ食べようかってお話してるの』
 たろちゃんらしい内容に笑みが溢れる。

『今からの授業で終わり。終わったらぼくも行くから場所教えて』

 手早く指を動かしてそれだけ送り、スマホをカバンに戻る。

 チラリと時計を見る。

 (この先生なら、10分は早く終わるかな)

 もう少しでたろちゃんに会える。
そのワクワクな気持ちのまま授業を受けた。

 ぼくの想定よりもさらに早く授業が終わった。

 先生やる——!なんて思いながら急いでカバンに荷物を直す。

「青木このあとみんなでレポートしようって話してるんだけどさぁ」
 同級生がぼくの元にきて話しかける。

「そうなんだ。ごめんねぇ。ぼく今日はちょっと無理なんだよね」
 さらりとかわす。

「青木の教え方上手いから来てくれると助かるんだけど」

 (しつこいな……)

 今日に限って粘る同級生。

「ちょっと大事な用事があるんだよね。明日わからないとこあったら聞いてきて。ごめんね」

 これ以上呼び止められたくなくてそれだけ伝えて急いで講義室を飛び出た。

 歩きながらカバンに入れてるスマホを取り出す。

 少しだけ足止めを食らったけど、これなら予定より早めに着けそうだ。

 たろちゃんからきてたお店の場所を確認する。
 
『たろちゃん今向かってるよ』

 それだけ打ち込みスマホをまた直した。

 歩きながら頭の中で最短距離で着くルートを考える。
あの小道を通ってあそこを走れば、うん。着く。
 頭の中でシュミレーションをする。


 たろちゃんは、大学に入ってからさらに明るくなった。 

 好きなことをしてイキイキしてるたろちゃんがぼくは大好き。
 それに……。

 (さっちゃんいいお友達)

 素敵なお友達との出会いがたろちゃんをさらにイキイキさせてる。
 ぼくは2人のやりとりを眺めてるのもすき。


 最短距離でお店に辿り着く。

 少しだけ息を整えてお店の扉を開けた。
 チリン。
 
 入ってすぐにふんふわ頭の飛び抜けた身長のたろちゃんを発見する。

 お店の方の案内を「待ち合わせです」と伝えた、たろちゃんのいる席に向かう。

「たろー今度はそれ作るの?なっちゃんとおそろ?」

「うんっ!おそろいにしたいの。あっ、でも凪紬くんには内緒っ」
「んっもぉ——!なっちゃんを驚かそうってわけねぇ。いいねぇ」

 2人を驚かそうと思ってゆっくり近づいてたら2人の会話が聞こえた。

(これら、ぼく聞いちゃうだめな話だな)

 でも。
たろちゃんがお揃いを作ろうとしてくれてることに、顔のにやにやが止まらない。

 少しだけ大きな声を出す。

「たろちゃん。お待たせ——」

 2人ともぼくの声を聞いて、慌ててテーブルに置いてる紙をカバンに直した。

「凪紬くん!こっち」

 たろちゃんが立ち上がってぼくに手を振ってくれる。

 たろちゃんに手を振りかえしながら2人のテーブルに行き、たろちゃんの隣に座る。

「さっちゃん、こんにちは」
 目の前に座るさっちゃんに挨拶をする。

「なっちゃん、やっほー!おつかれぇー」
 オレンジのウィッグに緑のワンピースのさっちゃん。

「さっちゃん今日もかわいいね」
「ありがとぉ——!今日のはねぇ夏コーデだよーん」

 いつも元気なさっちゃん。
 さっちゃんと話してたら、たろちゃんがメニューをぼくに渡してくれた。

「なっちゃん何食べる?たろうはこのパフェ頼んだよ」

 たろちゃんがチョコレートのパフェを指差す。

「んー甘そうだね」
「凪紬くんはそう言うと思った。あのね、アフォガードのパフェもあるって。これはコーヒーだから甘くないらしい」

 たろちゃんが隣のページのアフォガードのパフェを指さしてくれる。

「うん。ぼくそうする」
 そう言ったらたろちゃんが「やっぱり」と笑いながらパネルで注文してくれた。

 目の前から視線を感じて顔を上げた。

「さっちゃん?」
 ぼくとたろちゃんをじっと見つめてるさっちゃん。

 ぼくの声に気がついて、隣のカバンをパシパシと叩き始める。

「くぅ——!いいねぇ——!2人のこの会話!甘いものが苦手ななっちゃんのために甘くないものを探すtたろー。それを頼むなっちゃん。くぅ——いいものみたぁ——」

 さっちゃんはいつも独特な言い回しをして面白い。

「そう?ありがとう」
「なっちゃんちょっと聞いてくれる?たろーてばねぇ、甘いのはなっちゃん食べれないからって、店員さんに事前リサーチしてんのよぉ」

 さっちゃんがテーブルから身を乗り出してぼくに伝えてくれる。

「そうなの?」
 隣のたろちゃんを見る。

「さっちゃん!その話は内緒!」
 隣で慌てて、さっちゃんを止めようとしてるたろちゃん。

「いいじゃん!たろーの愛!そして、それをそのまま受け取るなっちゃん。くぅ——最高じゃん」
 さっちゃんは表情もコロコロ変わるから見てて楽しい。

「たろちゃんありがとう。たろちゃんの気持ちがうれしいよ」

 隣のたろちゃんの手をテーブルの下で握ってそう伝える。

「たろうがね、凪紬くんと一緒に美味しいを感じたかったの」
 そう言って笑うたろちゃん。

 そんな話をしてたら、パフェが届いた。

 たろちゃんとさっちゃんはチョコの甘そうなパフェ。
 ぼくのはアイスにコーヒーがかかった大人の見た目のパフェ。

 2人ともぼくのパフェをまじまじと眺める。

「なっちゃん大人だねぇ——。たろーと私はおこちゃだわ」
 そう言って笑う。

 3人ともスプーンを手に取りパフェをひとすくいする。

「うんっ。美味しい」
 口々に感想をいう。

「今日はたろーとなっちゃんを目の前にして食べるからパフェもいつもより甘いねぇ」
 なんて言いながらパクパクと食べ進めてるさっちゃん。

「凪紬くん、たろうのも食べてみる?」

 そう言ってたろちゃんがパフェをそっと渡してくれる。

「うん。ぼくのも食べてみて」

 2人で交換する。

 たろちゃんのパフェをひとすくいとり、口に入れる。

「甘い」
「苦い」

 2人とも反対に言葉をつぶやく。
 お互い顔を見合わせて笑い合う。

「くぅ——。私が目の前にいるのに2人の世界。これもまたいいねぇ——」
 さっちゃんがそんなことを言う。

 お互いのパフェを元に戻す。

 コーヒーがかかってる部分を掬う。

 さっきよりも、少しだけあまく感じた。