駅で凪紬くんが大学に向かう姿をじっと見て見送る。
(5日間、頑張って来てね)
エールを送りながらも、やっぱりさみしい。
あゆくんの背中が見えなくなって小さくため息をつく。
「なぁ――にぃ。今生の別れみたいな雰囲気出してるじゃん」
ぼくの耳元から声が聞こえて来た。
「さっちゃん……」
「おはよ――ん。なに、なに、朝からそんな悲壮感出しちゃってさぁ――」
今日は緑のウィッグに白のサロペットを着てるさっちゃん。
「わぁ――。今日の服かわいいね」
「いいっしょ。真っ白のサロペット作ってみたよーん」
くるりと回転して全身を見せてくれる。
「て!それはいーの!なっちゃんの背中見つめて何してたの?」
ぼくの顔を覗き込んでくるなっちゃん。
「凪紬くん……今日からいないの」
言葉にしたらまたさみしくなってきた。
「いない?なんで?」
「学校の研修なの」
さっちゃんが大学の方向を指差す。
肩を並べて一緒に歩き始める。
「あぁ。研修ねーなに。1ヶ月近くいくの?」
「ううん。5日間」
さっちゃんに話しながら5日間も凪紬くんの顔が見れないとまたさみしくなる。
「はっ!!?たろー」
さっちゃんが大きな声を出した。
ビクッとして立ち止まる。
「さっちゃん?なに?」
「なっちゃんの研修は5日間。つまり金曜日には帰ってくるってこと?」
指を折りながら「今日が月曜だから」と呟きながらぼくに確認してくる。
「うん。そうな。金曜日まで会えない」
ぶわぁ――と大爆笑してくるさっちゃん
「きっ……きっ……きんよ……」
ひぃひぃと声を出しながら手を叩いて笑うさっちゃん。
さっちゃんが落ち着くのを待つ。
しばらく大爆笑してようやく落ち着くさっちゃん。
「たろー!5日間であんな悲壮感出してたの?今生の別れみたいな?」
笑いすぎて涙が出た。なんて言いながら涙を拭いながら聞いてくるさっちゃん。
「うん」
視線を下に下げて頷く。
(なんか……さっちゃんに言葉にされたら恥ずかしい……かも)
「もぉ――!たろーとなっちゃん最高――!どんだけ一緒にいたいの」
未だに手を叩いて笑うさっちゃん。
2人でまた肩を並べて歩き始める。
「んで?そのなっちゃんは寂しいからって、たろーお手製のクマちゃん持っていったの?」
さっちゃんがそうぼくに聞いて来た。
「えっ……」
(なんで!なんでわかるの!)
びっくりして立ち止まるぼく。
さっちゃんもぼくが立ち止まったので一緒に立ち止まる。
「えっ?まじで?」
さっちゃんの方が目をまんまるくしてぼくをみてくる。
「うん。あっ……正確にはたろうが新しく作ったクマちゃん」
小さい声でさっちゃんに伝える。
「んっまぁ……!熱いねぇ――!たろーとなっちゃんはそうでなくっちゃ」
今度は爆笑ではない、にっこりとした笑顔を見せるさっちゃん。
「まぁ、もしなっちゃんがいなくてさみしい時は遊んであげるから声かけてねん」
そう言ってさっちゃんはぼくの肩を叩いた。
もちろん、講義室に入って即みんなに話してみんなからも大爆笑された。
ついに明日、凪紬くんが帰ってくる。
一日目は、ご飯を作る気になれずに2人でお気に入りのお弁当屋さんの唐揚げ弁当を買って食べた。
でも……なんだかいつもより味が薄く感じた。
普段は凪紬くんと唐揚げとサバの塩焼きを半分こしてるからそう感じたのかも。
そう思い2日目は、サバの塩焼きを弁当を買ってみた。
これも……なんだかいつもより味が薄く感じた。
3日目からはさっちゃんが連れ出してくれてご飯を一緒に食べてくれた。
「あっ、これ凪紬くんが好きかも」
食べ物を見るたびに自然とそう口に出てた。
その度にさっちゃんからは笑われてた。
「まぁたろーとなっちゃんはそれがいいんだよ。2人を見るの目の保養になるからねん」
そんな風に言ってくれてた。
今日もさっちゃんと他のお友達とご飯を食べてマンションに帰って来た。
部屋に帰ろうとして、凪紬くんの部屋のドアが目に入った。
(明日会える……)
そのまま足が止まった。
カバンから鍵を取り出す。
凪紬くんの部屋のドアを開ける。
真っ暗な人の気配がしない部屋。
でも……なんか落ち着く。
凪紬くんの優しさに包まれてる気がする。
『たろちゃん!全部終わったよ!明日の朝帰るねー』
リビングの電気をつけた時に凪紬くんからメールが来た。
『おめでとう!お疲れさま!早く会いたい』
(明日帰ってくるし、いいよね……)
『ぼくも!朝までもうちょっと』
『うん。今ね凪紬くんのお部屋にいる』
指がするすると文字を打ち込んでいく。
『ほんと!嬉しい!そのままそこにいて!朝たろちゃんの元に帰るから』
凪紬くんからそう返事が来た。
『うん。今日はここで過ごすね』
ぼくもそれだけ送った。
スマホを抱きしめる。
(明日……凪紬くんにようやく会える……)
この部屋で待とう。
うん。そうしよう。
朝、凪紬くんが帰って来た時に食べれるものを作ろう。
そう思ってキッチンに行き冷蔵庫の中を確認した。
(帰ってくるまで、もう少し)



