目を覚ました時から、体が重たい。
ベッドから起きあがろう、そう思うのになかなか起き上がれない。
(これは……たろうやっちゃっかも……)
手を自分の額に置いてみる。
いつもより熱い気がする。
(風邪……引いたかな)
そう思った。
枕元に置いてあるスマホに手をのばす。
(凪紬くんに連絡、しなきゃ)
朝から一緒に出かける約束してる。
凪紬くんがぼくの部屋に来ないように言わなきゃ。
なんとか腕をあげて文章を作る。
『凪紬くんごめん。たろう風邪引いたみたい。今日いけない』
なんとかそれだけ打った。
そのまま送る。
(あっ……ダメこれだと……)
またスマホを手に取る。
『凪紬くん、絶対この部屋に来ないで』
画面に指を押し付けながら、それだけ送る。
手にスマホを持ったまま、そのまま力付きた。
(ひんやして気持ちいい……)
おでこと頭が冷たくて気持ちいい。
その感覚で目が覚めた。
頭の下には氷枕が。
おでこには冷たいタイルが乗ってる。
(これが気持ち良かったんだ)
首だけを横に向けてみる。
折りたたみの小さなテーブルの上に、ストローがさしてあるペットボトルが目に入った。
(喉……渇いたかも)
腕だけ手を伸ばす。
ペットボトルを手に取りストローをそのまま口に持っていく。
喉から全身に冷たい液体が流れてくる。
半分ぐらい飲んで、テーブルにペットボトルを置いた。
(凪紬くん?きてくれた?)
起きあがろうと肘を曲げてみるけど、まだ起き上がるには少しだるい。
またベッドにそのまま沈み込む。
(スマホ……どこ……)
凪紬くんに連絡しよう。そう思ってスマホを手で探してみる。
「たろちゃん。目が覚めた?」
部屋の扉が開いて凪紬くんの声がした。
目線だけを扉に向ける。
手にボールを持った凪紬くんがそこに立ってた。
「凪紬くん」
名前を呼んでみる。
「ん?気分はどう?」
ぼくの元に近寄ってきて顔を覗き込んでくれる凪紬くん。
「マスクしてない」
凪紬くんの顔をみてそれだけ伝える。
凪紬くんは、ん?て顔をしてそのあと、あぁと頷いた。
「うん。マスクはしてない。でもぼくは大丈夫だよ」
凪紬くんはぼくのおでこに置いてあったタオルを外した。
そのままサイドテーブルでボールにタオルを入れてまたおでこに乗せてくれた。
「たろちゃんお水。あっ、飲めてるね。良かった。食欲ある?」
そう凪紬くんが聞いてくれる。
「凪紬くんここにいたらダメだよ。たろうの風邪が移っちゃう。だから帰って」
凪紬くんの顔を見てゆっくりそう伝える。
「大丈夫。ぼくのことは心配しないで。それよりたろちゃん気分はどう?」
「さっきよりいいかも。マクラ冷たくて気持ちいい」
ほっとした凪紬くんの顔。
「良かった。お薬飲んでほしいけど、何か食べれる?おかゆ作ったよ」
「ん。食べる。起きる」
ゆっくりと体を起こしてみる。
さっきより良さそうだ。
「ここに持ってくるよ」
凪紬くんはそう言ってくれた。
「ううん。たろうリビングに行く」
そう言ってベッドサイドに座る。
「わかった。じゃあ準備するね。ゆっくりきてね」
凪紬くんはそう言ってボールを手に扉の向こうに消えた。
ゆっくり立ち上がってみる。
さっきより良さそうだ。
そのままリビングに行きテーブルに座る。
凪紬くんがおかゆと薬を運んできてくれた。
「ありがとう」
お礼を言ってスプーンを手に取る。
凪紬くんが作ってくれたおかゆ、美味しい。
優しい味がする。
半分食べて、スプーンを置いて顔をあげて凪紬くんをみる。
「凪紬くん」
目の前に座って食べてる姿を見てくれてた凪紬くん。
「たろう風邪引いてるからここにいたらダメだよ」
さっきから気になってたことを口にする。
「もぉ!たろちゃんさっきからそれ心配してる。ありがと。でもぼくは大丈夫」
凪紬くんはそう言って笑ってくれる。
「でも……たろうが心配」
ぼくがそう言ったら凪紬くんはぼくの目をみて静かに笑ってくれた。
「うん。ありがとう。でもぼくもたろちゃんが心配なんだよ。きつい時に1人にさせたくないの」
そのあと、少しだけ口を閉じた凪紬くん。
「それに、風邪ひく時は一緒にひこう。ぼくが風邪引いたら次はたろちゃんが看病してね」
そう言ってぼくの好きな笑顔で笑ってくれた。
「うん。凪紬くんがきつい時はたろうが看病する!だから全然教えて」
「わかった。たろちゃんも同じだよ」
凪紬くんはぼくの目を見てそう言ってくれた。
凪紬くんがぼくの手をとった。
「ぼくたは、お互い助け合うの。そこに遠慮はなしだよ」
手を握りながらそう言ってくれた。
「凪紬くんありがとう。たろうも次からはそうする。だから凪紬くんもたろうを頼ってね」
凪紬くんの手を握り返してそう伝える。
「もっちろん。しーっかり頼るから覚悟してね。そのためには早く元気になってね!」
明るい声を出した凪紬くんがそう言ってくれた。
そのままおかゆを全部食べて薬を飲んだ。
またベッドに入って寝ることにした。
凪紬くんはぼくのベッドの隣に椅子を持ってきてくれた。
「凪紬くんいいのに」
「ううん。ぼくがたろちゃんの顔見ながら本読みたいの」
そう言ってくれた。
凪紬くんがページをめくる音が聞こえる。
目を瞑ってても、凪紬くんの存在が感じられる。
そのまま眠気に誘われた。
目が覚めた。
頭がスッキリしてる。
もう大丈夫そうだ。
左手が凪紬くんと繋がってる。
本を読んでる凪紬くんをそっと見つめた。


