ドキドキ大作戦


 大学からの帰り道、今日の夕飯のメニューを頭の中でも組み立てる。

 凪紬くん小テストとかもあってお勉強も大変そうだし、と考えながら電車に乗る。

 今日は栄養のあるものにしよう。
 そう思って夜ご飯は生姜焼きを作ることにした。

 凪紬くんの好きな具材でお味噌汁を作ろう。
 凪紬くんマカロニサラダも好きだし、多めに作れば明日の朝ごはんに食べることもできる。

 スーパーで必要な食材を買って、スーパーからの道のりを歩く。

 昨日凪紬くんに渡すぬいぐるみのクマちゃんが完成した。
 さっちゃんたちにも褒めてもらえて自信がついた。

 あの大学に行けて良かった。

 好きなお洋服の勉強はできるし、ぼくのことを受け入れてくれるお友達もいる。
 そして何より凪紬くんが隣にいる。

 高校の入学式で凪紬くんと出会ったことによりぼくの人生は始まった。
 凪紬くんと出会えなかったら、小学生のあの時からきっと……時間は止まったままだった。

 きっと……お洋服を勉強する道を諦めてた。

 自分を隠して生きる道を選んでた。
 
 凪紬くんはぼくの人生を変えてくれた。
 たった1人の大切で大事な人。
 

 そんなことを考えてたらマンションに帰り着いた。

 部屋に入る前に腕時計をみて、凪紬くんが帰ってくる時間を逆算する。
 今からご飯の準備を始めたら凪紬くんちょうど帰ってくる。

 ぼく用のクマちゃん作るのは夜にしよう。

 そう決めて、ぼくの部屋にカバンだけ置きに行く。
 そのまま隣の凪紬くんの部屋に行き、キッチンに入りエプロンをつけてご飯の準備に取り掛かる。
 あともう少しでご飯が完成する。

 そのときに玄関から音が聞こえてきた。

 凪紬くん帰ってきたかな?そう思ってたらバタバタと足音が聞こえてくる。

「たろちゃん。ただいま」
 扉が、ガチャっと開く音と共に凪紬くんの声が聞こえた。フライパンを持ってるからキッチンから声だけかける。

「凪紬くんおかえり。今生姜焼き作ってるからちょっと待ってね」
「ぼくがそっちに行くよ。わぁーいい匂い。お腹すいた」

 凪紬くんがパタパタと足音を立てながらキッチンに入ってくる。
 食器棚からお皿を二つ取り出してくれ、そのままたろうの隣にピッタリくっつく。

「凪紬くん、今火を使ってるから危ないよ」
「大丈夫。ちょっとだけ」

 イタズラっぽい顔して笑う凪紬くん。

 コンロの火を止めて、フライパンにある生姜焼きをお皿に取り分ける。

「美味しそう――」
 凪紬くんがお皿を覗き込み目をキラキラさせながら早く食べたいと言ってくれる。

「凪紬くんご飯炊けてるからよそってくれる?たろうお味噌汁ついじゃう」
 お皿に生姜焼きとプチトマトそして凪紬くんが好きなマカロニサラダを盛り付ける。

 そしてそのままお鍋に作っておいたお味噌汁を注ぐ。
 
「たろちゃん、ご飯と飲み物はテーブル置いた」
「ありがとう。今から残りの食器持って行く」
 
 トレーに生姜焼きとお味噌汁を乗せてテーブルまで運ぶ。
 凪紬くんがトレーを受け取ってくれてぼくがお盆の上におく。
 
 凪紬くんが、トレーをテーブルの端に置いてぼくの前にきて両手を広げる。

 最近凪紬くんは帰ってきたら必ずぼくの前で両手を広げる。

 ぼくは凪紬くんに近づいて凪紬くんを抱きしめる。
 

「たろちゃん。ただいま」
「凪紬くんおかえり」

「たろちゃんにこうやって抱きついてもらったら、ぼく1日の疲れが取れる気がするんだ」
 ふふッと笑う凪紬くん。
 
 (たろうも……凪紬くんに抱きつく、しっくりくる)
 
「さっ。ご飯食べよっか。たろちゃんが作ってくれるご飯大好き。作ってくれてありがとう」
 
 ぼくの腕からスルッと抜け出して椅子に座る凪紬くん。ぼぬもそのまま向かい合わせの椅子に座って2人でお箸を手に持ちいただきます。をしてご飯を食べる。
 
「あのね。明日ちょっと実習で必要な靴を買いに行こうと思うんだ」
 ご飯を食べてる時に凪紬くんが言い出した。

「たろちゃん一緒に来てくれる?」
「もちろん。たろうも新しいお洋服関連の本を探したいと思ってたから明日凪紬くんに一緒にお出かけしようって誘おうと思ってたんだ」

 ぼくがそう言ったら凪紬くん嬉しそうに笑って、「やっぱりぼくとたろちゃんは一緒に出かけるのが1番だね」なんて言ってくれた。

 2人で明日の出掛けるんなら行きたいと言ってたお店でご飯食べてみようなんて話をしながら2人でご飯を食べ進める。

 凪紬くんが美味しいと言って食べてくれるのが嬉しい。
 2人で手を合わせてごちそうさまをする。

「じゃあぼくがお皿するね」
「たろうは、お鍋先に洗うね」

 いつものように声掛け合いながら2人で片付けをする。

「たろちゃんこれもう拭いていい?」
「ありがとう。これ洗い終わったらもう終わり」

「最近ぼくちょっと課題で忙しかったから、たろちゃんとこんな風に一緒に作業できなかったもんね」
 凪紬くんがぼくの隣にきて、ぼくの顔を見ていう。

「凪紬くんが、大変な時はたろうがするもん」
「うん。たろちゃんが忙しい時はぼくがするからね」
 
 そんなことを話してたら、あっという間に片付けが終わった。
 
 キッチンから出る。

 凪紬くんに、作業あるから帰るねと話そうと口を開こうとしたら、リビングにいる凪紬くんが手招きしてる。
 凪紬くんの元にいってみる。
 
「凪紬くんどうしたの?」
「たろちゃんちょっとこっちきて」
 
 凪紬くんに手を引かれながら連れて行かれた先は凪紬くんのベッドルーム。
 そこにあるクローゼットの前に立つ凪紬くん。
 
「明日着ていく服たろちゃんにコーディネートしてもらおうと思って」
 そんな風に言いながらクローゼットを開ける凪紬くん。
 
「せっかくなら、この前たろちゃんと買った服を着たいな」
 凪紬くんからリクエストをもらう。

 それならとぼくも張り切って凪紬くんの洋服をコーディネートした。
 コーディネートした服をみた凪紬くんは手を叩いて喜んでくれた。

「すごい!たろちゃん!かっこいいし可愛いし最高」
 薄い水色のカッターシャツに細身のパンツを合わせて、凪紬くんが好きな緑のカーディガンにした。

「ね!たろちゃんも明日色違いで買ったこのカッター着てくれる?」
 凪紬くんが首を傾げてたろうに聞いてくる。

「いいよ。じゃあたろうもこのカッター着てくるね」
 
「ふふっ。お揃い楽しみ。明日が待ち遠しいね」

 凪紬くんはハンガーにかけた服を静かに見つめている。
 その横顔を、ぼくは見つめていた。
 
 作業あるから今日先に帰るねと話して、部屋に帰る。
 凪紬くんとお揃いで買った服で明日の服をコーディネートをする。

 ハンガーにかけた、明日の服をみて笑が溢れる。

 作業中のクマちゃんを見つめる。


 (この調子なら今週中には告白できそう)

 頭の中に凪紬くんの笑顔が浮かんだ。
 
 (たろう、頑張るぞ)