さっちゃんは講義室に辿り着くまでテンションが高かった。
「なっちゃんかわいい。あんなかわいい男の子に似合う服私も作りたい。創作意欲が湧くんですけどぉ」
さっちゃんはそう言いながら歩いてる。
講義室に着いて教室の中に入った。
さっちゃんがみんなに声をかける。
「はいっ!ちゅ――も――く」
授業が始まる前のザワザワしてた教室が一瞬で静かになった。
さっちゃん威力すごい。
ぼくは呆然として、入り口で突っ立ってしまってる。
「なに、なに?沙月なにがあったの?面白いこと?」
「なんと!私!なっちゃんを見かけました!」
イェーイとピースをしてみんなに自慢げな顔をしてるさっちゃん。
それを聞いたみんなは、おぉとどよめきをあげて拍手する。
「なにそれ!そんな面白い話はみんなで聞かなきゃ!沙月詳しく」
みんながノリノリでさっちゃんを取り囲んでる。
「でね!たろーてば、なっちゃんに『たろう心配だから大学着いたら連絡してほしいな。』なんて言ってんの!告白してないのにたろーもう恋人みたいなこと言ってんの!あっまぁ――い声出して私あんなたろーの声聞いたことない」
さっちゃんがテンション高くなって、壇上に上がってみんなの前で話してる。
みんなも「きゃーなにそれぇ。」「朝から萌えるんですけどぉ」とか言いながら手を叩いたりして喜んでる。
「で沙月、肝心のなっちゃんはどんな子だった?」
みんなが興味深々な顔でさっちゃんに聞いたら、みんなも口々に知りたい!なっちゃん情報プリーズなんて言ってまた盛り上がってる。
「それが!もぉ――ちょ――お可愛いの!目が大きくって、なんていうの?癒し系の雰囲気あって、たろーより身長低いんだけど、たろーと離れたくないってのがもう後ろを歩いてるの!私でも分かるようぐらいぴったりとくっついてんの。校門でもたろーと別れるの寂しいって顔に書いてあってしゅんとしちゃっててさぁ。たろーてばこんなかわいい男の子に1番って言われてんのずるくない?ってなったよね」
さっちゃんがマシンガントークでみんなに凪紬くんなっのことを説明してる。
凪紬くんが可愛いのも、癒し系なのも、ぼくも同意できる。
「それで。それで。」
みんながもっと情報ないのって顔してさっちゃんに合いの手を入れてる。
「たろーもさぁ、なっちゃんの姿が見えなくなるまで見送ってんの。もう何この2人やばくない。かわいすぎなんですけどぉってなったよね。かっこいいたろーと可愛いなっちゃんが並んだらマジでお似合いなの。早くたろーくまちゃん作ってなっちゃんに告白すべし。そして私たちになっちゃんを会わせて」
さっちゃんが入り口に立ってみんなの話を聞いてたぼくを指さしてくる。
みんなもくるりと振り返ってぼくのことを見る。
「そうだよ!たろー沙月だけなっちゃんに会ったのずるい!私もなっちゃんに会いたい」
クラスメイトがぼくの前まで走ってきて手を掴んでそう言い始める。
「さっちゃんは、会ってはないよ。」
ぼくそう訂正してみる。
「まぁまあ。たろーそんか細かいことはいいから。とりあえず早くくまちゃんを作ってみんなになっちゃんを会わせて。2人が恋人同士になるの私たち待ってるんだから。そしてなっちゃんの服を私デザインしたい。創作意欲バリバリ湧いてる」
さっちゃんまでぼくの元にきた。
ぼくの肩を叩きながらそんなことを言い出す。
「だめ。凪紬くんの服はたろうが全部作るの。さっちゃんでも絶対ダメ」
たろうがそう言ったら、みんなが「きゃ――!たろーのなっちゃんに対する独占欲みた」なんて言いながらまた盛り上がり始めてる。
「まぁ。あんな可愛いなっちゃんがたろーのこと1番って言ってくれてるんだから、告白のチャンス逃した、たろーは反省して早くクマちゃんのぬいぐるみ完成させて告白しなね」
ぼくの隣でまた肩を叩いてそんな風に言ってくれるさっちゃん。
みんなきゃーと騒いだりしてる。
楽しんでくれるように見えるけど、実際は、ぼくのこと応援してくれてるのが伝わる。
この教室の空気がなんだか心地いい。
(凪紬くんと出会ったから……ほんと……たろうの周りは変わったな……)
カバンについてるくまちゃんを優しく撫でながらそんな風に思った。


