とにかく、Cという存在はやはりできる限り念の入った描写をしなくてはいけないだろう。あまり心踊る作業ではなし、私のモチベーションの低さが故に、これを読んでいる者が急速に読解の気概を損ねてしまうかもしれないが、ここまで読んでいるのならどうか、最期まで付き合ってくれないだろうか。もう独りきりは寂しい。人は一人きりになるべきであるが、一人でいるには限界がある。そうは思わないだろうか。
 Cを登場させた。Cについて書かなくてはいけない。
 Cは、先述の通りAにつきまとい、そして最後には私の目の前で彼女を掠め取っていった張本人である。彼は傍目からでもわかるほどにAと接近したがっていた。飲み会には半ば無理やりAを参加させ、Aが誘われている集まりに強引に自ら参加した。見る者が見れば、一人の女性として意識しているのだろうと見分けがつく。偶然にも、私には見分けがついた。だからCを仮想敵のように捉え、それとなく敵対心を抱いていつも彼の動向に注意を払わなければいけなくなった。
 正直なところ私は少し焦った。彼はAと家が若干近い。それもあって何度も送迎をしている。飲み会のあと、仕事終わりの帰路、できる限りAとの接触を図った。そしてAはそれを拒まなかった。当然焦りを感じていたが、所詮Aは社交家だし、Cは大して顔も良くない、腹も少し出ている図体だけでかいCには興味を惹かれていないと信じていた(それがただの幻想に過ぎないというのを、私は六月に入ってから知ることになる)。
 ある時、職場でCと私、二人きりになる時間ができた。私と彼とは、自慢ではないが彼とはかなり信頼関係を構築している。仕事上の愚痴はもちろん、互いの学生時代の話や会社が禁じているダブルワークを行うための抜け道などの意見交換もしていた。それこそ恋愛の話も持ち出された。Aと付き合う直前まで、Cには思いを寄せている別の人物があったのだ。Aが現れるまで私にはそのような人間はいなかったから、Cのイチゴのような相談によく乗ったものだ。そのCと二人になった。二人の間でしか交わせない会話が自然と繰り広げられるわけだが、話の中で彼はこう言った。
「最近、新しく知り合った人がいるんだよ」
 惚気ていると思った。やっていやがるとも、思った。私は試しに、どこで知り合った女性なのかを訊いた。Cは言葉にならない言葉をもぞもぞ言いながら、私から視線を逸らして答えた。