私は恐竜が好き、本を読むのが好き、美術が好きという、三つの大いなる共通性によって彼女に近づきつつあった。親交を深めつつあった。ただでさえ同級生、三つも趣味が被るというのはこれはただ事ではないと思っていた。
 月日は遡り、私は五月の半ばに同僚二人を連れて那覇市の街に繰り出し、酒を飲んで食事をしようということになった。そこに電話で彼女を急遽、呼びつけて居酒屋で計四人、談笑をして過ごした。話によればその日は偶然にも彼女の誕生日という話で、私たち三人、入社して間もない彼女にバースデーソングなど歌って祝う。彼女は終始にこやかやな表情を浮かべてまさに夢見心地、嬉しそうにしていた。私は彼女をうまく捕まえ、二人だけの談笑に臨む。
「今度〇〇で〇〇の企画展あるんですよ。気になりませんか」
 彼女は言った。私は頷いた。
「今度休みが被ったら一緒に行きましょうよ」
 私は大仰に首肯してみせた(現在、この約束は守られずに終わっている。後に記すが、この時点ではまだ私は彼女を失ってなどいない。私は同じ部署の年上の男にこの女性を取られたのであるが、その夜の時点ではまだ彼が攻勢に出ていなかったのだ。ここで私が男振りというものを、あるのか無いのか顕微鏡を用いなくては見定められないそれを巧みに行使して『仕掛けて』さえいれば、この手記の筋書きも多少は変わっていたのかもしれない。いずれにせよ、もう終わったことだ)。彼女は大いに酒を飲んで酔っ払い(側から見れば酔っているようには到底見えなかった)、日付が変わる前にモノレールに乗って帰っていった。残った私たちは、翌朝に仕事を控えているのも構わず那覇の街を散策し、カラオケに入り浸ってまた酒を飲み、私だけが唯一シラフの状態になって帰路についた。カラオケを出てからというもの、私の横の二人は二人共が前後不覚の泥酔状態にあった。片方が一つ年上の男(彼女を奪った男では無い)、もう片方が私の六つ年上の女だった。仮にもこの女性をB、件の奪われた女性をAだと呼称することにして、このBという女性もまた、私に取って厄介の種の一つであるかに思われた。彼女は普段、見かけでは清楚を気取っておとなしい性格なのだが、酒が回るとまるで人が違ったようになる。普段は人に触れないよう細心の注意を払っているような振る舞いが一転し、途端に手を繋ぎたがる。試しに「Bさん、もう遅いし帰ろうよ」など言えば帰りたく無いと駄々を捏ねて地面の上を転がり、最後にはこちらにハグをしてくる有様なのだ。私は彼女に抱きつかれ、途端に背筋が寒くなるのを感じた。その五月の夜、にわかに思い出した。私はそのちょうど一年前にこのBという女性に想いを寄せ、告白し、そして勝負にあえなく敗れたという事実を。
「まだ帰らないでしょ」