とある日の午後に私は外に赴いて作業を行った。汗をかく作業だ。何せ敷地内の広場にある雑草や、木々の剪定を行ったのだから。外部の人間が見て驚くような緑化をしてみせろというのが上司からの指令だった。私はそんなことに興味がないためあまり任されないほうなのだが、あの日は私に白羽の矢がたった。上司の口だけの命令で剪定鋏とゴミ袋と軍手を倉庫から引っ張り出し、張り切って外へと出た(人は時折、口だけで人を操ることができるものだ。私に取っては憧れの能力だった)。時節は六月の初め。梅雨時期ではあったもののその日はからっと晴れている紛れもない晴天で、人々は観光客も含め、夏の気配が漂う中を気だるげに歩いていた。我々の職場まで足を延ばす人々(そこには色々な人たちがいた。アメリカ人のゲイのカップル、障がい児を連れて歩く、障がいを持った母親、日本語を話せる台湾人など)がいて、皆一様に顔には疲労を浮かべていた。どことなく笑顔がない。こちらがどれだけ愛想を良くしても、口元や目元にカギでもかけられたみたいに破顔しない。私たちスタッフはここを先途と愛想を振り撒いて働いていた。
 私の緑化作業というのは、一番暑い昼の一時ごろから行われ、およそ一時間後の午後二時少し前に終了した。作業を終えたものの、道具はまだ使う宛があった。私はなるべく邪魔にならないよう、鍵をかけている倉庫の横において事務所まで戻った。事務所ではエアコンが効いていて、総身に溜め込んでいた熱気は瞬く間に消失していった。汗の流れた肉体にクーラーは、今度は邪魔者のように感じられた。急速に肉体が冷やされて寒気がするのだ。
 私は汚れた手を洗うために流し台に向かった。石鹸を使って丁寧に左右の手を洗っている最中に、彼女はやってきたのだ。
「この後、休憩ですよね」
 彼女はまず断定的にそう言った。そうだ、と私が答えると、
「もしよければ、倉庫の鍵を閉めるのを手伝ってほしいんです。やり方がわからなくて」
 そのように話した。何を言っているのだろうと思って、壁にかかっている一日のスケジュールに目を向けた。スタッフ一人一人に割り当てられた仕事の内容がある。確認すると、私は二時過ぎから一時間の休憩、彼女はつい先刻まで事務所内の掃除を担当していたらしい。
「倉庫から道具を取って、元に戻してきたところなんですけど、どうも鍵が閉まらないんです」
 彼女が言った。