通り過ぎていく車のヘッドライトが遠くの方にぼんやりと見える。そんな時、急にエンジンの音が近くなってくるのをはっきりと聞き取ることができた。父親が帰ってきたのか、と思ったが違う。父はもっと遅くに帰宅するし、エンジンは車のものではない。もっと小さく軽い音だ。何が来るのだろうと待ち構えていると、凹凸のある駐車場に一台の原付が姿を見せた。乗っていたのは郵便配達員だった。中年で、日没後なので顔はよくわからない。なんとなく肌が日焼けしていたようだったと記憶している。配達員は原付を停めるとまず私の方を見た。当たり前だろう、こんな時間帯に小さな男子が一人きりで正座しているのだ、気にならない方がおかしい。
彼は私の方を気にしつつ原付の後部に取り付けられたボックスから一枚のハガキを取り出し、ドアの前までやってきた。あくまで私に声をかけるつもりはなさそうだった。
「配達です」と、その配達員は言った。「こちら、確かにお届けしました」
妙だな、と私は思った。たかがハガキ一枚、ドアの郵便受けに入れて仕舞えば済む話なのに。疑問に感じている私の斜め後ろで、配達員と母親とが幾らか雑談しているのがわかった。私は振り向けなかった。部屋の光が漏れてくる中にあの母親のシルエットが浮かんできていたからだ。地面に現れた光と影で、母が玄関先に立っているのがわかる。振り向いて仕舞えば目が合うだろう。そんなことは、恐ろしくてできそうになかった。
「ところで、こちらにいるのは息子さんですか」
配達員が母親と会話している中、私の耳が反応して拾った言葉だ。彼は私のことをしっかりと気にかけていたのだ。
「ええ、そうなんです。ちょっと悪いことをしまして、今反省中なんですよ」
やけに優しい声音に、私は胸を突かれるような思いがした。配達員に対して叫んでやりたかった。その女の言っていることは嘘だ、と。だが考え直して、彼女の話すことに嘘偽りがないのをすぐに理解した。私は悪いことをしたのだ。だからこうして正座し、反省しているのだ。もしもあの時飛び出した私が虚偽を申告しても、きっとはねつけられただろう。「だったら私の財布からお金の消えているわけを説明してごらんなさい」おそらくはそう言われたはずだ。
彼は私の方を気にしつつ原付の後部に取り付けられたボックスから一枚のハガキを取り出し、ドアの前までやってきた。あくまで私に声をかけるつもりはなさそうだった。
「配達です」と、その配達員は言った。「こちら、確かにお届けしました」
妙だな、と私は思った。たかがハガキ一枚、ドアの郵便受けに入れて仕舞えば済む話なのに。疑問に感じている私の斜め後ろで、配達員と母親とが幾らか雑談しているのがわかった。私は振り向けなかった。部屋の光が漏れてくる中にあの母親のシルエットが浮かんできていたからだ。地面に現れた光と影で、母が玄関先に立っているのがわかる。振り向いて仕舞えば目が合うだろう。そんなことは、恐ろしくてできそうになかった。
「ところで、こちらにいるのは息子さんですか」
配達員が母親と会話している中、私の耳が反応して拾った言葉だ。彼は私のことをしっかりと気にかけていたのだ。
「ええ、そうなんです。ちょっと悪いことをしまして、今反省中なんですよ」
やけに優しい声音に、私は胸を突かれるような思いがした。配達員に対して叫んでやりたかった。その女の言っていることは嘘だ、と。だが考え直して、彼女の話すことに嘘偽りがないのをすぐに理解した。私は悪いことをしたのだ。だからこうして正座し、反省しているのだ。もしもあの時飛び出した私が虚偽を申告しても、きっとはねつけられただろう。「だったら私の財布からお金の消えているわけを説明してごらんなさい」おそらくはそう言われたはずだ。

