早く帰ろうよ、と半ばパニックに陥りながら私は急かした。Dはなかなか立ち上がらない。「帰ろう、帰ろう」とうわごとのように繰り返すだけでそれ以上は何もしなかった。と言うよりはできなかった。私は彼の痛みを真に理解することはできないから、そばで眺めていて焦りを募らせるばかりであった。そのように二人して立ち往生していたところに、救世主が現れたのだ。年齢にすると二〇代半ばだったと思う。背が低めのスーツを着こなした青年が私たちのもとまで駆け寄ってきた。感じの良さそうな、清潔感のある身だしなみをしていたから私はすぐに彼を頼ることができた。拙い日本語で簡単な経緯を話し、これから家に帰って彼の父親に手当てをしてもらうのですと伝えた。青年は泣きそうになっている私に優しく微笑みかけて、ポケットからハンカチを取り出してDの頭に当てがった。
「その家まで、一緒に行こう」
ありがたいことに青年はそう言ってくれた。私とDと、そして青年とは並んで路地を歩いた。道中でDは何度も頭の痛みを訴えて、その度に青年が心強く励ましてくれた。あの時の青年の姿は今でもありありと浮かんでくる。私も、あの時の彼のようになりたかった。
皮肉な話だが、公園を通り抜けてショートカットをしたおかげでDの住むアパートにはものの五分ほどで到着した。ここが彼の家なのだと言うと、青年は心配そうな顔をしながら励ましの言葉をいくつかかけてくれた。たいして私といえば、幽霊でも見た時みたいに口をぱくぱくとさせてお礼らしきものを述べるので精一杯だった。そんな私にも青年は優しく微笑みかけてくれ、そうしてどこかへと立ち去ってしまった。
「その家まで、一緒に行こう」
ありがたいことに青年はそう言ってくれた。私とDと、そして青年とは並んで路地を歩いた。道中でDは何度も頭の痛みを訴えて、その度に青年が心強く励ましてくれた。あの時の青年の姿は今でもありありと浮かんでくる。私も、あの時の彼のようになりたかった。
皮肉な話だが、公園を通り抜けてショートカットをしたおかげでDの住むアパートにはものの五分ほどで到着した。ここが彼の家なのだと言うと、青年は心配そうな顔をしながら励ましの言葉をいくつかかけてくれた。たいして私といえば、幽霊でも見た時みたいに口をぱくぱくとさせてお礼らしきものを述べるので精一杯だった。そんな私にも青年は優しく微笑みかけてくれ、そうしてどこかへと立ち去ってしまった。

