両親にばれたのは、その夜の話だ。私は一人きりで風呂に入る習慣をつけていたので、普段通りに単独で服を脱ぎ、浴室に入った。シャワーを浴びている最中にいきなり電気が消され、何事かとあたふたしていると浴室の扉が勢いよく開けられた。そこに現れたのは父親だった。彼は手にしていた何か小さな物を床の上に思い切り叩きつけるように投げ捨てた。軽い音を立てて私の目の前に突きつけられたのは、昼間に盗み出したあの消防車のストラップだった。言うまでもなく、私は硬直した。父親が何かを捲し立て、こちらは何も言えず、何もできず、それを聞いているだけだった。その事件は五歳のあたりで、初めて父親が私に牙を向いた瞬間でもあった。鮮明に思い出される記憶の中で、私は父親に浴室から引き摺り出され、体を拭くのもそこそこに、何度も大きな手で殴られた。父親は平手を使った。当時の私にとってはやけに難解な言葉を使って罵ってきた。私はただ「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝っていた気がする。どれだけそんなやりとりがあったか、気づけば私はひとまず許されたということになって入浴を続行する許可を得た。
 その後、小学生になりH町に住み始めても盗み癖が治らなかったのである。
 転校した先で、つまり母親の母校で、私は何名かの友人に巡り合うことができた。全部で四人だったと記憶している。全員が男子で、慎重に私は品定めをしていった。そうして彼らから何か一つ、時には五つか六つほどを盗み出していった。
 まず標的に選んだのはDという少年だった。彼は一番親しくしていた相手であり、一番多くのものを盗ったのも彼からだった。私と彼とは、趣味が共通していた。私の好きな映像作品の玩具を彼は多く持っていた。最初のうち、私はDからはできるだけ窃盗をしないよう心がけていたので、彼と互いのおもちゃを持ち寄って一週間の間、交換しようという流れになった。私は特撮作品のロボットを渡し、彼からはアニメに出てくるキャラクターのフィギアを借りた。それでいくらか、物欲というものも薄まってきたような気がする。ロボットのおもちゃが手元からなくなるというのはあまり望むところではなかったが、代わりにやってきたフィギアを遊び倒すことは可能だ。意気揚々と、交換の会場になったDの家から自宅まで歩いた。帰り着くや、見知らぬ物を抱き抱えている私を認め、夕食の支度をしていた母親は訝しそうに私を睨んだ。
「それは、どこから持ってきた物なの」