私には家族がいる。それはそうだ、人間皆、家族というものは必ずいるものだ。例外はない、全ての人間には家族がいる。私には父と母と、そして一つ下の弟、二つ年下の妹がいる。よって私は長男ということになっている。この手記において記したいのはこの家族についてだ。まだ私が幼い頃、六歳ごろの話を展開しようと思う。
当時、私は沖縄のH町という小さな町に住んでいた。車を使えば県の中心地であるN市まで出かけることができ、適度に自然があり、適度に都会的という居心地の良い場所だった。私は小学校一年生の二学期に、親に連れらてその町に住むことになった。
今となっては記憶も朧げだが、おそらくは夏休みが終了した後の話だ。九月に二学期が始まり、三月になって進級する直前まで私はそこに住んでいた。なぜ九月から三月と言う、一年にも満たない期間であったかは定かでない。当時、母方の祖父がまだ健在だったため、その祖父の介護を目的として住んでいたのかもしれないが、祖父が亡くなったのは私たち一家がH町を離れて七年後の話だし、それ以外の理由らしきものは見出せない。強いて言うなら、母は私の通うことになったH町の小学校に通っていたということだが、それだけで所在を変えるほど簡単で身軽な人物ではないから、やはり理由とは呼べない。すなわち、私がH町まで移動し生活を送ることになった訳は不明なままだが、反対に明確なこともいくつかある。不明瞭ではない、明確なこと、これこそ、二つ目の手記に記そうとしているものだ。それはやがて家族という人間関係に、決定的な不和をもたらしたのである。
私は当時、盗みを働いていた。何の誇張もない。嘘偽りなく、盗みをしていた。それも常習的に。始まりがどこにあるのか、今回に限って言えば原因もはっきりと見えている。私はまだ幼い頃、保育園の頃、すでに他人のものを盗むという癖が身についてしまっていた。きっかけは友人の持っていたストラップだった。テレビ番組として当時放映されていた特撮ヒーロー番組のストラップ。それは主人公が正義の味方に変身して戦う際に乗り込む大型の車両をかたどっていた。子供の目には鮮烈に映る赤い車体。モチーフは消防車になっている。それをこっそりと盗み出した。意地悪をしようと画策したわけではなく、ただ純粋に、ストラップが欲しかったのだ。虎視眈々と機会を伺い、誰も見ていないのを確認してリュックサックについていたそれを盗み出した。リュックサックは教室の隅に固めて置いてあったから、グラウンドで竹馬をしましょうという時間に腹痛を訴えればそれで良かった。見事目的の宝物を盗み出すのに成功した私は、赤い消防車に乗る英雄の姿を頭に思い描いた。そして消防車を乗りこなす英雄の姿を自分自身に置き換えた。物を盗むという行為が、私を英雄気分にさせてくれたのだ。
当時、私は沖縄のH町という小さな町に住んでいた。車を使えば県の中心地であるN市まで出かけることができ、適度に自然があり、適度に都会的という居心地の良い場所だった。私は小学校一年生の二学期に、親に連れらてその町に住むことになった。
今となっては記憶も朧げだが、おそらくは夏休みが終了した後の話だ。九月に二学期が始まり、三月になって進級する直前まで私はそこに住んでいた。なぜ九月から三月と言う、一年にも満たない期間であったかは定かでない。当時、母方の祖父がまだ健在だったため、その祖父の介護を目的として住んでいたのかもしれないが、祖父が亡くなったのは私たち一家がH町を離れて七年後の話だし、それ以外の理由らしきものは見出せない。強いて言うなら、母は私の通うことになったH町の小学校に通っていたということだが、それだけで所在を変えるほど簡単で身軽な人物ではないから、やはり理由とは呼べない。すなわち、私がH町まで移動し生活を送ることになった訳は不明なままだが、反対に明確なこともいくつかある。不明瞭ではない、明確なこと、これこそ、二つ目の手記に記そうとしているものだ。それはやがて家族という人間関係に、決定的な不和をもたらしたのである。
私は当時、盗みを働いていた。何の誇張もない。嘘偽りなく、盗みをしていた。それも常習的に。始まりがどこにあるのか、今回に限って言えば原因もはっきりと見えている。私はまだ幼い頃、保育園の頃、すでに他人のものを盗むという癖が身についてしまっていた。きっかけは友人の持っていたストラップだった。テレビ番組として当時放映されていた特撮ヒーロー番組のストラップ。それは主人公が正義の味方に変身して戦う際に乗り込む大型の車両をかたどっていた。子供の目には鮮烈に映る赤い車体。モチーフは消防車になっている。それをこっそりと盗み出した。意地悪をしようと画策したわけではなく、ただ純粋に、ストラップが欲しかったのだ。虎視眈々と機会を伺い、誰も見ていないのを確認してリュックサックについていたそれを盗み出した。リュックサックは教室の隅に固めて置いてあったから、グラウンドで竹馬をしましょうという時間に腹痛を訴えればそれで良かった。見事目的の宝物を盗み出すのに成功した私は、赤い消防車に乗る英雄の姿を頭に思い描いた。そして消防車を乗りこなす英雄の姿を自分自身に置き換えた。物を盗むという行為が、私を英雄気分にさせてくれたのだ。

