その日はちょっとした作業が事務所の方で残されていて、私はBと共にそれを終わらせた。帰路につくべく駐車場に向かって、少し用を足したくなったのでトイレまで足を運んだ。そこで目の当たりにしたのだ。トイレと休憩所との間には観葉植物が植えられていて、高さ二メートルの緑の壁がそびえている。その植物のわずかな葉の隙間から、Cと一緒にいるAの姿。ただの偶然、休憩所で遭遇したと言うわけではない。彼らは他の職員が帰って人目がなくなるのを待っていた。これは断言できる。制服のシャツを着替え、白い無地のTシャツ姿になっているC。その横で荷物を抱え、手持ち無沙汰のように突っ立っているA。二人は付かず離れずの距離を維持して立っている。私はトイレに入って用を足し、スマートフォンの画面を食い入るように見つめた。そこにあるものを決して見逃すまいと心を決めているかのように、ただ真っ直ぐに見つめ続けた。やがてCの乗っているバイクのエンジン音が聞こえてきた。バイクが私の背後、トイレの壁越しに走り去っていく寸前にAの高らかに笑う声を耳が拾った。個室のドアに背を預け、私はどうにもその場から動けずに立ち尽くしていた。そうして一分か二分かが過ぎた頃に、ここへ他の職員がやってくるかもしれないということに今更気がついて、慌てて駐車場に出た。バイクが走り抜けたであろう、駐車場の出入り口に視線を投げた。鉄製の門が半分閉まっていて、それはここの営業が本日終了したというのを暗に伝えている。門を抜けて右に出ればN市、二人の住んでいる街だ。おそらく門を抜けて右に曲がったんだなと私は思った。泣きたい気持ちにはなれなかった。はっきり心臓が痛んだわけではなかった。「ああ、やはりか」と言う静かな波が押し寄せて、そして引いていかないだけである。波は私の心を飲み込んだままずっとそこにとどまっていた。
翌日になり、私は彼女と約束していた一三時三〇分頃、N市の県立博物館駐車場に車を停めた。昨日の一件があって、私の心はやけに重く、連動して体も重くなっていた。あまり好ましいと呼べる状況にないことはおそらく誰の目にも明らかだろう。それでもこうして車を走らせたのは彼女と約した講座に参加するという目的があればこそだった。今後彼女と、そしてCと職場で顔を合わせれば、その度ごとに私は暗く沈んだ気持ちになるのに違いなかった。二人がどこかに外出しているところ。手を繋いで歩いているところ。夜にはキスをして、互いの一糸纏わぬ姿を見せつけ合いながらその肌に指を這わせるところ。したくもないが、やはり想像しないわけにいかなかった。これからの二人は順調に関係を進展させていくことだろう。私はただ一人、ここに残されていくだけだ。
翌日になり、私は彼女と約束していた一三時三〇分頃、N市の県立博物館駐車場に車を停めた。昨日の一件があって、私の心はやけに重く、連動して体も重くなっていた。あまり好ましいと呼べる状況にないことはおそらく誰の目にも明らかだろう。それでもこうして車を走らせたのは彼女と約した講座に参加するという目的があればこそだった。今後彼女と、そしてCと職場で顔を合わせれば、その度ごとに私は暗く沈んだ気持ちになるのに違いなかった。二人がどこかに外出しているところ。手を繋いで歩いているところ。夜にはキスをして、互いの一糸纏わぬ姿を見せつけ合いながらその肌に指を這わせるところ。したくもないが、やはり想像しないわけにいかなかった。これからの二人は順調に関係を進展させていくことだろう。私はただ一人、ここに残されていくだけだ。

